囀る単行本のネタバレ覚書を(私にしては)鬼のように進めていますが
回を追うごとにどんどん長くなる。
5巻…5巻か…
わたし的には2巻が濃ゆい、でもBL的にはもっと濃ゆい巻があると
言っていたのはこの5巻。
でもあのーなんていうか、
「濃ゆい」の一言で済ませてはいけないものがあるんですよね5巻。
ありませんか。ありますよね(同意の強要
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抗争の最中、真誠会若頭の矢代は
百目鬼の部屋で向かい合っていた。
百目鬼への想いから目を逸らしていた矢代。
矢代を守りたいと思っていた百目鬼。
ふたりは互いに強く意識しつつも、これまで
一線を越えないよう気持ちを堰き止めていた。
けれど、追いつめられた百目鬼が
矢代に気持ちを告げたとき、
それまで保っていたバランスが崩れてしまう。
自分に大事なものができてしまう、
失ってはいけないものができる──
矢代が選んだ道は……!?
(作品紹介)
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「囀る鳥は羽ばたかない」5巻の私的ネタバレ覚書。
緊迫したセックスの誘いで終わった4巻。
抑えきれなくなった矢代への欲情で
インポが治りがっつり元気になった百目鬼。
それに気づいた矢代。
抑えきれなくなったものの、一線を越えたら捨てられる。
煽る矢代、苦悩の百目鬼。
その裏で動き続ける平田の陰謀。
竜崎大ピンチ。
※毎度のお約束:
以下がっつりネタバレ含みます。
登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
あくまで個人の見解です。
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勃ったことだし
せっかくだからセックスするかと誘う矢代に
したくないと断る百目鬼。
一瞬呆然としたのち、笑い出す矢代。
私知ってる。矢代が笑うときは深く傷ついたとき。
ひとしきり笑った後矢代は百目鬼を倒して馬乗りになり
百目鬼を挑発と罵倒で追い詰める。
矢代は百目鬼に腹を立てている。
矢代自身、なにに、いつから腹を立てているかわからない。
考えている矢代の下で、顔を覆った百目鬼が本心を絞り出す。
なんの装飾もない、まっすぐな、隠しておきたかった心の内。
自分の感情を整理できていない矢代にその告白は届かない。
お前の気持ちはどうでもいい、たかがセックス、穴に入れて出すだけ。
罵倒はさらにエスカレートしていき、百目鬼の妹と父親のことも持ち出す。
苛めたい、傷つけたい。
なのに傷ついた百目鬼の姿を見て矢代自身も傷つく。
黙り込んだ百目鬼を置いて矢代は浴室へ。
ふと気が付くと、服を着たままシャワーを浴びてる自分。
そこでようやく、矢代はさっきの百目鬼の言葉を思い返す。
腹が立ってることに夢中でわからなかった、百目鬼の告白。
思い返して呆然自失、さらにパニくる。
部屋に残された百目鬼はどうすればよかったか煩悶していた。
承諾してもその後捨てられた、断っても捨てられるのか。
浴室に駆け付けると、ずぶ濡れの矢代が座り込んでいた。
うつろな顔の矢代がひとりごとのように話し出す。
百目鬼に「いわれのない共感」を抱いていたこと。
自分と同じでどこか壊れていると決めつけていたこと。
ずっと手離さなきゃと思っていた。手離したかった。
でも手離したくなかった。百目鬼が可愛かったから。
百目鬼が可愛い。でも怖い。その真意。
矢代のためになんでもすると言いながら
簡単に死にそうになる、というのは
オールバックに撃たれたときに抱いた感情。
怖いのは百目鬼自身じゃない、百目鬼を失うこと。
失うことが怖いと思う自分自身。
百目鬼も同じこと言ってたんだよなあ。矢代が撃たれたあと。
頭を失うことが怖かったと。似たふたり。
黙って聞いていた百目鬼が跪き、涙を浮かべながら矢代を抱きしめ
そのままゆっくりキス。この一連の描写が綺麗なんだ。
うつろなままキスされ、我に返って一瞬拒否するそぶりを見せるも
さらに深くキスされて目を閉じ、
矢代の手が百目鬼の肩をぎゅっとつかむ。
矢代が人に心の内を伝えるなんて今までなかったのでは。
ウソで固めてきた人生だからね。
吐き出しただけでも相当参ってるはずの矢代を
今度は百目鬼が追い詰める。
俺のことがそんなに怖いですか?
