ぼくは夢見てた
辺り一面続くひまわり畑
自分の背丈よりずっと高いんだ
その中を夢中で駆け回ってた
擦り切れた木綿のシャツ
破れかけた半ズボンに
擦り減ってペラペラの
ビーチサンダルは
まるで裸足みたいだ
頭にはお気に入りの
麦わら帽子を被り
それもつばが切れてる
ぼくは嬉しくて
夏の強い陽射しの中
汗びっしょりで駆けた
少し疲れたぼくは
ひまわり畑の中ほどで
大の字に寝転んで
真っ青な空を見てた
太陽がぼくの体を
ジリジリと焦がしていく
あまりの眩しさに
麦わら帽子で顔を隠した
眠ってしまったのだろうか
さっきからぼくの顔を
じっと見ている目がある
湖の底のように透き通る
美しい目をした少女
白いワンピースが
とてもよく似合ってる
頭には小さなつばの
麦わら帽子が乗ってる
紺色のリボンがぐるりと
ついたかわいいやつだ
彼女はニッコリ笑うと
ぼくに手を差し伸べる
素直に手を差し出すと
ふたりともふわふわと
宙に浮かんでいる
ぼくらは手を繋いで
ひまわり畑の絨毯の上を
顔を見合わせ笑い駆けた
ぼくはビーチサンダルを
空に向かって放り投げた
それを見た彼女は笑いながら
ぼくの真似をして
履いているサンダルを
空高く放り投げた
ぼくらは裸足になって歩く
ひまわりの黄色が
足の裏に透けて
ぼくらの体を黄色く染める
片方の手のひらを
空に向かって伸ばしてみる
夏の太陽のひかりが
それを通り抜けて
彼女の顔に当たる
そのひかりが少しづつ
彼女の姿を消していく
驚くぼくに彼女は
優しく微笑んだ
すっかり姿が消えてしまうと
一羽のアゲハチョウが
ぼくのまわりを名残惜しげに
ヒラヒラと華麗に舞う
そして雲ひとつない青空に
羽ばたいて行った
ぼくは必死で手を
伸ばしたが届かない
ハッと目を覚ましたぼくは
海に向かう電車の中で
ひとり笑ってる
車窓にはひまわり畑が
一面に広がっていた
ぼくはぼんやりとしながら
じっと自分の手のひらを見た
確かにあの少女の手の
感触が今も残ってる
少し陽が傾きかけた
ひまわり畑で一羽の
アゲハチョウがヒラヒラと
華麗に舞っていた
