私は脚本を書くことを生業としています。
しかし、人生に脚本はありません。
脚本家になりたい！という夢を抱き、シナリオ学校に入学したものの、そこを卒業した後、途方に暮れてしまうのはよくあること。ある程度の技術は身につけたものの、いったいここからどうすればよいのか……？ ひと通り方法論を学んだら、後は実際に現場に出て鍛えるしかありません。しかしそのプロの現場へ踏み込むためのツテがない、そしてたったひとりで放り出されて、この先どうやって自分の力を磨いていったらよいかわからない……。それはきっと俳優や声優を目指す道でも、往々にして立ちはだかる大きな壁なのではないでしょうか。
そんな時、現場への道すじをひいてもらえたら、そしてその現場で実際に様々な経験を積みながら、さらに志を同じくする仲間たちと切磋琢磨して自らのスキルを高めていく、そんな「場」があったなら―――きっとそこは、壁を飛び越えるための力をたくわえる大切な場所となり、そしてまたそこで得た力は、壁を飛び越えた後も、将来にわたって高く飛び続けるための糧となってくれることでしょう。
私は脚本を書くことを生業としています。
しかし、脚本だけでは作品になりません。
脚本とは「こうなったらいいなあ」といういわば呪文のようなもの。しかし呪文を書きつけるだけでは魔法はかからないのです。言葉の羅列にすぎない呪文に息を吹き込み、血を通わせ、そして物語を立ちあげてくれる……そんなたくさんの魔法使いが、この「場」から生まれてきてくれることを願ってやみません。
坂口理子（さかぐち りこ）
＜プロフィール＞
大学を卒業後、会社勤務を経て、『おシャシャのシャン！』で創作テレビドラマ大賞を受賞し、ＮＨＫでオンエアされデビュー。現在フリーランスとして、テレビドラマ、映画等の映像脚本や、舞台脚本、および、小説等を執筆。
主な作品として、アニメーション映画『かぐや姫の物語』（スタジオジブリ）、連続ドラマ『私が恋愛できない理由』（フジテレビ）、連続テレビ小説『マッサン スピンオフドラマ』（ＮＨＫ）など。2017年夏、アニメーション映画『メアリと魔女の花』（スタジオポノック）公開予定。
理子さん、ありがとうございます。
素敵な魔法使いを沢山沢山生み出していきたいと思います。