頭は俺を捨てようとするくせに俺を失くすのが怖いと言った。
失うことが怖いだけなら どうしてここにいる俺を怖がるのか。
これ私けっこう咀嚼に時間かかった。
欲しいものもなければ失うものもない人生だった。
(唯一の例外がコンタクトケース。でも今もあの頃のままの価値があるかどうか)
はじめて失うことが怖いと思った。
矢代はヤクザの組の若頭、人の死や破滅も危険もすぐそばにある男が
失うことが怖いって…
それってすごいよね。恋情どころの話じゃないよ。
百目鬼は4巻で、自分は何ひとつ矢代に望まれてないとか言ってたけど
大間違いだよ。
でも百目鬼が突っ込んだのはそこじゃない。
これは見解が分かれるところかも。
私は…冒頭の罵詈雑言の場面とかね。
ひどいこと言われて傷ついたけど、矢代が、勃った百目鬼を
怖がって牽制しているようにも感じたのかな。うーむ。
百目鬼の問いに矢代が答えたのもそこだしなあ。
お前が勃ったのが悪い、勃たないから側に置いた、
自分がどんなにヤリたくても、インポだからできない。それが
虚しくて心地よかった(それもどうなの涙
それをお前が壊した。
お前をどうしたらいいかわからない
お前をどうにもできない
矢代の手を引いて部屋に戻る百目鬼。
ずぶ濡れの服を脱いでくださいと百目鬼に言われ
おとなしく脱ぎだすけどひとりでは脱げない。
結局百目鬼が手伝って脱がせる。全部。下着も。
無言の空気感がなんともいえない。張り詰めたエロティシズム。
ぐっしょり濡れた服を干す間、布団に座って待つ矢代。
「お前やっぱ変わってんな」
「そんなことないと思います」
以前みたいな他愛のない会話をしつつタオルで矢代の髪を拭く百目鬼。
その手を止めて、頭にキス。
髪に唇を寄せたまま、耳元で囁く。
矢代が言われたことのない、静かで熱を帯びた告白。
そんなふうに扱われたくないと嫌がる矢代、でも同時に思い出す。
以前、自分が百目鬼にしたこと。
おだやかでひっそりとした、寝てる百目鬼の耳元へのキス。
※2巻の答え合わせがここで!合ってた!
とてもとても綺麗なシーン。
この身体をもう誰にも触らせたくない
俺しかいらなくなるように
俺しか欲しくなくなるように
百目鬼の独占欲大爆発。
自分がしたやさしいキスを思い出したあたりから
おびえ始めた矢代、でももう百目鬼はアクセル踏んで走り出した。
両手で矢代の頭を包むように抱き、長くて深いキス。
ゆっくり矢代の体を倒し、百目鬼もTシャツを脱ぐ。
この脱いだ時の上半身の筋肉の美しさ、Tシャツの首周りに持ってかれる前髪がイイんだ。
ここから怒涛の超絶前戯。
髪からつま先まで、全身を唇と舌で巡り倒す。
百目鬼ってあのー、たいがいなキス魔よね。回数もかける時間も半端ない。
しかもね、そのキスを矢代が嫌がらない。
風呂場で初めてキスされたとき、動揺して遮ったけどそのあとは
嫌がらず顔も背けず、何度も何度もちゃんと深く受けるのよね…
身体中愛されまくっておびえと困惑が綯い交ぜの矢代、
「吐く…」と言っても百目鬼はやめない。
やっぱり俺は父親に似ているのかもしれないと
自虐的に言う百目鬼に手を差し伸べる矢代、
顔を寄せてその手を頬に当てる百目鬼。
違う、お前は綺麗だからインポになった。なのに俺が。
全力でその言葉を否定し、矢代の矢代を丁寧に口で愛撫する。
その後顔を離して体を起こし、矢代の両脚をつかんだ百目鬼に
やっと前戯が終わってヤルのかと思った矢代は
「…早く、済ませろ」
終わらなかったんだよねえ前戯。百目鬼の唇と舌が、矢代の穴を。
矢代が百目鬼のあまりにも強い独占欲に気づいた瞬間、
体が反応してしまう。
驚く百目鬼、矢代自身も驚いてる。
もういやだ、と震えて逃げる矢代を抱きとめて
逃げないでください かしら…
矢代が知ってるセックスとは全然違う。
愛があるかないかでそれは天と地以上の差。
これはなんだ
俺が知ってるのは
こんなんじゃない
一度大きく反応してしまったらもう、
矢代の体は敏感になる。触っただけで震えるくらいに。
百目鬼も止まらない。明らかに変わった矢代の体の反応にアクセル全開。
指でほぐされてまた達してしまう。
この指の描写もね…すごいのよ…
びくびくと体を震わせる矢代の姿に、
ジーンズの前をあけてモノを出し
矢代のお尻に乗せる(文字にするととても変)百目鬼。
乗せられただけで感じる矢代。
