バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

荒波とテトラポッド、冬の泊海岸

 十月は全国の神は出雲に集合して、ここに神は居ません。それが神無月なのでしょう。そのお隣の鳥取県湯梨浜町泊海岸。仲秋になると冬の兆しが見え始めました。大陸の冷たい風が容赦なく海に吹き付けて漁港の突堤に波頭が立っています。本格的な冬になればどんな光景になるのでしょう。綿津見の魂は荒ぶる神となって、ますます大波は押し寄せるのでしょうか。

 

鳥取県湯梨浜町泊海岸の漁港風景

 朝の泊の港、急峻な丘は壁のように立ちはだかり、風はウソのようにありません。突堤に押し寄せていた純白の波頭は消えて漁港は凪いでいます。

 

灘郷神社の社殿と木々

 泊の街の細々とした参道を登っていくとこま犬が居ます。さらに急な階段を上っていくと泊の街が眼下に見えます。朝日が灘郷神社の社に差して神々しく見えます。祭神は須佐之男命。勇猛果敢な神様です。あまりの素行に天照大神を怒らせ女神は天岩戸にお隠れになったほど。八岐大蛇を退治した功績をたたえられて戦の神様でもあります。

 

 隣には恵比須様が祭られ、やはり漁港らしい感じがします。七月には大漁旗を立てた60隻の船が出て船神幸が行われます。十月の秋の祭典で大名行列が。漁港はにわかに活気づきます。恵比須様は鯛を担いでいるので、豊漁をここでお祈りするのでしょう。

 

古い町並みと空

 日本海に面した北側の景色はもう荒々しい冬の走りが見え、鉛色の海に白波の景色。南側の港町は風が凪いで静か。朝はひっそり閑としています。板葺きの家、モルタルが塗られた壁にはツタが繁茂しています。これほど北と南の風景が対照的な街を見たことがありません。社のある絶壁が海と街を隔離しているのです。

 

水木しげるロードの妖怪ブロンズ像

 泊の港から境港に行きました。ここに水木しげるロードがあります。街道に妖怪のブロンズ像がならんでいます。代表作ゲゲゲの鬼太郎に登場する妖怪が大小100体ほど。各所にスタンプが置いてあってラリーができます。

 

水木しげるロードの妖怪展示

 お目当ての水木しげる記念館。妖怪が待ち受けています。館内は不気味な空間で異世界です。

 

水木しげるロードの妖怪と子供たち

 原画が展示してあって、やはり妖怪は実在するのか。半世紀前、狐に化かされたという話をまことしやかに話すおじさんがいました。今、そんな話をするとひんしゅくを買うかもしれません。妖怪が夜になると闊歩していた世の中はいつのまにか消えてしまいました。ひよっとしたら妖怪と共存している世界の方が私たちの心は豊かだったのかも。

 

境港の海鮮丼とカニ汁

 記念館を出ると妖怪の異世界からこの世に戻りました。急にお腹が空いたので海鮮丼をいただきました。境港はかって水揚げ高が日本一に。北海道の釧路港や静岡県の清水港と今も競り合っています。日本海に上がる海の幸は絶品です。お刺身がてんこ盛りで、どんぶりの奥深くご飯が盛り付けてあります。カニ汁は美味。これで2200円です。さらにどんぶりの締めには、熱いだし汁が煮えていて、どんぶりにぶっかけるとお茶漬けができます。1400円でセルフでお刺身が盛り放題のどんぶりもあります。海鮮好きにはたまらないお店です。

 

美保関灯台と日本海

 腹ごしらえができたので、境港の対岸に渡りました。山が迫っています。地図を開くと境港は日本最大級の砂州でできています。そこに島根半島が北に乗っかった形。どうみても不自然な地形です。1500万年前、島根半島という山塊が境港まで押し寄せました。しかも、噴火を伴い隆起します。境港は天然の漁港となりました。これほど人間に都合の良い漁港はありません。日本海の荒波を風を一手に島根半島が遮り、港は静か。冬の荒ぶる綿津見から守っているのです。荒れた海の魚介類はより美味しくなります。

 

 島根半島の先端地蔵崎、その岬には石造りの灯台があります。明治の御雇外国人ブラントンが設計した白亜の灯台。美保関灯台があります。

 

美保関灯台と海、島根半島

 ここからはかすかに隠岐の島が見えています。後醍醐天皇は承久の乱を起こし島流しに。そこで崩御されました。この石造りの灯台、本州最南端潮岬の近くに浮かんでいる紀伊大島の樫野灯台と兄弟です。能登半島の先端禄剛崎にも同じ灯台が。岬にはいつも灯台があります。灯台にはいつも風が吹き寄せています。その近くには遭難碑が。灯台が置かれた海域はやはり危険なのでしょう。

