他流さんではあまり仰らないそうですが、当流では茶筅通しのときに「『こ』の字でぽん」というフレーズが出てきます。

 

『こ』の字でぽん

検めて、ぽん

検めて、ぽん

しゃらしゃらしゃらしゃら

『の』の字で出す

 

 のが茶筅通し。

 

しゃらしゃらぽん

検めて、ぽん

検めて

しゃらしゃらしゃらしゃら

『の』の字で出す

 

 のが茶筅洗い。

 

 微妙に違うので、しっかり空で言えるようになるまで暗記してもらいます。

 

 この『こ』の字というのは、「茶筅の柄を9時に倒して、左から右へ上を通って、右から左へ下を通って茶筅の柄を動かす」動きで、決して穂先を動かそうとしてはいけません(多少は動きますが)。

 

 また、御茶を点てるときにも

 

『い』の字3回

しゃらしゃらしゃらしゃら

『の』の字で出す

 

 と教えますけれども、この『い』の時は「茶筅の柄を12時に倒して、左回りに下げて、再び12時に茶筅の柄を倒して右回りに下げる」という動きで、これを3回以上繰り返してから、御茶を点てるという動きになります。

 

 この「『い』の字」のあとの「しゃらしゃらしゃらしゃら」も、穂先を動かさないように柄を振って、御茶の薫りが変わる瞬間以後は泡を立てるために穂先を動かします。

 

 さらに「『の』の字」の動きも茶筅の柄の動きであり、穂先の動きではありません。

 

 これは「『の』の字を書かせることによって、茶筅の持ち方を変える」ための所作だからです。穂先を回しては持ち方を変えることができないのです。

 

 一つ一つの所作にはすべからく意味があり、無駄がないのが茶湯の点前です。

 

 今一度、所作を見直すというのは如何でしょうか?