公園通りを歩いてた
一台の車が追い越して行く
十数メートル先で止まった
ドアが開いてひとりの女性が
綺麗な身のこなしで
降りたちこちらに
向かって歩いてくる
月影で顔ははっきりわからない
「こんにちは」
誰だろうと思ったが
「こんにちは」と
挨拶を交わした
街灯に照らされた彼女は
白いブラウスに
黒のパンツ姿が
とてもよく似合う
長い髪と濃い睫毛が
魅力的な女性だ
「覚えてますか」と
静かに微笑んだ
ぼくは記憶の糸をたどりながら
彼女の透き通るような
瞳に吸い込まれそうになる
脳裏にあるバーで隣に座った
女性の姿が浮かんだ
「ああ あの時の」
彼女は嬉しそうに笑った
今散歩の途中なんだと
伝えると一緒に行くと言う
「それじゃとっておきの場所まで歩こう」
そこは今一番気に入ってる場所
一歩踏み込むと街の喧騒からは
まるで別世界になる
ふたり並んで歩いた
足下でふたりの草を踏む
足音だけがこだまする
池の水面に月の明かりが
キラキラと揺れた
「素敵な場所ね」と言う
彼女の瞳が月のひかりに煌めいた
池のデッキの上で
夜空を見上げて
ぼくはこう言った
「あの時グラスに落ちた涙」
「あそこで光ってる」
彼女は無言で頷く
ふたりで星空を見上げた
無数の星が語りかける
あの日あの時そして今
晩春の風が彼女の長い黒髪を
たなびかせた
それが月の明かりに
反射して彼女の頬を
うすく染めていく