末っ子のレントと映画を観てきました。ジャンプ漫画「チェーンソーマン」で有名な藤本タツキの短編漫画を映画化した「ルックバック」です。映画館は近くのイオンシネマではなく、大阪梅田まで繰り出すことにします。家の中で引きこもっているレントとデートをするのですから、少しでも変化が欲しかった。映画を観る前に美味しいラーメンで腹ごしらえ。レントは喜んでくれました。

 

 ネタばれはしませんが、「ルックバック」は非常に素晴らしい作品です。作中で引きこもりの女の子が登場しますが、僕の中ではそうした登場人物とレントを重ね合わせているところがありました。レントに何かを感じてほしいという親心でもあります。映画館はとても清潔感があり、シートがふかふかでとても快適でした。次々と映し出される予告編を観ながら、レントはポップコーンをつまみます。僕もレントのポップコーンを横からつまみながらビールを飲みました。まだ映画は始まっていないのに、ビールは半分以上も無くなっています。

 

「ビール、もうないやん」

 

 レントに突っ込まれました。お代わりが欲しいくらいでしたが照明が落とされます。「ルックバック」が始まりました。いやー、面白かった。58分という短い映画ながら、藤本タツキのセンスが凝縮された名作でした。心を動かされる快感に酔いました。涙が出てきて、映画が終わったころには鼻水をズズッ……と啜っていました。50歳を過ぎると、若い頃よりも涙もろくなります。いやー、良かった。

 

 面白さにも色々とあります。以前、柴田哲孝著「暗殺」を読んだことを紹介しました。あの作品の面白さを端的に表現すると、隠された秘密を覗き見る面白さです。犯人の足取りや陰謀のあらまし、それから犯行に使われたトリックを、まるで覗き穴から見ているような感覚です。

 

 対して「ルックバック」の面白さは、没入感になります。主人公は特別な人ではありません。何気ない会話や取り留めない行動は、誰しもが経験したことがある日常です。そうした日常から、憧れや挫折、悔しさや悲しさを主人公と一緒になって体験することが出来ます。

 

「あー、分かる分かる」

 

 そうしたごく普通の感情が丁寧に描かれていました。一見すると派手な演出に見える表現も、しっかりと計算されていて、僕たちの心を鷲掴みにします。読者はまた視聴者は、そうした主人公に寄り添うことが出来ました。僕が目指したい作風も、この没入感になります。

 

 映画を観た後の帰り道、レントと一緒に本屋さんに寄りました。漫画「ルックバック」を購入したいと思ったからです。ところが、売っていません。「チェーンソーマン」はいっぱい並んでいるのに、肝心の「ルックバック」が一冊もない。仕方がないのでスマホを取り出して、アマゾンで購入しようとしました。

 

 ――!!!

 

 電子書籍は購入できるけど、アマゾンでも紙の本は購入できませんでした。驚きです。物語の構成を考えるうえで資料として手元に置きたかったのに、誰しも考えることは一緒なんですね。売り切れです。電子書籍ではなく、「ルックバック」は紙の本で欲しい。結局のところ、高くつきますが古本で買うことにしました。ついでに藤本タツキの短編集をすべて買いました。全部で4冊。気になってしまうと、すぐにポチってしまいます。これまでに読み切れていない本が沢山あります。積読です。また、嫁さんに小言を言われそうです。