テレビドラマとかでお茶会のシーンがあると必ずというほど言われる「結構なお点前で」という台詞。

 

 ぶっちゃけて言えば、お茶会で聞いたことがありません。

 明らかに慣れてない人とか、習っていなさそうな方が言う場面はありますが、その時場に流れる「コレジャナイ」感がなんとも言えませんね(笑)

 

 莫迦にしている訳ではなく、なんでこの台詞が有名になっちゃったのか?と心と表情で溜息ついている訳です。

 

亭主「お加減は如何でしょうか?」

正客「大変結構でございます」

 

 これが最も多く聞かれる受け答えです。

 丁寧な方なら

 

正客「結構なお服加減でございます」

 

 と仰ったりします。

 やや砕けた方だと

 

正客「大変おいしゅうございます」

 

 というお答えが返ってくることも。

 私なんかは「結構なお服加減でございます」からの「おいしい!」という返しをします。

 その時のご亭主のホッとした表情にニッコリします♪

 

 よく間違えられているのは「結構なお【手】前で」という誤字ですが、実はこれ間違いではありません。

 

 現在は茶道において「てまえ」といえば「点前」と書きますが、江戸時代のはじめには「手前」と書いていたことが記録に残っています。それが茶を点てるということから、点茶に対しては「点前」と書くようになり、炭については点てないので「手前」のままになったとも言われています。

 

 手前というのは、「自分の手の前」。すなわち「自分のすぐ近く」という意味です。

 このことから一人称としても、二人称としても使われるようになり、一人称の場合は「手前」、二人称の場合は「お手前」と接頭敬詞をつけて使われるようになります。

 

 御前(おまえ)と似たような感じで侮蔑語変化で「てめぇ」という変化もしておりこのあたりの使われ方はとてもおもしろいです。

 

 そもそも、「結構なお点前で(した)」と使うシチュエーションというのは、あまりありません。

 結構な点前ということは、基本的に客の立場が、亭主や席主の指導者の位置にあるということですから、普通ですと直系の大先生とか、宗匠・家元といった方が正客に就いたとき、会の終わりに声掛けとして使われるぐらいでしょう(本日は結構なお点前でした~的な)。

 

 私の師匠は稽古の際「はい、結構です」とよくおっしゃいます。

 これは師匠が弟子に対していう言葉として問題はないと思います。

 

 ですが、茶席においてはどうでしょう?

 

 茶席というのは基本的に身分の上下をなくしています。

 ですから、格の違いはあっても、立場の上下や身分の上下というのはありません。

 そういう場に使われる言葉として「結構なお点前で」は相応しくないというのは自明の理かと存じます。

 

 勿論、流儀によってはいうお流派もあるかもしれませんが、私は今までそれが公式ルールであるという流派を見たことがありません。

 

 私の記憶にある限りでは、小学生の頃にみた時代劇の台詞でしょうか。

 

 そして、習ってすぐに「『結構なお点前で』とは言いませんから注意してください」と言われました。

 

 少なくとも都流では言わないということは確定しています。

 

 習ったことがなくても、この台詞、言わない方が無難だと思います^^