今年の正月、急に思い立ってスーパーカブによる紀伊半島一周の旅に出かけました。準備らしい準備もしないままの出発だったのです。途中でガス欠になってしまったことの経過報告や、大阪に帰ってから紀行文としてご紹介しました。そうした行き当たりばったりの旅行も面白いのですが、出発前に入念に計画を立てる旅行も面白い。案外と、計画段階であれやこれやと妄想している時が一番楽しかったりします。今回も、丹後半島に二泊三日で旅行に行こうと決めてから、どこに行こうかと色々思いあぐねています。旅っていうのは、行く前の妄想と、行ってからの現実と、二度楽しめて面白い。

 

 今回の旅行の最大の目的は、丹後半島の間人(たいざ)に行くことです。以前にも紹介しましたが、飛鳥時代、聖徳太子のお母さんである穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)が、奈良の明日香から遠い丹後まで逃げてきたその足跡を尋ねてみたいのです。現地には「丹後古代の里資料館」があるので、詳細な事柄が知れるのではと期待しています。また丹後半島周辺には、他にも尋ねてみたい史跡や景勝地が沢山あります。今回の旅で、僕がどのようなスケジュールを考えているのかを、少し紹介したいと思います。

 

 僕の古代を知るための大きなテーマの一つに、「蚕」がありました。蚕といえば、これもずっと以前に紹介しましたが「秦氏」が有名です。時は3世紀、応神天皇の御代、大陸から渡ってきた秦一族が日本に蚕をもたらし「絹織物」という文化を日本に根付かせました。その子孫の一人、秦河勝は聖徳太子の右腕として戦においても財政においてもバックアップしています。当時の秦氏の支配地域は現在の京都で、後の平安京は秦氏が土地を差し出して、秦氏の財力で作り上げられました。そうした秦氏のルーツを探るためにも、蚕や機織りの歴史を知りたいのです。「蚕」や「絹」に関する資料館は全国各地にありますが、今回の旅で考えると以下の候補地があります。

 

 西陣織会館 (京都市内

 織成館 (京都市内

 グンゼ博物苑 (京都府綾部

 丹後ちりめん歴史館 (京都府与謝

 出石史料館 (兵庫県豊岡

 浅井町歴史民俗資料館-糸姫の館-(滋賀県

 

 西陣織会館と織成館は、昨年に訪問しました。浅井町歴史民俗資料館は、滋賀県を経由して帰阪するので最終日に訪れる予定です。昔ながらの養蚕業の世界が紹介されているようなので、とても楽しみにしています。残りは、グンゼ博物苑、丹後ちりめん歴史館、出石史料館なのですが、どれも明治大正で繊維業が大きく発展した頃の歴史的資料が展示されているそうです。それはそれで面白いと思いますが、近代繊維業は僕の研究テーマではありません。今回の丹後探索は訪れたい場所が沢山あるので、行こうかどうか迷っています。行くのならグンゼ博物苑が博物館としての規模が大きいので 僕が欲する資料に出会えるかもしれない……かな、と思案しています。古代史に関する博物館は、軒並み訪問する予定です。候補地は以下になります。

 

 丹後古代の里資料館 (京都府丹後

 豊岡市いずし古代学習館 (兵庫県豊岡

 京都府立丹後郷土資料館 (京都府宮津

 日本の鬼の交流博物館 (京都府福知山

 

 どの博物館も楽しみにしているのですが、変わり種は日本の鬼の交流博物館になります。僕の研究テーマからは少し離れているかもしれませんが、民俗学という観点から「鬼」を考えるのは、古代日本人の思想に近づけるような気がするので、かなり楽しみにしています。また、博物館ではないのですが、古墳や神社等、歴史的な史跡にも立ち寄ってみたいと思っています。あと、研究テーマではありませんが、訪問したい場所があります。それを以下に示します。

 

 玄武洞 (兵庫県豊岡

 経ヶ峰灯台 (京都府丹後

 伊根の舟屋 (京都府与謝

 天橋立 (京都府宮津

 福井県年縞博物館 (福井県

 

 玄武洞は、有名な国の天然記念物なので説明は要らないかもしれません。160万年前に起きた火山活動により生成された六角形の無数の玄武岩を見ることが出来ます。また、福井県年縞博物館も地質に関する博物館で、僕もよく知らないので説明は省きますが「7万年」を目で確認することが出来るそうです。新しい刺激がもらえそうで楽しみ。天橋立と伊根の舟屋も説明は要らないと思いますが、特に伊根の舟屋が楽しみ。旅程二日目の朝一番に訪問して、写真を撮りまくる予定です。

 

 初日の宿泊は、経ヶ峰灯台の周辺を考えています。もちろん野宿です。現地に赴いてからロケーションを考慮に入れて決めたいと思います。紀伊半島一周では、本州最南端にある潮岬灯台の周辺で雨の中野宿をしました。潮岬灯台は明治3年に初点灯します。対して、経ヶ峰灯台は明治31年でした。江戸から明治に移り開国した日本は、船による交易の重要性から灯台の建設を西欧諸国から迫られます。当時の世界に向ける機運の高まりは熱かったでしょう。その頃の灯台が今もなお現状を留めて保存されているのです。二日目の宿泊は、舞鶴市を予定しています。舞鶴湾が外海に開ける辺りに釣りができる公園があるのですが、若い頃に夜釣りを楽しんだことがあります。そこなら誰も居ませんし、安心して野宿が出来そうです。

 

 野宿の旅というのは、人の目を避けた宿泊になります。とても不便で一般的ではありません。特に不便なのが風呂でして、ホテルや旅館であれば風呂が完備されおり食事まで用意してくれます。食事は、自分で段取りできますが、さすがに風呂はそういうわけにはいきません。紀伊半島一周の旅では風呂に入らずに旅をしました。しかし、GWは気温が高そうですし、きっと汗もかくでしょう。なので今回は風呂に入ることにします。初日は丹後半島にある露天風呂で夕陽を見ながら、二日目は舞鶴の下町にある銭湯に行くつもりです。ネットの写真を見ただけですが、この銭湯……レトロ感がたっぷりなのです。風情にとても惹かれました。

 

 夜の食事は、現地で調達した魚の干物をアテにして日本酒を飲みたい。これって最高の組み合わせです。日本酒といえば、丹後半島の東端に位置する伊根の舟屋に、「海に一番近い酒蔵」というキャッチフレーズをもつ「向井酒造」があります。ここに赤色の古代米を使って醸した「伊根満開」という日本酒があるそうなのです。日本酒の色も赤色、どのような味わいなのか確かめてみたい。

 

 以上、丹後半島探索に向けての、僕の妄想を紹介させていただきました。二泊二日といっても、内容は盛りだくさん。予定は未定です。きっと何かしらのトラブルに見舞われて、変更を余儀なくされるでしょう。それはそれで面白い。様々な刺激を受けてきたいと思います。また、出発前にスーパーカブの、クラッチのオーバーホールをしなければなりません。あわせてブレーキやタイヤの空気圧などキッチリと整備して、事故のない旅を楽しみたいと思います。