茶道は面白いコンテンツである。しかし、年々物凄い勢いで人口が減少しているのは何故だろうか?

 私は色々な角度から考察し、様々なことを実践し、データを分析して一つの答えを得たが、何故様々に行われていることが功を奏しないのか? それは、多くの人が原因を誤解しているからだ。

 茶道を簡略化したり、簡素化したりする必要性は全く無かったのである。

要因① 幹部の高齢化

 これはどの組織でも起こる現象で、幹部の高齢化によって組織が硬直化するという現象である。

 これは世代交代が進めばある程度緩和されるのだが、茶道の場合、抹茶の効用か、長寿で元気な人が多く、世代交代が他の業界ほど進んでいない現実がある。

 最近になってようやく始まったが、今度は、世代交代をする世代の方が高齢化してしまっていて、円滑な組織の若返りが望めそうもない。

 私が所属する茶華道連盟であっても、私が最年少というのだから、組織が若返る訳がないのだ。

 世の中は1995年以来、デジタル化の一途を辿っていて、新聞を読む人が減り、それまで広告の花形だったチラシが姿を消し、バナー広告へと移行した。紙媒体のデザインがほとんどなくなって、ポスターすらデジタルサイネージで表示するようになっている。それなのに流れている情報量は膨大に増え続けている。

 60代以下のスマホ利用率は1.28台で、既に複数のスマホを持つ時代へと突入しているのだ。

 ところが、70代・80代ではガラケー回帰が起こっていたり、メールすら碌に読まない人も多い。スマホを使いこなす人など20人に1人いるかどうかで、精々がLINEをする程度になる。

 この世代が幹部であることが、減少の大きな要因である。それは何故か?

 それはデジタルデバイスへの無理解であり、理解できないものを排除し放置するからである。

要因② アナログ世代とデジタル世代の情報断絶

 このアナログ世代は団塊の世代が多い。そしてほとんどがテレビから情報を得ている。所謂テレビ世代だ。

 ところが、それ以下の年代はテレビを観ない。それはテレビが偏向報道しかせずに、正しい情報を流していないことを知っているからだ。

 つまるところ、接している情報の質と量が段違いなのである。しかも、能動的に情報を取得するものだと考えるデジタル世代=ソーシャルメディア世代と、受動的に受け取るだけのアナログ世代=マスメディア世代の情報断絶が起こっている。手にしている情報がまるで違う。

 団塊の世代以上の人たちは、新聞やテレビ、チラシなどアナログなものからしか情報を取得しない。友人関係も物理的な範囲で行われている。

 これに対して、それ以下の世代は物理的な距離は関係なく、ネットというデバイスを介して交友関係を構築する。情報は専門的な論文やデジタルアーカイブから取得する者も居れば、Twitterのタイムラインに流れてくるものを掴む者もいる。それぞれが自分の得たい情報を得やすいようにカスタマイズして暮らしている。

 つまり、扱っている情報のメディアに大きな隔たりがあり、その情報量は一千万倍も違う。

要因③ アナログ世代の情報発信はデジタル世代に届かない

 伝統文化の業界はどこもデジタル化が遅れている業界である。デジタル世代に突き上げられてSNSアカウントを折角開設しても活かし方を知らないからだ。

 情報発信をしようとすれば、やれ許可を取れだのやれ先に説明をしろだのと言い始める。情報を伝達するだけなのにそんなことをしていては機会損失をするだけである。結果、デジタル世代は手続きの煩雑さから協力をしなくなる。

 茶会が終った報告をSNSに流したりするのでは遅い。新規参入の機会である大寄せをSNSで発信しないでいるのでは、新規参入を求めていることにならないではないか。

 そして新規参入向けの発信するなら茶会の締め切り2ヶ月前には情報発信の準備は終わっていなければならない。

 情報の拡散に時間が掛かるのは、実はデジタルもアナログも同じである。ただし、その伝播性に大きな隔たりが生じる。それは、拡散範囲と情報のコントロールがマスメディアはしやすいのに対して、ソーシャルメディアはできないという点である。そしてソーシャルメディアは一度拡散に速度がつくと双曲線を画いて加速する。所謂、バズりである。

要因④ 流派のウェブサイトの有無

 大手流儀や家元が世代交代している流派ぐらいにしかウェブサイトがないという現状、ネットで検索して流儀のサイトがないとき、新規参入者はどう考えるだろうか?

 その流儀の特徴や歴史などがきちんと書かれているサイトがあるのとないのとでは、その流儀に対する信用度が変わらないだろうか?

 例えば、名前も知らないメーカーの商品を見掛けて購入を検討しているとしよう。そのメーカーがサイトを設けているのといないのとで、購入しよう!という気が削がれる人の方が多くはないだろうか。少なくとも私はアフターフォローのことを考えて、そのメーカーのものは買わないだろう。

 これは大きな機会損失なのだ。

 大手流派は既にWikipediaに独立したページがあり、そこから公式サイトへのリンクがある。解説も沢山されているし、門人らのサイトやブログも数多くある。

 これがさらに口コミに似た宣伝になって、大手流派への参入経路となっているのだ。

 ただ、ポツンと個人のサイトはあってもそれでは信頼度に大きな差が出てしまう。その大本の保証をするのが、流儀の公式サイトなのである。

要因⑤ あまりにもアナログ過ぎる世界

 確かに、茶道はアナログの極地である。だが、デジタル情報化社会の中で生き残るためには、茶室に入るまでをデジタル化しなくては、この先生き残って行けなくなるだろう。

 予約サイトはごまんとあり、チケットサービスもごまんとある。だが、茶券がそうしたサービスを利用し、茶道を習っていない人にアプローチしている例は極めて少ない。私の知り得る限りでは名古屋の紅雲庵姉が市のやっとかめ文化祭?でやったぐらいだろうか。なかなかに先進的な姉さんなので、このまま進んでほしい(笑)

 今どきアナログでしかチケットが買えないということが、大きな機会損失なのだ。規模が小さいので仕方のない部分であっても、ネットで告知市、メールでやり取りして送金してもらい、郵送するぐらいはできる筈だ。

 このままでは60代以下のデジタル情報世代に対するアプローチはなされないまま、世代間の断絶が進む一方である。

 70代・80代の幹部はネットは怖いだのと理由をつけてやらないが、なんのことはない自分が触れていないから理解できないだけなのだ。

 このデジタル世代とアナログ世代の情報断絶が今伝統分野だけではなく、町工場や後継者不足に嘆いているすべてのジャンルで起こっていることを鑑みて、次の世代がある丸場所で、体験会を開いていくことを考えねばならないのではなかろうか。

 今どきだと、マルシェやフェスといったものへの参画・もしくは企画が必要なのではなかろうか。

 伝統文化団体が動かねばならないのは、今このとき、このためにこそ存在するのではないだろうか。