結論からいえば、えんみ=塩味は、「江戸時代から使われ始めた専門用語」らしいのですが、室町時代の料理の本には「鹹味」と書かれていることから、「鹹」が読めないか知らなかった人が多数出たということなんじゃないかと。
それでも、五味は「鹹味」と書かれています。
実は「塩」は「鹽」の新字体と言われていますが、奈良時代から使われている俗字だそうです。
さらにいうと、この俗字は日本でしか使われていません。
この塩は「土」+「鹵」+「皿」で構成される漢字で、実は鹽とは別の漢字です。
これは海水を塩田で結晶化して、土器に入れて運び、空気中の水分と結合してベタベタになってしまうのを土器ごと焼いて乾燥させる「焼塩」という手法をしたことにより国字ではないかと言われています。
鹽とは、「監」+「鹵」の会意形声文字で、「監」が音符であり、「鹵」が部首となります。では「監」とはなんだったのでしょうか?
監は「臣」+「人」+「皿」。「しっかり見開いた目」の象形と「たらいをのぞきこむ人」の象形と「水の入ったたらい」の象形が合わさってできています。「鏡(手本)に写して見る」という意味となり、「かんが-みる」「しら-べる」「み-る」という意味が生まれます。
さらに「監獄」などのように用いられ「監」だけで「牢屋」のような意味が派生しています。これは、元々の皿に「区切られたもの」という意味があるため、「臣」が監視するというニュアンスを持っていたからと言われます。「人が区切られた場所に入れられしっかり見開いた目でみられる場所」となれば、当然ですが監獄ですね。
この監と鹵が結びつくと、塩田の意味になります。つまり、鹽とは塩田で作られた「人工のしお」のことです。ただし、この塩田は海岸部ではなく、大陸の中で「岩塩を水に溶かして精製した」ものです。これは、岩塩には毒素が混ざっており、大陸の岩塩は砕いただけでは使えなかったからであると言われます。
さて、塩に戻りますが、日本では岩塩はほとんど取れません。つまり、日本の塩は、海水を煮詰めたものが最初だった訳です。これが「土器」の土が部首となっている理由です。
では最初にもどって鹹とはなにか。
「鹵」+「咸」の会意形声文字で、「鹵」はしお、「咸」はひきしめる・まとめるなどの意味をもっているそうですが、ここは感に通じるものであると考えられるのです。
しお気を感じることを「鹹」といい、「しお」「から-い」「しおから-い」と読みます。
また鹹水(海の水から作った製塩過程で濃縮した食塩濃度の高い水)という用法もあり、鹽が陸地のしおだとすれば、鹹は海のしおだという説もあります。
そうなると、鹽と鹹と塩は全く異なる字であるということになります。
なので、鹹味の代用字として塩を使った「塩味(えんみ)」は不適切であり、「鹹味(しおみ)」として再度普及させたらいいのではないかと思うのです。
※漢語では、甘味(あまみ)は甜味(テンミ/ティエンウェイ)といい、「かんみ」とは呼ばないのも面白い違いですね。