欲しいと言ってください
入れろでも済ませろでもなく
俺が欲しいと
言いながらモノを矢代のお尻から離す。
入れて出すだけ、早く済ませろ、矢代が煽ってきたセリフ。
そうじゃない。欲しいと言ってほしい。
矢代が・百目鬼を・欲しいと。
矢代は無言のまま、腰を突き上げ自ら百目鬼のモノに尻を寄せる。
言葉で答えず、体で答える。
矢代の体を反して謝りながら見つめる。
壊すな 俺を
怯える矢代に百目鬼がついに入っていく。
壊しません 絶対に
百目鬼が絞り出した言葉に、矢代の「そうじゃない」とのモノローグ。
百目鬼は身体のことと思ったかもしれない。
矢代が言ったのはおそらく
傷だらけの自分を覆い隠すために作り上げ、身にまとい、
その存在もだれにも悟らせなかった「ドMで淫乱」の鎧。
てことは矢代はそれが壊れそう、とこの時思ったのかなと。
壊すならいっそ、身体ごと痛めつけてくれ
百目鬼がするわけないじゃんね。そんなこと。
顔を隠す矢代の手を握り、キスしつつ、矢代の両脚は百目鬼の腰に絡みつき、
激しく攻められて矢代がまた果てる。
矢代のリクエストで後ろから攻めるも
顔が見たいからやっぱり前からとねだる百目鬼。
嫌がる矢代から抜いて枕を取りに行く百目鬼。
身体、つらそうなのでと枕を差し出す百目鬼の首を引き寄せ
ついに、やっと、ここで、初めて、
矢代から百目鬼にキス!
お前のそういうとこが ホント腹立つ
と言われながら、百目鬼がほんのりうれしそうで…
矢代が観念したらしく、顔を見ながらあらためて攻める百目鬼。
痛くしてっ
しませんっ
しろよっ
しませんっ
のやりとりもふたりらしいし
そんなことしなくてもこんなに…
と言われて困惑する矢代もいいっ。
なんかもう、身悶えするほどラブラブ!
痛みのない、ただただ気持ちいい、「優しくて普通のセックス」
(こんな濃厚なのを普通と言っていいのか)が
矢代の体と心を、強固な鎧を溶かしていく。
快感にのけぞる矢代の喉にキス、
耳元で「綺麗だ」
さらにキス、そして矢代の登り詰めた言葉に百目鬼も
俺の……っ
ふたりとも達したその瞬間、
矢代の脳裏に最悪なフラッシュバック。
義父からの…性的虐待の記憶。
どうして今
私も思ったよ。心臓握りつぶされたよ。
「痛いの 好きだよな」「うん」
義父に殴られた頬に手を当て笑って答える小学生の矢代、
「痛くないと感じないんだ 俺」
仰向けでシャツの前をはだけ、妖艶にほほ笑む中学生の矢代。
いびつな笑顔と交互に瞬く、泣き叫ぶ幼い矢代。
百目鬼に抱かれて達した矢代の目から涙があふれてる。
細く開いたカーテンからこぼれる光。
虐待は…特に性的虐待は
一生心をえぐる傷。
側にいたはずの母親も助けてはくれなかった。
二重三重に傷つけられた心と体。
ドMで淫乱、痛みを伴うセックスが好き、という鎧を作り上げなければ
きっと生きることすらできなかったかも。
それ以外にどうすればいいかわからなかった。
でも百目鬼の愛によって、そして百目鬼に対する自分の気持ちに気づいたことで
鎧が壊れて外れた。その瞬間襲ったトラウマ。
寝てる百目鬼のそばで体を起こし、
両手で顔を覆い、ゆっくりとあげた顔は、目は暗く、
なにかを決意したような…
矢代の携帯が鳴っても百目鬼は眠り続ける。
部屋を出ていく矢代。
外には三角の放った鯨と鮫の二人組。
車に乗り込み、刑事に文句と指示を伝える矢代。
その様子をバックミラーでうかがう鯨。
スーツの下はゆるっとしたTシャツ、ズボンの裾からしたたる水滴。
一緒にいた部下は?と聞かれた矢代が答える、
いらねえから置いてきた
……やがてひとりの部屋で百目鬼が目覚める。
不自然な静寂に飛び起きる。
前戯が丁寧な男は終わった後も手を抜かない。
矢代の身体をキスでいたわる百目鬼を矢代が静める。
寝てないしね。ずっと気を張ってきてたしね。
猛烈な眠気に勝てないのは仕方なかったよ。
怪我もしてるし、命も狙われてるし、
心身ともに弱ってる矢代を激しく抱いたこと。
申し訳なさに眉毛ハの字で見つめる百目鬼に
矢代がカシミアのマフラーのように優しく柔らかく
おだやかに声をかけてくれても
不審に思える余裕がなかったよね。
目が覚めて、矢代の姿が消えてる。焦燥と絶望。
平田の部下に拉致られてた竜崎。
ぼっこぼこにされてる。ぼこぼことかいうレベルではないな。
半殺しだよ。半かな!?
