奈良県明日香村は万葉のふるさとです。村全体が史跡のような所。レンタサイクルで一日史跡巡りが出来ます。ここは高松塚古墳。有名な壁画を見ることが出来ます。レプリカですが精密に作られていて本物と変わらず。古墳時代の世界観を見ることが出来ます。
聖徳太子ゆかりの寺、橘寺。今は立派に整備されていますが、万葉集にこんな一首があります。
橘の 寺の長屋に 我が率寝し 童女放りは 髪上げつらむか
橘寺の長屋に私が連れて行ってともに一夜を過ごした長髪の女の子は、もう髪を結い上げたかなあ。万葉時代、15歳までの少女は髪を切らずそのまま長く垂らしていました。その少女を橘寺に連れ込んで、一夜を過ごしたというのです。その女の子ももう成人しただろうか。とんでもない句です。今なら強制性交罪で即収監されます。しかも、由緒あるお寺で。なぜ天皇の命で選ばれた和歌にこの一首が入っているのでしょう。
今でこそ橘寺は整備されて創建当時に近い姿になっていますが、この頃は廃寺でした。万葉時代の歌はかなり自由奔放です。もし、善か悪か儒教的な考え方ならこれは悪です。もちろん現在なら重罪です。でも、唐心(からごころ)、つまり中国的な考え方から一歩離れて読んでみると、万葉時代の世界が見えてきます。ちょうどそれは、源氏物語の光源氏が次々と相手を変えて恋愛をしていくのと同じです。本居宣長はこれをもののあはれと表しました。
橘寺の酔芙蓉。朝は純白の白に咲きます。
やがて真っ白だった花は、お酒に酔ったように紅色に変化します。この世にある物は、いつも変化していくことの象徴のように色は刻々と変わっていき、やがてしぼんで枯れます。栄枯盛衰諸行無常の姿をそのまま伝えてくれるのがこの花です。
飛鳥寺にやって来ました。渡来人が作ったという大仏です。シルクロードを通って最も東の果てに仏教としてここ飛鳥に伝わりました。少し微笑んでみえるのはアルカイックスマイル、ギリシアやオリエントの東西の文化が混ざって生まれたヘレニズムの微笑みです。その微笑みが砂漠を越えて、草原を越えて、海を越えて、微笑みをもたらしました。長い長い微笑みの道の終着点です。
蘇我氏を葬ったという石舞台古墳。なぜ盛り土がなくなったのか、その伝承がないのが一番のミステリーです。風で飛ばされて土がはがれたなんて自然現象のせいにするなら、この周辺の古墳は全部このような形になるはず。なぜ、石舞台だけが盛り土をはがされているのか。
ずいぶん立派な羨道を通って、石室に入ります。修学旅行生が見学に来ています。中には石棺など当時の面影はありません。被葬者はどこに行ったのか。なぜここまで墓が暴かれたのか。ここに来ると、それが知りたくなります。
明日香はレンタサイクルで回るのが一番明日香を知る方法かも知れません。甘樫の丘や板蓋宮、橿原考古学研究所など、それにその途中の様々な石造物を見るにはこれが一番。途中で昼食を取りました。出てきたのは奈良のご当地グルメの柿の葉寿司です。天ぷらうどんのお汁も薄味で出汁がきいています。果物は柿です。奈良らしい。
ちなみに明日香でレンタサイクルで回るとなると行く先々で駐車料金と入場料が必要になります。一日回ると軽く1万円以上の出費になります。よく整備されているので仕方ないかと。それでももう少し何か方法はないのかなと思ってしまいます。訪れる人ももてなす方もどちらも潤うようなシステムってないのでしょうか。例えばワンデイフリー券とか。もともとウィンウィンってないでしょうけど。