 

城崎温泉の川沿いの柳と太鼓橋

 翌日は日本海をひたすら東に向かい、城崎温泉に来ました。川には柳が植えられ石造りの太鼓橋がいくつも架かっています。老舗の旅館が川沿いに建ち並び、温泉の質は最高です。一度入ればお肌はつるつるになります。外国人の多いこと。日帰り入浴のラウンジに居るとカナダからの老夫婦がいました。三週間で全国の名湯を巡っているらしい。ここでは三日間も逗留するようです。一時間で日帰り入浴をして、次の目的地に行く私たちとは大違い。

 

 志賀直哉はここで「城崎にて」という小説を書きました。列車事故で傷を癒すために来ました。ここで彼は蜂の死骸を見つけます。命のはかなさを彼独特の観察眼と言葉で表現しました。それは事故で瀕死の世界から脱した人が見た最初の死です。二つ目の死は、この川に泳ぐドブネズミです。必至に泳ぐドブネズミ。人々が石を投げます。ネズミは程なく川の中に沈んでいきます。さらに小川に行くと一匹のアカハラに出会います。イモリにいたずらで石を投げました。図らずも直哉が投げた石はイモリに当たり、即死。またも命のはかなさ、死と生は一体であることを見つけます。彼の代表作は死をさまよった世界からかろうじて生の世界に舞い戻り、城崎温泉という自然の恵みに抱かれた静養の時間から生まれ出たものだったのでしょう。蜂、ネズミ、イモリの三度の死は、文豪に生と死を否応なしに対峙せざるを得ない状況に追い込んだのでしょう。

 

 山陰の海岸線を忠実に200km。海の幸から温泉の恵みまで。海岸は砂丘を含めて様々な地形が見られます。そこに暮らす人々や家並みは否応なしにその道程や歴史を語りかけてくれます。それは季節毎に話す内容が変わってくるのでしょう。冬の兆しを感じさせる山と海は、山や丘を一つ隔てれば、荒々しさが恵みに、死は生に変えられています。冬の山陰の海岸線はそれに出逢えます。

 

 画像をクリックすると動画をご覧いただけます。見てね! 馬馬馬馬馬

恐竜と小惑星の接近

 今から6604万年前、太陽系の第三惑星に直径10kmの小惑星が近づいていました。ちょうど中生代白亜紀の終わりで恐竜が繁栄していた頃です。

 

チクシュルーブ・クレーター付近のユカタン半島衛星写真

 今でも宇宙からユカタン半島にその跡を見ることができます。赤い○で示した所がクレーターの南半分で北半分は海底にあります。

 

小惑星衝突による地球の激変

 地球への衝突角度は45°~60°で生命にとっては最悪のシナリオでした。広島型原爆の10億倍の威力です。大量の物質が地球を覆い冬がやって来ました。地球は10℃から16℃冷えたといいます。地球上の生物の75%が死に絶えました。 

 

チクシュルーブ・クレーター:小惑星衝突跡

 これはチクシュルーブ・クレーターではありませんが、小惑星が衝突した跡は世界各地に残っています。最近、チクシュルーブ・クレーターからイリジウムが検出されています。これは小惑星に由来する物質で地球では見当たりません。つまりユカタン半島に衝突した小惑星が恐竜を絶滅させたという説が確実になりました。

 

 小惑星の衝突で地球に冬がやって来ました。環境に過剰適応して大きくなった冷血動物が生き残るのは不利な状況となりました。そこで寒い環境で有利になったのがネズミを小さくしたような哺乳類です。哺乳類は自分で体を温め寒ければ体を寄せ合います。こうして人間の祖先はまったく特色も取り柄もない当時恐竜の餌にもならないような小さな哺乳類から進化しました。

 

 弱くて特色がない。特色がないと言うことはどんな形にも変化できるという可塑性があります。こうして哺乳類は互いに温め合って寒い環境を生き抜きました。ある者は海に戻り海洋生物になりました。ある者は森に進出しました。そして、440万年前ヒトが誕生しました。進化の頂点にある人間、今、人間活動が温暖化や核開発、環境破壊など自滅に向かうような活動をしてる側面があります。

 

 恐竜がある日突然小惑星によって絶滅したように、人間もあの何の取り柄もない特色のないネズミのような祖先のことについて深く学ばなければなりません。なぜ厳しい環境を生き抜けたのか。それは体を温め会い互いに分かち合ったからです。それは愛という言葉で表せることができるかも知れません。そこから私たちの生活や活動を軌道修正するヒントがあると考えられます。