そこに平田も現れる。
矢代を殺そうとしてるのは三角を取られたことから生まれた嫉妬
という竜崎の指摘がどうやら図星で
表情を変えぬまま腸煮えくりかえった平田が繰り出したのは
竜崎の矢代への恋心に対する揶揄。
平田は知ってた。
矢代が自分に本気で惚れた男を嵌めて平田に破門にさせたこと。
竜崎、おまえもそうなる。
矢代に惚れてるんだろ、惚れてないなら殺せよ。
言うだけ言った平田が竜崎に背を向け、その隙を逃さず
平田の部下から奪ったドスで竜崎が平田の背中を刺す。
致命傷だったらよかったのになああああ!!(声を大
落ち着いて急所を刺して竜崎!!
今度こそ平田自身に殺されかけた時、警察が。
逮捕されたのは竜崎、罪状は覚せい剤取締法違反。それ!?
身に覚えのない逮捕に戸惑いながらパトカーに押し込まれると
そこには矢代が。
すべて矢代が動いて仕組んだこと。
平田が隠していた覚せい剤を甘栗たちに盗ませて松原組に隠し
警察に逮捕させて結果的に竜崎を助けた。
矢代のふだんとの違いにすぐ気づく竜崎、
スーツの下のTシャツに言及。
ゆるっとしたTシャツ、だろうなとは思っていましたが
やっぱり百目鬼の着てたTシャツでした!(なんとなく歓喜
矢代のTシャツ姿を見ればあの頃の矢代を思い浮かべる。
竜崎の件についてはのちほど、ちょっと詳しく。
シャバの思い出に矢代の乳首を噛んで竜崎、警察へ。
最後の願いを聞いて矢代は鯨と鮫を連れて
竜崎の女を助け出す。
平田は軽傷(ちっ)、竜崎はその後意識不明の重体。
三角にはかつて、黒羽根という舎弟がいた。
三角にとっては半身と思えるほどの腹心。
敵対していた組の残党に三角が撃たれ、
責任取って小指を詰めた黒羽根がひとり先方に乗り込み
壊滅させたところに現れた平田が黒羽根を殺した。
三角には「ふたりでやった」と大嘘、黒羽根のポジションを血でもぎ取った。
その後平田は刑務所へ。出所後組長に。
三角にあこがれを抱いた平田の嫉妬。
平田って…嫉妬が殺意に容易に変換する男なのね…
ところで黒羽根も「頭が撃たれた責任を取って指を詰めた」のね。
頭に心酔、頭のためなら自分の命も。
顔に大きな切り傷まで。百目鬼と似てる。
三角は平田の件もあり、入院中の道心会会長のもとへ。
平田とつながりを持つ三和会の件で行ったものの
その話はできずじまい。
会話の中であかされたこと:
天羽は独身(だと思った
矢代は半身ではまだなく、それでも3分の1(でかいな!
矢代を上に引き上げて自分の側に置くのなら、まず組を持たせろと会長に言われた
組ねえ…
矢代は助け出した竜崎の女を影山医院に運び込む。
心身ともにひどく傷つけられた彼女、
せめて身体だけでも無事だといいけど。
百目鬼は捨ててきたという矢代に
惚れてたんだろ?
