さて、今回の質問は、まえやんさんからのもの。
僕のフォームが悪いのかもしれませんが、インパクトの時、右を向くイメージで打てとコーチに言われますが、コンチネンタルで握っている以上、それが理解できません。ラケットダウンの時ももっと状態をひねって、それをキープしたまま、ラケットを落とせと言われるのも理解できません。トロヒーポーズを通り越して、ラケットを落とした位置からスタートのように聞こえ、全くタイミングが合わなくなり、トスも安定しなくなります。トスをネット寄りの前の方に上げて、右を向くイメージって成り立たないような気がするのですが、ださださコーチは右を向いて打つイメージはありながらサーブを打ちますか?あるとしたらどんな時でしょう。僕は右足を寄せないタイプです。
適した画像を探すの手間取った上、仕事のキャパがいきなりいっぱいいっぱいになったせいで、返答が遅れました(汗)
面目ない。
まず質問の要点は次のものに凝縮させると思います。
「サーブのインパクトの際の、上体の向き」
です。
たぶん、まえやんさんのコーチのイメージは、次のようなものだと思います。
お分かりでしょうか?
フェデラーのサーブのインパクト直後の画像なのですが、上体が横向きになっていると思います。
まえやんさんのコーチのイメージは、たぶんこれなのです。
これには理由があります。
以前「サーブでのラケット軌道」というシリーズで少しお話したことがあります。
肩の関節は自由度がかなり高い半面、すぐに痛めやすく、また力が入る腕の角度がある程度決まっています。
それが「ゼロポジション」です。
上腕の伸びる方向が、正面から見た場合には両肩を結んだライン~少し上、真上から見た場合には、両肩を結んだラインに対してわずかに前方、という感じです。
つまり、そのゼロポジションを維持しながらサーブのスウィングをしようとすると、腕(ラケット)の軌道は、自然と限定されます。
上半身、特に両肩を結んだラインを基準にしたときの振り出し角度に、大きな違いを付けるわけにいかないわけです。
おそらく、ちゃんとしたスウィングができる方は、インパクトの直後、両肩を結んだラインに対して、外側に50~60度ぐらいの角度に、ラケットヘッドが振り出されることになるはずです。
ただスピンサーブやスライスサーブは、そのラケットの振り出し角度を変えることで、ボールに回転をかけます。
つまりラケットの振り出し角度を、フラットから変えようとするならば、上体の開きぐあいや腰の回転速度を調整することになるのです。
違うのは腰の回転速度とそれにともなう腕の振りです
と書いてます。
ですから、Yahoo!知恵袋でも「サーブのコツ」という質問に対して、「上体の横向きを維持する」という回答がかなりの確率で存在するのです。
僕自身としては、腕を振り出す角度を調節しているイメージだけですし、フェデラーほどのボールの回転を求めているわけでもないので(笑)、振り出し角度の「差」が小さい分、上体の角度の「差」はさらに小さくなっていると思います。
サーブではカラダの開きが早いと、上腕が後ろに取り残されすぎて「過角形成」という状態になり、ゼロポジションが崩れます。
実は僕自身が「過角形成」になることが多いのですが(笑)、そうなると、適度な伸張反射も起こりづらくなりスピードも落ちますし、肩を痛める原因にもなりやすい。
まえやんさんのサーブのフォームがどのようなものなのかは分からないのですが、考えられるのは、コーチが、まえやんさんの「カラダの開き」を気にしている可能性が高いことです。
特に右足を引き寄せないタイプの場合、「サーブの原理 その34」でも次のように書かせていただいています。
「しっかりとクローズスタンスを維持し左足はできるだけ前方に倒して曲げたまま、腰を後ろ向きにしっかりと回す、というイメージですだからこそ、プラットホーム・タイプは、なおさら上体が後ろを向きやすい。しかし、実際には、クローズスタンスにすればするほど、インパクトまでにかなりの角度、腰を回転させなければいけなくなって打ちにくくなる。そうすると、右足の蹴りがより必要となり、後ろ足に体重を残さざるを得なくなり、ますますヒップファーストの恩恵が受けられなくなる、というジレンマに陥ります。現に、プラットホームタイプの選手は(フェデラーをはじめ)ヒップファーストが小さくなります。
まえやんさんのコーチが、どこまで考えておっしゃっているのかは分からないのですが、カラダの開きを抑えるために、スタート地点からより深い横向きにさせる、という考えなのかもしれません。
ただ、あまり強い横向きの場合、ラケットの軌道が完全に横向きになり、ボールを前方へ打ち出すベクトルが小さくなる可能性は充分にあります。
それをカバーするには、フェデラーなどのような鋭いスウィングスピード、ということになってしまう。
また、インパクトのタイミングも変わってしまいます。
プロネーションが生じて、ラケット面が上体に対して「前」を向いた場合、カラダが横向きのままインパクトを迎えるとすると、それは「コートの横」にラケット面を向けた形になるわけですから。
つまりプロネーションによってラケット面が反転する前にインパクトを迎える必要が出てくるのです。
だからこそ、アマチュアの多くの方がスライスサーブなどを打とうとすると、プロネーションが抑えられてしまい、小指から振り下ろすような(野球でカーブを投げるような)腕の振りになってしまうのです。
また、まえやんさん自身がおっしゃっているとおり、ボールの打ち出し方向よりにトスを上げ、相手コートにめがけてボールを打ち出さないといけないのに、カラダを横向きにしながら打つためには、大きくコートの内側に飛び込むように打たないといけなくなりますしね。
ですから、いきなりカラダの回転やひねりを替えると、フォーム全体を崩す可能性が高いので注意してください。
うちの選手に、カラダを開くのが早すぎてサーブが安定しなかった選手がいるのですが、その選手のフォームの矯正も、何段階にも分けて、もとのフォームを大きくは崩さないように徐々に修正しました。
その選手は後ろ足を引き寄せるタイプで、それでもカラダの開きを抑えられるようになりましたから、プラットフォームはそれ以上に修正しやすいと思います。
まず、コーチに、なぜ横向きのほうが良いと思うのか、確認することをおすすめします。
まえやんさんが上体が開きやすいために、それを修正したいか。
それとも一般論として、カラダを横に向けると良い、ということだけを理想のフォームとしているだけなのか。
それによって取り組み方が全く異なりますから(笑)。
もしも、カラダが開きやすいというクセを修正する、というのであれば、いくつか方法がありますから、またお聞きくださいませ。