現在、私が執筆している『数寄の長者』は千利休を軸とした戦国前期の歴史群像劇です。


 執筆しようと思ったのは、映画『利休にたずねよ』を観て「なんだこりゃ?!」という感想を持ったことがきっかけでした。


 元々、信長以前の戦国歴史小説が、少ないことを嘆いていたことや、戦国時代の通史的な三国志のような作品があればいいのにと思っていので、書いてみようと始めたのです。


 しかし、ハードルはえらく高かったですね。


 まず、資料がほぼない。


 第一話の利休誕生を書いたものの、pixivのルビの煩雑さも相俟って数年放置することになってしまいました。


 ここで、転機が訪れました。


 執筆アプリ「Nola」との出会いです。


 このアプリはパソコンとスマホの同期をしてくれ、かゆいところに手が届く上にユーザーからの要望を聞いてくれるという有り難いアプリだったのです。


 使い勝手がよく、直ぐに課金。執筆を再開しました。


 早速、「pixivのルビに対応してほしい!」と要望すると、様々な投稿サイトのオリジナルルビに変換してくれる機能を搭載してくれたではありませんか!


 そして、第二話以降どう書きすすめるかを少し悩んだのですが、「利休という人格が形成される社会の流れを描かずして、歴史小説といえるだろうか?」ということに考えが至ります。


 大人になったところから書き始める小説もありますし、子供の頃など特筆すべきことはあまりないとも言えます。


 しかし、利休が生まれる前年から、歴史は大きな転換期を迎えていました。


 それは「将軍不在の幕府」です。


 このことが、応仁の乱以後始まった戦国時代を前半と後半に区別する「その時歴史が動いた」だったと言えるでしょう。


 この時代は茶道にとっても重要な時代で、能阿弥から始まった東山流と京都で村田珠光が興した奈良流という二つの全く違う茶道が流行していくからです。


 政治色の濃い書院茶に対し、政治色を排した数寄屋茶が豪商らに受けて侘数寄と唐物数寄が同時に広まっていくという状態だったのです。


 この時代を少しでも描いておきたい……私はそう思い、しかし、それさえも歴史の間にある幽かな光であることを表現するためには、政治と戦争を描かなければ戦国ではないと思うようになります。


 そこで、利休の最初の妻が三好長慶の妹であるという伝承を手菅に三好長慶を竹馬之友と定め、三人の天下人との絡みを比較することにしました。


 その上で、三好長慶の前に【事実上の天下人】と言われた細川高国を軸にすることに。


 それから、全体の大まかなプロットを書き、第一部を三好元長の死まで、第二部を三好長慶の死まで、第三部を本能寺の変まで、第四部を利休切腹までと決め、それぞれを4章立てにすることにしました。


 それと、私の敬愛する歴史小説家の一人である宮城谷昌光先生の手法である「主人公の父や祖父から書く」ことを決め、第一話を書き直し、序章として、子の道安の回顧録という態を取ることにしました。


 時には資料に行き詰まり、時には調べ物が進まず3か月も執筆が止まったこともあります(苦笑)


 そんな状況が好転したのは、昨年の11月頃からでしょうか。


 第二章に入り、思ったよりも筆が進みやすくなってきたのです。


 お陰様で、第二章も現在十五話(話数は通算)が書き終わろうとしています。


 NOVELDAYSでの掲載は順調にPVを伸ばし、現在13,000を超えています。


 途中で各話冒頭に和歌を入れるように変更し、各話副題を和製漢文にして、冒頭に書き下し文を添えて、時代的な雰囲気を醸し出すようにしている訳です。


 知人らに言わせると「それがより難しそうに感じさせる」らしいのですが、ラノベではないし、腹を括ってこの方向でいくことにしました。


 なかなか人気コンテンツ!にはならないでしょうが、気長にお付き合いいただけましたら幸いです。


 もうすぐ『第十五服 誅嵐叛篠』が書き終わり、来週には公開できるかと思います!


 お愉しみに♪


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