以前久我が言ってた憶測を剛速球で投げつけた影山。
言葉と表情を失う矢代。
百目鬼を自分のそばから離し、
秘めた思いは誰にも知られぬうちに
また自分の目も届かない場所に覆い隠そうとしていた矢代に
他の誰でもなく
お前が俺に突きつけるのか
よりによって、影山に。
薄はりガラスが砕ける音が聞こえた気がするよ;;
笑い出す矢代。私知ってる。
矢代が笑うときは深く心が傷ついたとき(5巻の冒頭再び
百目鬼は雛鳥、ムショから出て一番最初に目にしたものに
勘違いしてついてきた、ただそれだけ。
そう言った矢代の表情は見えない。
******
一番最初に目にしたわけではないよね、とツッコむこともできない
血がにじむ矢代の言葉。
ああそっかー、と納得するほど影山もバカではないと思いたい、
怒涛の5巻のラスト。
こないだあの人に会ったんだって?
くらいのノリで聞くことじゃないんだよ影山。
そういうとこだよ。
でも
ここで重要なポイントは
「惚れてたんだろ?」と言われた矢代が
それを否定しなかったこと。
あいつは勘違いしてる、それって答えになってないのよね。
惚れてたんだろ?に対する答えじゃない。
突きつけられた。影山に自分の本心を。
動揺した矢代が答えたのは、百目鬼の恋情のほう。
ちぐはぐなやり取り。あのあと影山は突っ込んだだろうか?
竜崎退場、三角も動き出した。
どす黒い過去も語られた平田、平田に付き従う舎弟たち。
取り残された百目鬼、心に大打撃を負った矢代(影山医師がやりました
前半、文字通り半分が矢代と百目鬼ふたりきり。
なのにどうしてというくらい甘さがないっ!
いつか甘いセックスを私たちにのぞかせてくれると信じてる。けど。
******
さて、
竜崎の話。
竜崎も矢代に魅了された男のひとり。
「惚れてるんだろ」とどストレートに平田に指摘され
逆上したのは図星だったから。
矢代が19歳、竜崎が21歳だったころ、
溜まり場にふらりと現れる矢代を仲間と回していたころから
竜崎は矢代に惚れていた。本人否定するだろうけど。
風に髪を揺らし、そのまま消えてしまいそうなはかない後姿を見つめる目は
まさに惚れた男のそれ。
ただ、百目鬼との決定的な違いは
矢代が女だったらと思っていたこと。
守りたい、自分のものにしたい。
でも「矢代」そのままではない。条件付きなんだよなあ。
ヨネダさんが
「短編なら矢代の相手は三角や竜崎でもよかった」と
言っていたけど
まあそうなんですよね。サクッと終わる短編なら。
矢代を救わなくていいなら。壊れたままでいいなら。
尻を叩いたり乳首を嚙んだり、
それを矢代が本当に望んでいると竜崎が思ったままなら。
立場が変わっても、バカだと思ってたのに相当な切れ者とわかっても
突っかかっては軽くいなされるようになってしまっても
竜崎にとっての矢代は
俺が守らなければと思わせる人間だった。
結局矢代に守られたわけだけど。
私は竜崎、嫌いじゃないけど
矢代の本質を引き出してそのうえで守るということが
竜崎には出来ないと思っているので
ありなしで言えばきっぱりなしなんですよね。
で、そんな竜崎の気持ちに矢代が気づいているかどうか問題。
これも意見の分かれるところで。
まあ…気づいてはいる。でも気づかないことにしている。という感じかなー。
でもマジ惚れではないだろ、女いるし、
セックスはしたけど古い知り合いのひとり、くらい。
知り合い、と、友人の間くらいかなー。
友人・親友は影山だけかも。閉じてるからな矢代。
ほどほどの距離を保ちつつ
ずっとこの関係が続いていけばいいなあとは思うんですよね。
彼女大事にしなよ竜崎。あんないい女いないよ。
ところで矢代の匂いを嗅いだ竜崎が
「すえた匂い」と評していたけど
竜崎は「すえた匂い」の意味をよくわかってない説。竜崎だし。
人に対するすえた匂いってお風呂に数日入ってない、すっぱい匂いみたいな感じよね。
矢代はホテルで百目鬼に身体拭いてもらったりシャワー浴びたりしてるし
そんなに臭くはないと思うんですよね。それに矢代だし。
……事後の匂いを嗅ぎつけたかな?
こいつまたその辺の男と、とか思ったかもしれない。
うわ竜崎かわいそう
******
平田の黒い炎はどんどん大きく燃え盛る。
矢代は、三角は、百目鬼は。
矢代の壊れた鎧はどうなっただろう。
なんとか直して着込んだか、壊れたままか。
壊れたまま影山の無神経攻撃を至近距離で受けたとしたらまさに致命傷。
影山許さない。
表紙の矢代がとんでもなく妖艶。
上下ひっくり返して百目鬼気分を堪能するなど。