3.並行陣(ダブルス)
これは「2.ネットプレイ(シングルス)」と通じるものがあるかもしれません。
また「様々なフォーメーション」シリーズでもお話しています。
これも、いわゆる
「並行陣は攻撃的な戦術だ」
という、あくまでも「一般論」を、みんなが実践しようとしてしまっている一例になるかと思います。
一度、調べてみてくださいね。
YouTubeなどで「女子 ダブルス」などと検索をすると、ジュニアからプロのものまで、いろいろな試合の様子が公開されています。
これらを見ると、並行陣になるパターンが非常に少ないことが分かります。
逆に、女子連などの一般プレイヤーの試合を映したものほど、並行陣をバンバンやっている。
たとえば、ハードコートの全豪オープン。
決勝はバボス&ムラデノビッチvsジャン&ストーサーでした。
このとき、優勝したジャン&ストーサー組が並行陣になった回数は、全19ゲーム中、20回。
1ゲームに1回の割合。
ただ、そのうち、第2セット7ゲームでは後半4本連続で並行陣になっていて、これは明らかに2人で作戦として行っています。
リターンダッシュや、ダブル後衛から、2人同時にあがる、みたいなギャンブル要素も高いプレイもありましたから。
つまり、並行陣を狙う状況というのは、非常に限られている、ということです。
ポイント率は、20本中12本の60%。
ベースラインからのアプローチはなく、全てベースライン内からのアプローチショットを打っているわけですから、その時点で攻撃的なショットを打てている上での、この60%を「得点しやすい」とみるかどうか、です。
対するバボス&ムラデノビッチは、その後の全仏では優勝を果たし、現在WTAのダブルスランキングの1位、2位になっているペアですが、基本的に並行陣になるパターンが非常に少ないペアでもあります。
男子プロになると、サーブダッシュでの並行陣が普通なのですが、これを一般のプレイヤーの我々がどう捉えるかにもよります。
正直に言えば、グランドスラムの決勝を争う女子プレイヤーは、我々一般プレイヤーでは足下にも及ばない。
男子のパワーとスピードは、さらにその上を行きます。
にもかかわらず、なぜ我々は、女子のトッププレイヤーやジュニア選手を飛び越えて、男子のトッププロの戦術を真似しようとしてしまうのか(笑)。
並行陣を戦術として多用する際には、いくつかの条件が必要となります。
(1) 高いネットプレイの技能を、ペア二人ともに持ち合わせていること
(2) 強く、正確なアプローチショットを打つ技術を持ち合わせていること
(3) 相手ペアのストローク力が低いこと
(4) 相手ペアが対並行陣に慣れていないなど、前に出るだけでプレッシャーに感じてくれること
(3)については、あくまでも自分のペアとの比較級で構わないのですが、一般プレイヤーの場合、(3)、(4)の条件だけで並行陣が成り立つ場合がほとんどです。
ですから、一般プレイヤー向けの戦術理論などで、何が何でも並行陣をさせようとしたり、
「並行陣をすれば、どんな大会でも優勝間違いなし!」
みたいなのを読んだりすると、「?」ってなってしまう。
これも、シングルスでのネットプレイと同じく、雁行陣での得点率と比べ、本当に並行陣での得点率が高いのか、データを取るべきです。
もちろん、理想の戦術は並行陣ですよ?(笑)。
よくここを勘違いされて怒られるので、確認で言っておきますが(笑)。
雑誌の特集などのダブルス戦術の特集でも、
「トップスピンのサーブをセンターに入れ、リターンが浮いたところを、ワイドにボレー」
みたいに簡単に書かれていたりするのですが(笑)、それを狙ってコンスタントに再現できるプレイヤーは、そもそもテニス雑誌などで戦術を学ばないと思うんですよね。。。。
大切なのは、
「どういう状況で並行陣にもっていくのか」
という取捨選択を、自分のプレイレベルに合わせてできることであって、並行陣を何が何でも習得することではないのです。
【次回へ続く】