末っ子の次男坊が髪を切りに来た。
月に一度くらいのペースで、仕事終わりに車を飛ばして来てくれる。

玄関を開けるなり、第一声は決まっている。
「腹へった~」

カットの前に一緒に飯を食うのが、いつもの流れだ。
何がいいか聞けば、だいたい焼肉になる。

金がなくて俺と一緒じゃないと食えない、などと言われると、
まあ少しはいい肉を食わせてやりたくなる。

しかし、よく食べる。
見ていて気持ちのいい食べっぷりだ。

俺も昔はあんなだったなと思う。
食べている最中から、もう腹が減っていた。

一番食ったのは高校の部活の頃だ。
かつ丼二杯、十分もかからなかった。

そういえば、高校二年の冬、選手権で全国大会に出場した。

一回戦敗退だったが、前日には地元テレビ局が宿まで来て密着していた。

振り返ると、あの頃が一番まぶしかった時期かもしれない。

俺の高校は女子が少なくて、近くの共学になった元女子高に通っている連中を、皆どこか羨ましく思っていた。

40年近く前だ。

ほとんどの連中が進学する高校だったから、部活は実質二年で引退。
引退してからは皆、それぞれの受験に向かった。

そういう分岐点を、誰でも一度は通る。
今日は、目の前の次男がちょうどその途中にいる。
一緒にいた時間は三きょうだいの中で一番短いはずなのに、
今はなぜか、一番素直で可愛げがある。

飯を食って帰宅し、自宅でカットしてもらう。
鏡越しに見る横顔は、まだ若い。

若さがどうとか、今しかできないことがあるとか、
そんな話を少しだけしてみたが、
次男はあまり興味なさそうだった。

まあ、そういうものだ。
俺も当時は誰の話も、まともに聞かなかった。

 

 

飯の最中、ふと次男が言った。 

「お父さん、今日も飲まないの?」 

 

そういえば、そんなことも話題になった。