 

 6604万年前に起こったこの出来事から何を学ぶか。私たちの遠い祖先が示唆する物は何なのか。深く考えてみたいと思います。

 

 さらにさかのぼって2億5千万年前に生命の90%が絶滅するという壮絶な事件が起こりました。地球45億年の歴史から見ると最近のことです。ペルムブルームという地球規模の巨大噴火です。これにより古生代は終わり、中生代に入ります。地球の地殻は固い物質なのですが、これがマントルに落ちていくことがあります。噴火したのはシベリアの中央部です。溶岩はユーラシア大陸に流れ出しました。火山ガスや溶岩、粉塵が地球を覆い全体が氷の世界となりました。地球上を覆った三葉虫が絶滅しました。

 

 しかし、この生命大量絶滅は、次の生命の繁栄をもたらします。生命は古生代よりもはるかに多くの種を進化させ、多様な生命が地球に生まれます。生命爆発です。恐竜がその一つです。そして、地球を覆ったのは恐竜の世界となりました。しかし、前述の通り、小惑星の衝突で絶滅しました。実は、6604万年前に絶滅したというのは正しくありません。恐竜は数万年生き延びた物がいることが最近の研究で分かっています。

 

 人類が登場したのは、400万年前です。今、第三の生命が地球を覆っています。この生命は文明を持ち、高い知能で宇宙まで進出しました。しかし、文明を平和のために使うのではなく、自らを滅ぼすために使いました。今でも、領土を広げようとして各地で戦争を起こしています。それぞれに大義名分があり、自分が正義だと思っています。

 

 地球を覆った生命が3つあります。しかし、三葉虫は火山噴火で、恐竜は小惑星の衝突で絶滅しました。ホモサピエンスと言われる進化の頂点の立ったと自負する生命は、お互いに殺し合い、築いた物を破壊し合っています。彼らは、これを続ければ、自らの手で絶滅することを知りません。

 

 三葉虫は火山噴火を止めることができませんでした。恐竜は小惑星の衝突を止めることはできませんでした。人類は自らの絶滅の危機を止めることができるかもしれません。それは、共存を選ぶか、絶滅を選ぶか、彼らの選択にかかっているのです。知恵ある人ホモサピエンス。その知恵を平和のために使ってください。賢い選択をしてください。

 

 人類の祖先、あの小さいネズミのような哺乳類たちが、恐竜の脅威から、いくつもの氷河期の寒さと飢餓から生き延びたのは、互いの温め合って共に生き延びたからです。

 

台風と偏東風の天気図

 非常に強い台風22号が去ったと思ったら、今度は強い台風23号が伊豆諸島の南部を通過していきました。先月の初めには、台風が紀伊半島を横断していきました。

 

 日本近海の海水温が高いため、列島近くで台風が発生したり、日本に近づくと急に発達したりします。北緯30°を越えれば台風は衰えるものなのですが、今年は逆に強い勢力が非常に強い勢力へ、強風域だけの物が暴風を伴うまで発達する。こんな例はあまり聞きません。

 

 地球は自転しているので赤道付近は偏東風が吹いています。地球の大気は一つの膜でできてるので東の風の吹きだまりは高緯度地帯では偏西風になります。北半球ではジェット気流と呼んでいて、航空機は東に向かうときこれを追い風に燃料を節約します。南半球ではさらに偏西風は激しく緯度によっては年中台風並みの西風が吹く地域があります。

 

 さて、今年は赤道付近の東風偏東風が蛇行しているので、ここに低気圧ができると簡単に台風の卵となります。偏東風の吹く地域で熱帯低気圧が生まれ、北緯30°付近で台風になります。ここより北に台風が進むと偏西風に流されて東に進路を変えます。

 

 今年は偏東風の蛇行が顕著なのでどんどん台風が生まれているという状況です。図のように低気圧が出来て大気の擾乱がまとまってくると台風24号が生まれてるのも時間の問題かもしれません。

 

 ちなみに9月の初旬に来た台風では松阪市で45mmの時間雨量を記録しました。一時間の雨量ですから、相当な物です。近くにアメダスがあるのですが、35mmでした。わが家の雨量計は10mmも多く記録していて、雨は極局地的に降ることが分かります。

 

 10月になって二つの台風が日本にやってくる。二度あることは三度あるのか。例年なら台風の時期は終わりかけなのに、まだ南の海上が気になるのはこの偏東風の蛇行のせいです。南海上の天気図に毎日目をやる日々は続きそうです。

