前回の記事で、上司はお客様以上の神様である、と書いた。
就活生の皆さんにお伝えしたいことは、
大手証券に就職するのであれば、顧客の為には働けないと
思っておいた方が良い、ということである。
では、誰の為に働くのか、と言えば、
もちろん上司の為、会社の為、自分の為に働くのだ。
つまり、顧客を犠牲にしてでも、
良い給料・良い福利厚生・良い暮らしの為に働く、と
最初から思えば、非常にスッキリ働けるはずだ。
(たとえ人として「最低な奴」だと思われたとしても・・・)
「顧客を犠牲にしてでも」というところがポイントである。
上記のように感じる根拠となった体験は、会社勤めの頃に数え切れない程あったが、
その中からいくつか書いてみたい。
・「バカ!絶対、手数料が高い方を選べ!!」
筆者が入社して3~4年ほど経った頃、
新人1年目の女の子が、深刻な顔をして相談してきたことがあった。
40代の男性課長に、仕事の報告をしたら思いっきり罵倒されたと言うのだ。
話を聞いてみると、
その女の子は、来店のお客様から「豪ドルの商品がないか」とたずねられ、
当時、会社で取り扱っていた中で一番利回りの高い豪ドル債を勧めたらしい。
確か豪ドル債で7~8%程度の利回りがまだあった頃だと思う。
その新人の女の子は、お客様に良かれと思って
「既発債」で利回り7%くらいの豪ドル建て債券をお勧めし、
その勧誘でお客様は200万円分買ってくれたそうだ。
「既発債」とは、過去に既に発行された債券のことをいう。
それを上司に伝えたら、皆の面前で罵倒されたのだ。
なぜか?
実はその当時、他に豪ドル債で手数料が2%取れる「新発債」があったのだ。
「新発債」とは、文字通り新規に発行される債券のことをいう。
その新発債は、筆者の記憶では利率5%程度だったように思う。
新人の子は、「新発債」の利率よりも「既発債」の利回りの方が
高かったために、お客様にとって有利なのは
「既発債」だと判断し、既発債の方を勧めたわけだ。
(もちろん、債券の格付・残年数など他の条件はほぼ同じであった。)
利率や利回りについてイメージを持ちにくい方もいると思うが、
銀行預金の金利と思ってもらえるとわかりやすい。
どの債券を買うかは、どの銀行にお金を預けるかと似ていて、
他の条件がだいたい同じであれば、利子が多く付く方を必ず選ぶはずである。
利率・利回りが高い方が多くの利子をもらえるわけだから、
顧客にとって有利なのは「既発債」だったわけだ。
しかし、上司は顧客有利の判断をした新人に対して、
激しく怒鳴った結果に終わった。
その理由はただ一つ、
「既発債」が無手数料なのに対して
「新発債」が2%程度の手数料を取れたからである。
だから、上司が怒鳴った言葉はこうである。
「バカ!絶対、手数料が高い方を選べ!!」
新人の女の子が「これって間違いだったんでしょうか?」と筆者に質問してきた時は、
どう答えたらいいか非常に困った。
困ったあげく、適当にごまかしたような気がする・・・。(今となっては反省しかない。)
・マルい客を狙え!
「マルい客」という隠語がある。
これは「セールスの言いなりになる客」というような意味である。
この「マルい客」たちこそ、大手証券を潤し続ける貴重な源泉である。
マルい客の特徴は、以下のようなものだ。
①金融・投資・法律に詳しくない、無知である
②金融・投資・法律に詳しい知り合いがいない
③物事を深く考えない、情や勢いに流されやすい
④頼みごとされると断れない
⑤リスクを甘く見る、細かく考えず大胆である
⑥インターネットやパソコンを使えない
⑦もちろん富裕層
当然、これは個人的な意見に過ぎないが、
要するに「カネ持ってるイイ人」「扱いやすい人」という感じだ。
こういうマルい客をたくさん作るため、
大手証券セールスの営業力(=気に入られる能力)だけは
一級品だ。
(しかし、儲けさせる気持ちも能力もない。)
あらゆる手段を使って、とにかくマルい客に気に入られなければならない。
そして、一度仲良くなったら、あとは出来る限りクレームに
ならないように努力しながら、
手数料をしぼり取り続けるだけだ。
もちろん相場の良い時は、高い手数料を抜きつつ
顧客も儲かる。
しかし、相場の悪い時は、高い手数料を抜くが
顧客は損し続ける。
つまり、現在のような環境で大手証券と取引すると、
最悪の結果に陥る。
そして、現在に限らずいつの時代も、取引を継続していれば、
いつか必ず相場が悪化・暴落する時が来る。
従って、最終的にはお客様にものすごく嫌われる。
・最もヒドイのは「高齢者取引」
残念ながら、「マルい客」の特徴を最もはっきりと持っているのは、
70代・80代以上の「高齢者」である。
特にパソコンに苦手意識を持っている傾向があるので、
高齢者層は「情報弱者」と呼ばれる状態の方が多く、
こと金融・投資に関してはテレビ・新聞以外で情報を手に入れることが出来ないから、
証券セールスにとっては非常に「言いなり」にさせやすい。
それが最も許し難き「高齢者取引」の温床となる。
最悪のケースでは、高齢のお客様が「認知症」だったにもかかわらず、
高リスク投資の勧誘によって取引させて大損させる事例もある。
また、高齢者はじめ「マルい客」全般に言えることだが、
言いなりの顧客は回転売買の餌食にされる。
(回転売買についてご存じなければリンク参照:COMニーズが顧客を滅ぼす! )
なぜこんな詐欺みたいな営業をしなければならないか?
すべては「手数料稼ぎ」のためである。
だから、手数料を“真っ当に”稼げさえすれば、
詐欺まがいの回転売買取引や高齢者取引をする必要はない。
しかし、前回の記事にも書いたように、
ある程度の勤務年数を経たら、
数億の取引をしてやっと稼げるような手数料目標を
毎月毎月達成し続けなければならない。
相場が良かろうが悪かろうが、
高い手数料目標を達成するよう強制され続け、
もし達成できなければ強烈なパワハラが待っている。
そして正直に申し上げるが、筆者の経験上、
ずっと“真っ当に”稼げるセールス、
顧客を儲けさせながら手数料も稼げるセールスは、
大手証券の中でおそらく全体の1%もいない。
こうした仕事なので、筆者としてはこう言うしかないのだ。
顧客を犠牲にしてでも、
良い給料・良い福利厚生・良い暮らしの為に働くと
思えなければ、絶対に仕事を続けられない、と。
現実として、99%の大手証券セールスが
顧客を傷つけながら仕事している。
それだけは覚えておいた方がいい。
ゆえに、就活生の皆さんに言いたいことは最初から一つだけだ。
まともな人間なら、大手証券になど就職するな。
※ すべて筆者個人の見解に基づいておりますので、ご了承下さい。