テニス雑誌などでサーブの技術論が語られるとき、必ず使われるのが「プロネーション」という言葉です。
 
 日本語では「回内」と呼ばれる腕の動きで、テニスやバドミントンのようなラケット・スポーツだけでなく、野球やバレーボールなど、腕を大きく使うスポーツの多くで重要とされる動きになります。
 
 これも、40代以上のテニスプレイヤーなどは、誰か誤った認識でテニス雑誌に書いたのが広まったせいで、かつて「内転」と呼んでいたかもしれませんね。
 
 中には「内旋」などとこんがらがっている人もいるかも。
 
 今では圧倒的に「回内」またはその英語の「プロネーション(pronation)」という用語が一般的になりました。 
 
 ただ、これも。。。ちょっとした間違いがあります。
 
 いや「大きな間違い」ではないですね。
 
「エッグボール」「ドライブ」ほどの間違いでは全くありません。
 
 ただ、あまりにも短期間に一般に広まったせいで、人それぞれが思っている「プロネーション(回内)」にイメージや知識、理解に微妙な「差」があるというか。
 
 よく分からないまま使ってらっしゃる人が多いというか。
 
 そのせいで、
 
「プロネーションは、絶対に必要だ!プロネーションを使わないような動きは、全くの時代遅れだ!」
 
「何言ってんだ!プロネーションなんか、手首をこねくりまわしているだけで、アマチュアがやったら故障の原因になるだけだ!」
 
「いやいや、サーブではプロネーションは大事だが、フォアハンドでは、絶対に使ってはいけないだけだ!」
 
 などなど、いろんな「理論」が濫立してしまいました。
 
 Yahoo!知恵袋で「プロネーション」とか「回内」って検索すると、ごまんと出てきますが、みんな言っていることがバラバラ。
 
 さて、どれが正しいんでしょうか?
 
 っていうか、皆さんが言っているのは本当に「回内」なんでしょうか?
 
 今回はそれを検証してみましょう。
 

 
 まず、そもそも「回内」(または「回外」)とは、肘から先の部分いわゆる「前腕」を、肘から手首を結ぶラインを軸としてねじるように回すことです。
 
 親指を上、小指を下にした「チョップ」のような状態を基準とすると、 掌を下に向ける動きを「回内(プロネーション、pronation)」、掌を上に向ける動きを「回外(スピネーション、supination)」といいます。
 
 図にすると下のような動きです(図1)
 
イメージ 1
 
 解剖学的に言えば、ヒトの前腕は、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)という2本の細い骨で構成されていて、その2本に巻き付く「円回内筋」と「方形回内筋」によって「ねじれ」が生じ、それが「回内」を引き起こします。
 
 逆向きに巻き付く「回外筋」が収縮すると「回外」することになります。
 
 橈骨と尺骨の動きを簡単な模型でしめすと、下の図のようになります。(図2)
 
イメージ 2
 
 さて、ここで本題です。
 
 手首の「回外」「回内」は、図2を見ても分かるように、前腕に埋め込まれる2本の骨の「ねじれ」によって引き起こされています。
 
 肩のように、間接の「ジョイント部分」で2つの骨が滑るように回転しているわけではないんです。
 
 これが手首の「回外」「回内」の可動域を限定する大きな要因になります。
 
 一度、やってみましょう。
 
 腕をまっすぐ前に伸ばし、肘をもう一方の手でがっつり固定し、回転も移動もできなくします。
 
 その上で、前腕部分だけを「回外」「回内」させて、その可動域を調べてみましょう。
 
 私の場合は、下の図のようになります(図3)。
 
イメージ 3
 
 まあ、大きく見積もっても100°~120°前後。
 
 これ以上動くっていう人は、押さえている肘の皮膚の中で肘の骨が動いているか、押さえている肘の皮膚が伸びているか、掌の中でペンの持ち方を無意識に変えてしまっているか、です。
 
 骨格上、個人差はほとんどありませんので、信じてください(笑)。
 
 ほーーら、皆さんがイメージする「回内」と比べると、雲行きが怪しくなって来てないですか?(笑)
 
 さて、長くなりましたので、続きは次に。