いまだに上手く答えられない質問の一つがこれです。

 

 というか、これはおそらく「人の数ほどある」のではないか?と思うのですが、最小公倍数というか最大公約数というか、多くの人に共通することを探ってみることで、見いだせるのではないかと思ったので、少し掘り下げて見ることにしましょう。

 茶道の目的


 

 茶道の目的は「茶会を開けるようになること」です。

 この茶会とは、一般の人が思っている大寄せの茶会や、薄茶・濃茶のいずれか片方または両方を出す会ではなく、懐石と八寸(お酒)があって、その後に濃茶・薄茶のある「茶事」のことです。

 

 これら一連の流れと道具の扱いを覚え、数寄屋の掃除の仕方や水屋の道具の使い方、準備の仕方を覚えて、ようやくできるようになります。

 

 つまり「もてなすための準備と道具の使い方、作法と所作を身につける」のが目的といえます。

 

 では、楽しさはどこにあるのか?というと「道具の組み合わせ」にあります。

 

 道具組みとは


 

 道具組みというのは、文字通り道具の組み合わせ方ですが、単に「見栄えだけで組み合わせていいものではない」という点に注意が必要です。これは流儀ごとにいろいろと違いますから、あまり詳しくは書きませんが、駄目な組み合わせ方というものもあるので、これに従って組み合わせていきます。

 

 とはいっても、道具組みの規矩というのは、ある程度自由度があるので、その中で「その日の茶会に使われる理由」というのものを設定していく訳です。

 

 これを「物語」といいます。

 

 物語には上手(じょうて)と下手(げて)があり、そのものズバリを持ってくることを「下手」、それにまつわるものを添えることでそれだと示唆することを「上手」といいます。

 

 例えば、餌畚をつかって「大黒さま」、鯛で「恵比寿さま」、琵琶で「弁天さま」、槍の鞘で「毘沙門天」、寿文で「寿老人」、布袋竹の花入で「布袋さま」、福文で「福禄寿」などの七福神を示すというのもあります。勿論これに限定されるものではなく、もっと上手(じょうず)な物語をつけられる方もいらっしゃいます。

 

 槍の鞘建水と駅鈴蓋置の組み合わせはどの流派でもなさる組み合わせですが、これは「騎馬」を示す道具組みで、端午の節供によく見られます(私も必ずやります)。勿論これは、建水ではなく槍鞘肩衝茶入と駅鈴蓋置とですることも可能ですが、組み合わさっていることから一対のように扱われることも多いです。

 

 他には金の瓢箪なら羽柴秀吉を、五角形なら桔梗形ですから明智光秀をイメージするということもできます。雁金から柴田勝家(柴田勝家の家紋)とか、こういうものも広く物を知っている必要がありますが、それは亭主側の話です。

 

 客としては「これはどこに物語があるのだろう?」と考えて、亭主に話を振れればOK。

 亭主が愉しそうに話をしてくれます。

 

 城楼棚+近江八景水指なら、安土城、彦根城など、近江国にある城をテーマに自由自在でしょう。石田三成でも、井伊直政でも、色々と道具を組み合わせることもできます。

 

 他の道具でもお城をイメージできればこの城楼棚は色々使えるんじゃないかと思いますね~。

 

 こうした物語で情景を描き、それを主客(亭主と正客)で問答をして答え合わせをするという遊び方です。

 

 掛け軸に「無事是貴人」を掛けておいて「禅語の意味とは違いますけれども、皆様の無病(六瓢)息災を祈って道具に六つの瓢を隠して置きましたから、是非、六つ探し出してください」とか。

 

 ただし、同じ道具は重ねないのがよいとされることが多く、私等は「三つは重ねないものよ、最後の一つはお客様のお召し物や持ち物に残しておきなさい」と教えられました。または「二つを重ねるにしても、月の蒔絵と月の文字などのように、別の形が好ましいわね」と言われております。

 

 こうして、知識とお金とを注ぎ込んで、お客様をもてなすのが、茶道ーーいえ、茶の湯であると言えます。

 

茶道とは?


 

 つまり、心を豊かにするためにするものといえるのではないでしょうか。

 知識や教養というものを蓄えて、道具の景色を見立てて物語を紡ぎ、組み合わせて一つの席を作り上げる。

 

 これは小説を書いたり、絵を描いたりするのに似ていると私は思っています。

 

 ただし、自分で書いたり、描いたりするのではないところに難しさがあったりするわけです。

 

 どうです?

 みなさんも茶の湯やってみませんか?