棚田の春 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

バイカルアザラシのnicoチャンネル

 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 棚田を貫く一本の小径。遠い昔からこの道はありました。両側には早苗が植わって春が来ました。

 

 棚田には稲荷さんが逆さに映ってシンメトリーになっています。これを見るとなぜか落ち着きます。祭られているお稲荷様は、古事記によると農作業で働き過ぎて亡くなられたとか。今風に言えば、ワーカホリックなのでしょう。でも、今は農業を司る神様として静かに鎮座しておられます。

 

 春が来れば大祭を行い、山の神が里にやってきて五穀豊穣をもたらします。秋には大祭を行い、豊作を感謝し山の神は山に帰って行かれます。冬、山眠り、山凍る奥山には神が休まれる。今は里に神がいらっしゃるからすべてが真緑の世界があるのでしょう。これが日本古来の素朴信仰です。

 

 南を見れば、烏山が見えます。夕暮れになると烏が寝床へ帰って行きます。清少納言は「枕草子」でこれを「おかし」と表現しました。しみじみとして趣があるという意味でしょうか。田を耕せば、小鳥がやってきます。最後にやってくるのは烏です。鳥たちは山で住まい、田んぼで食す。真緑の山が早苗の植わった水面に落ちるのを撮ろうとするのですが、いたずらな春風が邪魔をしてシンメトリーを描いてくれません。やきもきしている私を春風も棚田の水面も笑っているように見えてきました。