さて、今晩は連休特別企画(とは明らかに大袈裟だが)として、PowerPoint エピソード-3をお届けする。
せっかくエピソード-3なので、文中の会話部分における私の名前は『アナキン』として書かせていただく。
『アナキン』をご存知ない方は、こちらよりご確認を⇒ アナキン・スカイウォーカー(from Wookieepedia)
【PowerPoint ~部下の復讐~】
ある日、打ち合わせからオフィスに戻ってきた社長が威勢良く私の名前を呼んだ。「おい、アナキン!」、社長が威勢良く呼ぶ時は思い付きのネタであることが多いため、一回目は受け流すことにしている。
すると、私が返事をしないことにはお構いなしで、社長は自分の要求を言い放ってきた。
「おいアナキン、テロップ作ってくれ!」と社長。「テロップって何ですか?」、私は何のことを言っているのか察しがついていたが、わざと惚けた。すると社長がまくし立てた、「テロップだよ、テロップ!」。「だから、テロップって何ですか?」と私。社長は微妙に苛立ちながら、「だからさー、あれだよ、今度の社長インタビューの時に使う、説明用のボードみたいな・・・」。「ああ、それはフリップですけど。」と私は言った。
「何でもいいから作って!」と言い残し、社長は自分の部屋へ入って行った。要するに私は、Webで配信するための社長インタビューの撮影で使われる説明用フリップの作成を依頼されたのであった。
そして、もうお分かりの通り、その説明用フリップをフォース、ではなくパワポで作成するのであった。
黙っていれば社長が自分で作成するかもしれないと淡い期待を抱いていたが、案の定、私に振ってきた。作成するのは構わないのだが、社長の好みに合わないとこれまた面倒なので、社長の部屋へ行き、どのようにしたいのか訊いてみたところ、なんと、もう下書きができていると言うではないか。私は多少手間が省けると安心し、「その下書きをすぐにください」と申し出た。社長は大地震が起きた後のようにちらかったデスクの上から数枚の紙を探し出し、それを私に差し出した。手間が省けると安心したのも束の間、私はその数枚の下書きを見て唖然とした。
まず、下書きといっても、らせん状の針金で止められたノートから破り取った後が生々しい紙が5枚。そしてそこには、小学生のお絵かきと言っても過言ではないような鉛筆のスケッチが描かれており、その中には、何が描かれているのかさえも不明なものがあり、あとで社長へ直接訊きに行ったほどであった。それを見た私の部下や後輩も私と同様に唖然としつつ、笑いをこらえるのに必死の様子であった。そのあまりの酷さに、近くに勤務している別の会社の先輩に昼食のネタがてら見せたところ、「こんなものは見たことがない」と腹を抱えて爆笑していた(実物をお見せするのが、その凄さが最も伝わるのだが、残念ながらそれはできない)。
さてどうしたものか。これでは手間が省けるどころか、下書きをもらったがゆえに逆に面倒なことになってしまった・・・私は紙切れを見ながら少し考えたが、あることに気付き、このパワポ作成をさっさと終らせることにした。
それは、『もらった下書きと、“全く”同じ内容をパワポで作成する』ということである。
こんなものは悩むだけ時間の無駄である。下書きを渡されたのだから、下書き通りに作ればいいことである。
そのままを再現して、「なんだこれは!?」と言われたら、「下書き通りに作成しました!」と言い張ればいいし、逆にこの下書き通りに作成した時の社長の反応を考えたら、ちょっと面白くなり、すぐに作成に取り掛かった。
作成していると自分でも笑ってしまうくらいの“大人の紙芝居”っぷりで、あの下書きをよくここまで再現したと、意味の無い達成感さえ沸いてきた。特に面白かったのが、「新商品が生まれた経緯」を表現したページで、なぜかその経緯の比喩に「ウイスキーの蒸留釜」を採用しており、私はパワポの機能を駆使して釜の金属感をも再現してみた。また、今後のビジョンを示すページでは、コルクを抜いたシャンパンの画像も適当に付けてやった。そして、大そうなテロップ、ではなくフリップが完成したのである。※念のため記しておくが、私はこのパワポ作成に大した時間は掛けていない。
遂に完成したパワポを社長に見せる時がやってきた。私は彼の反応を直接この眼で確かめたかったので、メール添付で送らずに、「出来ました。こんな感じでどうですか?」とカラー印刷したものを社長に手渡した。すると社長は椅子にふんぞり返って、両足をデスクの角に乗せたまま、しばしそのプリントを眺めていた。
そして最後まで見終わると、なんと、
「うん、こんな感じだな!」
と満足気にプリントを私に返してきた。そして今日も、このパワポで作成された芸術的なフリップは、とある企業のWebサイトで社長インタビューと共に配信され続けている。このフリップを見た何人かの人に全く同じことを言われた、「ちゃんと仕事してんの?」と。ここで本物をお見せできないのが悔やまれる。<おわり>
つまり、面倒な仕事など自分の考えや思いなど入れずに、上司の思う通りにさっさと事務的に対応してあげれば良いのだ。下手に議論するだけ時間の無駄である(どうせ言うこと聞かないんだからさ)。
でも、そういう仕事を“事務的に”やっつけてることは、気付かれないようにくれぐれもご注意を。
それでは、良い祝日を!