松阪市の櫛田川ではお正月に左義長を燃やす。この行事は、どんど火と言われている。櫛田川には神話が伝わっている。天照大神が川面に自分の姿を映した。水のあまりにも美しさに櫛を落としたという。川の流域には田んぼがある。ここから櫛田川という名がついたという。正月も終わりになる成人式の日、流域ではどんど火が焚かれる。
井上靖が「しろばんば」の中で、どんどん焼きの中に習字を燃やすシーンを描いている。炎で高く上がれば上がるほど、書道が上達するという。この地区では左義長の上に幣を飾り、それが一気に燃え尽きると豊作になると言われている。今朝は二つの幣は見事に一気に燃えついた。乾いた笹は爆発的に燃える。そして、竹の中の空気が膨張して、香肌峡の狭い谷々に大砲のようなとどろきをこだます。
やがて火が下火になりると人々は餅を取り出して焼け石で焼く。こんがり焼けた餅は甘い。遠赤外線で焼けば甘くなる。どんど火で焼いた餅を食べると無病息災に一年を過ごせるという。