Go to travelに行くなら、どこに行きますか? Ⅲ 愛媛県佐多岬半島 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

バイカルアザラシのnicoチャンネル

 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 日本列島には茨城県の鹿島から愛媛県の佐多岬まで中央構造線が走っています。これは日本列島を横断する大断層で、三重県と奈良県を境にして西側は今でも年間5mmずつ断層が動いています。たかが5ミリ、1000年経ったら5mです。1万年もしたら50mと動きます。今でも生きている大断層です。

 

 民主党政権の時、高速道路を下りなければどこまでも1000円で走れるという夢みたいな政策がありました。そのおかげで国の財産を2100億円使い果たし、今では何も残っていません。自分もその恩恵にあずかって以前から行ってみたかった四国愛媛県の佐多岬半島に行ったことがあります。地図で長さを測ってみると36kmくらいある細長い半島が佐多岬半島です。小学校の時、休み時間に地図帳を眺めていました。不思議な地形があるとここはどんな所なのか、いろいろ想像していました。

 

 中央構造線は、愛知県の渥美半島、三重県の神島、和歌山県の和泉山地、香川県の讃岐山脈をつくり、愛媛県の佐多岬半島をつくりました。衛星写真で見るとこれらの半島や海嶺はすべて一直線につながり、九州の熊本県まで続いています。

 

 この日は風の強い日でした。大鳴門橋は強風が吹き、車が海に投げ出されるような怖さがありました。もちろん安全なのですが、突風でハンドルを取られるのは結構恐怖を感じました。四国を横断する自動車道は山の中を走っていて左右とも真っ暗です。心細くしているとパーキングエリアが見えてきました。ここで遅い夕食を撮りました。讃岐うどんです。四国で初めて食べました。それが各自で好きな柔らかさにうどんを茹でるという食堂です。お客さん達は、何の違和感もなく当然のようにうどんを茹でては口にかき込んでいます。こんな習慣がない自分にとっては、開いた口が塞がらないほどの驚き。隣の人が茹でているのを盗み見しながら、どれくらい茹でるのかを必死に観察していました。エリア内の温泉に入って車で仮眠をとります。春の嵐がやって来ました。車が揺れます。でも、疲れているので強風で車が揺られるのもゆりかごのように爆睡して朝を迎えました。朝もうどんを自分で茹でて朝食です。もう違和感はなくなっていました。これでうどん県の住民になりました。

 

 佐多岬半島には風力発電施設があります。風の半島なのでしょう。半島を貫いている自動車道は山の峰に敷いた道です。眼下には瀬戸内海、そこからそそり立つように半島が碧い空に突き出ているのです。私たちは半島の嶺々に刻まれたスカイラインを走らせていただいているのです。あの細々とした長い佐多岬半島は、瀬戸内海から急峻な海嶺がそのまま突き出た地形だと気づきました。

 小さな村々はそこから下りていく形になります。いったい岬はどんな形をしているのか、何が見えるのか、小学校から想像していた景色がもうすぐ見えます。岬には灯台があります。向こう岸は大分県、国東半島が見えます。それにしても川のように激しく流れる浅瀬、激しい流れです。海がこんなに流れるのか。太陽が西の空に沈んでいきました。

 

 岬の先端には灯台があります。佐多岬灯台。やっとここまで来ることが出来ました。何があるわけではありません。やはり岬と灯台。これだけです。狭い駐車場で蜜柑を売っているおばあさんがいました。その酸っぱさが口の中に今でも残っています。あの蜜柑は美味しかったのか。強烈な酸っぱさだけが残っていて、それも楽しい思い出に今では昇華されました。

 

 時間通り目的地に行ける自信がなかったので、すべて車中泊です。眼下は松山市街が見えます。松山城や球場が見えます。少し早く着いたので、こころゆくまでベンチに座って夜景を楽しみました。

 

 パーキングエリアは恋人達の聖地になっていて、鍵が掛けてあります。重みでフェンスが倒れないかと心配です。結ばれたカップルもいれば、もう鍵も要らない二人もいるんだろうと勝手な想像をして喜んでいました。

 

 朝六時になると太鼓の音が聞こえてきます。道後温泉の朝です。ここまで来たら入らないと。夏目漱石の坊ちゃんもこの湯船に入ったのでしょう。

 

 松山市内は路面電車で移動します。どこに行ったかは記憶がありません。坂の上の雲の歴史資料館に行ったのは覚えています。日露戦争の時日本海海戦で東郷平八郎を支えた士官が松山の生まれです。松山と言えば、正岡子規など俳人が多く輩出しています。

 


 来島海峡に大橋が架かっています。ここから広島県まで自動車専用道路になっています。ここに来たのは、車で通るのではなく、レンタサイクルで大島まで行こうというものです。今治から自転車を借りて大橋を漕いでいきます。下に瀬戸内海が見えます。どれだけ島があるのでしょう。数えきれません。ほどなくサイクリングコースを下りて道の駅に入りました。瀬戸内の幸が並んでいます。市場で買ったらバーベキューができるというシステム。美味く出来ています。いつか途中の島で一泊して尾道まで完走したいものです。今では世界有数のサイクリングコースになっています。

 

 松山市内で道後温泉に入って路面電車で市内散策はポピュラーな旅ですが、佐多岬半島を横断したり、しまなみ海道をサイクリングする人はそんなに多くはいないでしょう。それも全部車中泊で300kmも遠征してくるとは。食文化って面白い物だと思いました。もともと瀬戸内は四国山地と中国山地に遮られ、雨が少ないところです。だから稲作が出来ません。しかも四国にはお椀を伏せたような山がいくつもあります。これは噴火活動の名残です。火山灰で水はけがよくこれまた水田には向かない地質。そこで小麦が作られうどん県となりました。今ではこれがご当地グルメとなっています。その気候風土に合った食材で最高の物を作り上げる。日本のどこに行っても美味しい物が食べられるのは不思議なことです。

 

 秋になると旅に出たくなります。だれもが抱く気持ちなのかも知れません。自粛も長くなってきました。パーチャル旅ももう終わり。そうしたいのですが、そうも行きません。最近脚光を浴びてきたのが、マイクロツーリズムです。つまり自分の住んでいる街に宿泊して身近な観光資源や食文化に触れようとするものです。意外に素晴らしい発見があるかも知れません。

 

 変わった人が旅をするとやはり変な旅になります。動画でご覧ください。