はてさて、またまたかなりのご無沙汰となりました。
今回は、まえやんさんからのコメントでの質問について考察していきたいと思います。
まえやんさん、遅れて申し訳ありませんでした。
まえやんさんの質問はこちらです。
今回はフォワのグリップについて最近迷いがあります。僕はウエスタングリップ?で握っています。手のVの所が2よりの3位で、人差し指の間は開けないタイプで、感情線にグリップが自然に来ます。自然に握ると完全に面は下向き、やり始めた時からこのグリップです。調子が良い時はかなり満足な球を打っているのですが、時に調子が悪くなると必ず、コーチなどからグリップが厚すぎると、手首の角度が取れないからスイングが安定しないとか、下から上にスイングできないからグリップを薄くした方が良いと言われます。僕の場合ダブルベンド意識して肘より手首が下がらない感覚で打っているので、あまり下から上は意識した事が無いのは確かです。手首も軽い背屈で深く背屈する意識もありません。どちらかとゆうと高い打点が得意で、低い打点が苦手です。セミウエスタ位で人刺し指を開けるグリップを強調してきます。自分の中でも素人には厚すぎるグリップなのか?と迷いも出てきました。ださださコーチの意見をお聞かせください。
ぼくはこれまで何回かグリップについてお話してきたことがありますが、ボレーやサーブではコンチネンタル・グリップを推奨させていただいている半面、ストロークについては、グリップの良し悪しを言ってきませんでした。
グリップの厚い・薄いにはそれぞれ長所・短所があり、一概にどれがよい、というものではないからです。
質問を読んだ上でポイントになるのは「手首の背屈」だと思います。
いろんな話が前後するかも知れませんが、一応、一つずつ説明していきましょう。
まず、まえやんさんのコーチがおっしゃっている、
「グリップが厚すぎると、手首の角度が取れないからスウィングが安定しない」
というのは、半分は合っています。
まず、ラケットの握りを厚くすればするほど、ラケット面を前に向ける上での、手首の背屈は必要なくなります。
上がウェスタングリップのとき、下がセミウェスタンのときです。
下の「薄い」セミウェスタンのほうがラケット面を前に向けるために大きく手首を背屈させているのがお分かりだと思います。
ストロークで、テイクバック~フォワードスウィングへの移行の瞬間、ラケットが慣性の法則で遅れて取り残されるような感じなり、グリップが先行してラケットヘッドが遅れます。
このとき、薄いグリップであればあるほど、背屈が起こりやすくなる、ということです。
「手首の角度が取れない」という表現があっているのかどうかは別にして、手首を背屈することで、手首が「固まる」イメージになりやすく、スウィングが安定しているように感じる場合は確かにあります。
ただし、実際には、強い背屈が生じた場合、伸張反射が起こる可能性もあるわけで、薄いグリップだとスウィングが絶対に安定する、ということにはならないのではないでしょうか。
そしてもう一つ、「下から上にスウィングできない」というのも、実はこの背屈の有無にかかわります。
みなさんもやっていただきたいのですが、下のような感じで手首を背屈させ、腕を水平近くまで上げてみてください。
上の画像が指を下に向けたまま、下の画像が指を横向きにした状態です。
上の画像のように、手首を背屈させながら指を下向きにしたまま腕を上げた方が、なんかつらくないですか?
前腕~ヒジの内側にかけてが突っ張るような感じになるはずです。
上の画像のままラケットを握ると、それはラケットが水平に倒れている状態に。
また下の画像のままラケットを握ると、それはラケットが垂直に立った状態になるはずですね。
これがポイントになるのです。
セミウェスタンぐらいの薄めのグリップで握り、フォワードスウィングによる背屈が生じて伸張反射が生じた場合、手首を掌屈させる筋肉には前腕を回内させる方向のものがあり、前腕を回内させる方向に腕が自然と動くことになるのです。
「厚く握るとトップスピン?」でもお話しましたが、これによってラケットの振り上げが起こり、トップスピンがかかることになるわけですね。
一方、グリップを厚く握った場合には、このような伸張反射は起こりません。
純粋に回内方向だけに働く伸張反射のみに頼ることになるため、鋭いフォワードスウィングによって強い伸長を生じさせるか、また随意運動に頼る必要がある、ということになるのです。
これが「下から上にスウィングできない」ということにつながる大きな原因です。
ダブルベンドの場合には、伸張反射が起こりにくいため、なおさらです。
うちの選手にも、ソフトテニス経験者のなかに、ウェスタングリップで、ラケットの振り上げがスムーズにできない選手がいますから。
問題なのは、その「厚いグリップ」を直すべきかどうか、ということです。
僕の意見としては「フォームの改造」シリーズでもお話したとおり、グリップをいじるのは最後の最後のほうがよいと思います。
まずは、回内と内旋を活用したラケットの振り上げを意識するところから始めるのはどうでしょうか?
ボレーのところなどでもお話しましたが、そもそも、カラダから打点が離れれば離れるほど、グリップは薄い方が良い。
だからこそ、ボレーやサーブ・スマッシュは、コンチネンタルでなければならないのですから。
低い打点が苦手、というまえやんさんは、決して特殊ではありません。
これは、低い打点の時だけグリップチェンジするか、またスライスに切り替える、また徹底的に腰を落とす、ということしかありません。
深く背屈する意識も、グリップが厚い時点で不要です。
厚いグリップで背屈をしたら、おかしいことになりますから。
さらに、コーチがおっしゃっている「人差し指を開ける握りにする」ということは、すなわち生命線グリップにする、ということで、これは「グリップの握り方 その7」でもお話しましたが、「厚い握り」にするのと同じ効果が生じます。
ですので、そのコーチがおっしゃる「薄く握れ」ということと、まったく矛盾してしまうのです。
もしもそのコーチが、
「薄く握る代わりに、違和感が出ないように生命線グリップにして帳尻を合わせる」
という考え方であれば分かります。
ただ、人差し指を開けるグリップは「ラケットコントロール」のためだと思われている場合が多く、
「人差し指を立てるようにすると、てこの原理でラケットを振り上げやすくなる」
などと思われていると最悪です(笑)。
そこは、コーチに聞いてみた方が良いと思います。
注意点は、ラケットの振り上げを意識すると、手首をこねるような打ち方になりやすいこと。
特に、ダブルベンドの場合、ラケットの振り上げにおいて、上腕の内旋が寄与しませんので、回内と同時に腕全体を振り上げていくイメージがないといけません。
回内でラケットを立てることと、フォロースルーを高くするイメージとを連動させると良いと思います。
また、ダブルベンドのスウィングの場合、ラケットを立てようとすると脇が横に大きく開くような変なフォームになりやすいので気をつけてください。