5.スタンスごとの足の使い方がおかしい

 これはフォアハンドで多いですね。
 
 まず、一番多いのは、フォアハンドのスクエア・スタンスにおいて、フォワード・スウィングとともに(右利きなら)右足も同時に前方に移動してきてしまい、インパクト→フォロースルーの間に、右足が完全に前に踏み出すような感じになるやつです。
 
 ヒトは、普通に歩いた場合、左右の腕と足が交互に前に出ます。
 
 したがって、フォアハンドでのスウィングで右手が前方に出るのであれば、左足が前に出て、右足が後ろに残ることが普通のはず。
 
 ですから、右手と右足が同時に前に出るようなスウィングは、人間工学としてもおかしい、ということになります。
 
「スタンスの使い分け その3」でもお話ししましたが、スクエア・スタンスの場合、右足の「蹴り出し」によって右骨盤を前に押しだし、左骨盤を左方向にずらすことによって、骨盤が反時計回りに回転し、それにともなって上半身が回転することになります。
 
 したがって、フォロースルーの間にも右足が後ろに残ることが多く、体が「ねじれた」状態になる
 
 これが普通です。
 
 もちろん、完全に振り終わった後、体の回転の勢いが止まらずに引っ張られるように右足が出る、という感じならばOKですが、そうでない人が多くいます。
 
 いわゆる「ドアスウィング」というやつですね。
 
 原理は「回転軸のズレ」です。
 
 回転軸が背骨を中心とした「体軸」ではなく、左足から左肩を結んだラインになってしまっているため、体の左側に蝶番をつけたドアのように、下半身と上半身が一緒に出て行ってしまうのです。
 
 いろいろと原因はあります。
 
 まず、股関節が上手く動かず、『スタンスの使い分け 補足 左腰の「ずらし」 その2』でご紹介した、左股関節の「ずらし」ができないこと。
 
 これが一番多いのではないでしょうか?
 
 そしてもう一つ大きいのは、スクエア・スタンスで右足→左足に重心移動することを「体重移動」としてしか認識していないこと。
 
右腰を前に回転させるために、右足で蹴り出す」
 
 ということが分かっていないと「ねじれ」が生じるはずもありません。
 
 少し、試してみましょう。
 
(1) 両足を肩幅に広げて立ってみてください。
 
(2) そこから右足をわずかに浮かせて左足だけで立って下さい。
 
(3) その上で、肩のラインを反時計回りに回転させてみましょう。
 
 回転、できてしまうでしょ?(笑)
 
 そう、右足の「蹴り出し」がなくても、体の回転はできてしまうのです。
 
 ただし、左股関節を中心に、骨盤と肩のラインがほぼ同時に動く。
 
 これがドアスウィングの原因です。
 
 また、この骨盤の回転は左足の「内旋」を原動力としています。
 
 そしてこの左足の「内旋」を司るのが「小臀筋」と「大腿筋膜張筋」で、特にこの「大腿筋膜張筋」が、股関節の内旋だけでなく「伸展」にも作用します。
 
 そう、足が伸び上がったような状態になってしまうのです。
 
 プロの写真を見てもらうと分かりますが、前足(右利きの左足)の股関節は、適度に曲がっています。
 
 つまり、スウィングととともに右足が出てしまう人は左股関節の「たたみ」という動作もできないことになるため、ドア・スウィングがますます顕著になってしまう、ということなのです。
 
 僕が「体重移動」という感覚そのものがすごく大切だと思う一方で、安易にそれを生徒には言わないようにしているのはこのためです。
 
 このタイプの場合、右足が前に出ている打ち終わりの形を、かえって、
 
「体がしっかりと回転している」
 
 と勘違いしてしまうので注意して下さいね。
 
【次回へ続く】