カエルの夫婦の会話 夜が明けた! | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

カエルの太郎 朝だな。明るくなってきた。

カエルの花子 この前は稲荷山に住むホクロウに食べられるところだった。

カエルの太郎 危ない、危ない! 地蔵坂の道はまっすぐだな。  

カエルの花子 まっすぐに伸びてる。苗がきれいに植わってきた。

カエルの太郎 きれいだな。 

カエルの花子 山が田んぼに映ってシンメトリーになっている。

カエルの太郎 どこが上か下か分からない。右も左も分からなくなってきた。  

カエルの花子 ひっくり返って白い腹を出したら空から鳥がねらってるよ。

 

カエルの太郎 ご来光。  

カエルの花子 田んぼの水面が光ってる。

カエルの太郎 あの金色の所まで泳いでこう。 

カエルの花子 金色が逃げていくよ。

カエルの太郎 どこまでも泳いでも金色にたどりつかないな。  

カエルの花子 どこまでも逃げていく。

 

カエルの太郎 ああ疲れた。

カエルの花子 金色の中に入らなかったよ。

カエルの太郎 モズがやって来たぞ! 

カエルの花子 セメントに変身しないと。

カエルの太郎 見つけられたら枝に串刺しにされるぞ。

カエルの花子 向こうに飛んでいったよ。

カエルの太郎 くわばらくわばら。 

カエルの花子 まだ灰色に変身できないね。

カエルの太郎 みどりが残ってる。 

カエルの花子 もう少ししたらうまくセメントの色が出せるよ。

カエルの太郎 練習しないと。 

カエルの花子 日々是丹精。

 

 ここで一句。

 

  あたらしき 畳匂ふや 夕蛙

 

 春になって新しい畳に変えたのでしょう。い草のつんと鼻につく香りがこの季節にふさわしいと思います。少し涼しくなってきた夕暮れ、蛙の鳴き声が聞こえてきます。この俳句は久保田万太郎が詠んだものです。なにげないどこにでもある風景。美しい時間はどこにでも流れています。それを17音にすくい取って言葉に定着しました。い草の香りという臭覚、夕方という視覚、蛙の鳴き声という聴覚、香って見て聞いて、読み手が感じたままを描きました。