鳥居引拙を小説に登場させたので、どうせなら引拙棚を出したいなぁ〜と考えていた訳ですが、引拙棚の点前がよく分からない。
紹鷗袋棚と同形であったことは間違いないようですが、差異としては以下のようなものがありました。
・桐木地溜塗(紹鷗袋棚は檜木地春慶塗)
・鍍金金具(紹鷗袋棚は地金)
・引違い戸は白の鳥の子紙のみ(紹鷗袋棚は紹鷗緞子を縁に廻してある)
・足がある
・戸は倹飩扱いで、棚左脇に立て掛ける
ということで、引っ張り出して点前をしてみました。
あ、これはやれます。
足の分、地板が高くなる(といっても半寸ほどでしょうが)ので、水指の引出しは紹鷗好より楽であると思います。
この摘みが鍍金の倹飩金具であったのではないか?と思われます。
そして、猿曳棚は紹鷗袋棚からではなく、引拙棚から分かれたものと考えるのが正しそうです。
友人の伝書にある内容を整理すると
引拙棚は紹鷗袋棚と同じように水指を前に引き出す。
水指を前ノ畳に出したら、後ろの戸を倹飩蓋のように扱い、立て掛ける(他の棚物と同じように脇に立て掛けると考えられる)。
紹鷗袋棚の場合は引き出し切ったときは引戸を閉める→金具が倹飩金具ではないからか?
つまり、引拙棚の点前は紹鷗袋棚と猿曳棚の点前の二種類が合わさった形で存在していたと思われます。
前に出した水指はそのままでは点前出来ませんから、中板の中央に移して使ったと考えられます(猿曳棚の点前)。