
桜の名所、奈良の吉野山の天気は雪です。平安時代から吉野は雪深い所と言われています。修験道の本山、蔵王堂は参拝客もまばらでひっそりとしています。

こうすると雪がたくさん降っているのが分かります。4月11日の花供懺法会の頃になれば、吉野桜が満開になり、境内は人また人の山となります。それまではひっそり閑としているのでしょう。こんな日に静かに山巡りをするのも趣のあるものです。

奈良に来れば、柿の葉寿司です。今日はお店の客も少なく、店主がお吸い物とくず餅をごちそうしてくれました。なんとも太っ腹なお店です。店内を見ると自家製の夏みかんをご自由にと、それにハハコグサの苗も持ち帰りできるとか。吉野の人たちのおもてなしの気持ちが伝わってきます。

柿の葉寿司は、シメサバにシャリを柿の葉で包んだ物です。いたってシンプル。なのに美味しいのはどうしてでしょう。柿の葉の香りが鯖とよく似合います。

勝手神社や吉水神社、水分神社など、山巡りをしようと思いましたが、水道工事で通行止め。帰りに桜餅と草餅を買いました。ここもお客は閑古鳥が鳴いています。店主が大きな草餅からあっという間にあんこをつつんで、大きな草餅を作ってくれました。天皇陛下に献上したこともあるという老舗です。たった四個なのに笑顔でお茶まで出そうとしてくれました。それにしてもこの薄紅色と緑が春を思わせます。寒い雪の中に春を見つけた気がしました。
蔵王堂には三体の秘仏があります。今年の御開帳は、4月1日から5月8日のようです。今日は、堂内を巡りました。秘仏は見えなくても、風が吹くと几帳がひらりと広がり、そこからかすかに秘仏が見え隠れします。堂内には、役行者や薬師如来、金剛大権現など、それだけで本尊になるような仏様が人々を迎えます。
雪の降る中、吉野山は何もありません。ただ静けさだけがあるのみ。でも、そこには春を待つ人々の温かさが身にしみる吉野山でした。春爛漫に山桜が満開の吉野山もまた素敵です。でも、今日のような何もない静けさの中の吉野山もまたいいものです。どの木々にも花の芽が結んでいて、季節が来たら花が爆発的に萌え出るように、今はエネルギーを充填しているのでしょう。
山、凍り、山、眠る冬。全山、薄紅色の吉野桜の花びらで覆われるのはもうじきです。