満月とジャイアントインパクト

 これは10月6日の仲秋の名月ですが、十五夜ではありません。月齢が15になったのは翌日の7日でした。このように仲秋の名月と十五夜は別の日になることがあります。仲秋の名月とは太陰暦の8月15日に見える月なので、この日が月齢15になるとは限らないからです。

 

 それはそれとしてこんな質問が寄せられました。

 

 月は大きく見えるときと、小さく見えるときがあるのですが、本当ですかと理科の先生に尋ねたそうです。すると、理科の先生は月が稜線に近いときは錯覚で大きく見えることがあります。カメラで撮ると稜線に近い月も同じ大きさになります。

 

 さすが理科の先生、錯覚でそう見えることはあります。論理的ですね。でも、自分はやはり月が大きく見えたり小さく見えたりすると思うのですが・・・。

 

月の近地点と遠地点での見え方の比較

 実は月は50億年ほど前に火星大の小惑星が地球に衝突して片割れが月になった物です。これをジャイアントインパクトと呼んでいます。今でも年に月は3cmほど地球から遠ざかっています。この画像を見ると月は近地点で35万7千km、遠地点で40万6千kmと楕円軌道を27.3日で公転していることが分かります。月は38万5千km離れているというのですが、これは平均の距離です。

 

 なので、近地点に来たときは12%も大きく見えます。ちなみに近地点の満月をスーパームーン、遠地点の満月をストロベリームーンと呼んでいます。今年のスーパームーンは11月5日で、スーパームーンの中でも最も近地点を通るので見逃せないですね。何と言っても5万キロも近いのですから、大きく見えるはず。

 

 名月を詠った俳句は多くあるのですが、小林一茶が「おらが春」のが有名です。

 

 名月や とってくれろと 泣く子かな

 

 一茶が57歳の時の句です。おんぶしているのは「さと子」で56歳のときの子で2番目。実は1番目の子がなくなり、この女の子も亡くなります。仲秋の名月を愛でて見ていると、おんぶしているあどけない娘が名月を取ってくれと泣く。なんと健気な娘なのでしょう。一茶が困っているのでしょうが、子どもへの愛情がほとばしっている句です。それでも娘は亡くなっていく。一茶はもう一人子を得ますが、この子も亡くなりました。

 

 一茶の生涯はいったいどんな道程だったのでしょう。この世の中をどのように見ていたのでしょう。そんなことは関係無しに、名月は一年に一回やってきます。相変わらず美しい光景を見せてくれます。名月の下で、私たちは名月を見上げ、何を感じ、想いを馳せるのでしょう。

 台風23号は現在停滞気味のようです。地球が自転しているので、無風状態だと台風は西に進みます。北上すると共に偏西風(西風)を受けるので北よりに進路を変更します。北緯30℃を超えるとさらに東寄りに進路をとり、今の予報なら本州の南海上を通り、伊豆諸島付近を通り東海上に抜けます。今は、地球の自転の慣性と偏西風のせめぎ合いで停滞状態


 

 以前の予報よりも西に進みすぎたため、北上するチャンスが遅くなり、当初の予報よりも遅れています。今、台風は中心より南側に雨雲を持っており、北東方向にも雨雲があります。日本近海の海水温度は相変わらず高いため、今は暴風域はありませんがさらに発達する可能性があります。南側の雨雲は北上とともに北東方向に集まってくるでしょう。

 

 紀伊半島は結構雨が降っています。和歌山県の天神崎や三重県の大王崎ライブカメラを見ると、高波が押し寄せているのが分かります。黒潮躍る熊野灘の景色が見えるでしょうが、海に近づくのは危険。

 

 それにしても八丈島は土石流があったり、電柱が折れたりと停電が続いているようです。これでまた23号が通れば、どんなことが起こるのでしょう。災害が少しでも少なくなるよう、また、この海域で操業している漁船の皆さんや、海上自衛隊の隊員皆さん、タンカーや貨物船も水平線に見えています。綿津見の命も波を荒げないよう、すべての方の御安航をお祈りしています。

 

 海の神様綿津見の命を祭るのは福岡県の宗像神社にあります。海の神様は霊験あらたかなので各地に祭られていますが、三重県で神島の八代神社が有名です。また、雨が強くなってきました。自分には何もできないので、台風への準備とあとは神頼みです。神道では遙拝と行って、神様が祭られている方向にお祈りすると、願いが通じるらしいです。これならお社まで出かけなくても、家でできますよね。