私はさまざまな経験から、未経験者や初心者に「略して伝えてはいけない」と考えています。

 

 とっつきやすくするために、抽出して要点を教えることはいいのですが、それは「例外もあって、それは今教えていない」と知らせておかないと、自分はよくても相手が大怪我をすることがあるからです(物理的な怪我ではなく)。

 

 例えば着物。

 礼装に江戸小紋が使えるかどうか?で言えば、大まかに言えばOK。

 ですが、これにはルールがあって、三役または五役という決まった柄および、各大名家で採用されている定め小紋だけが、礼装に使える江戸小紋です。

 

 未経験者や初心者に教えるには「江戸小紋」と教えてしまうと、町人由来の『いわれ小紋』や『東京おしゃれ小紋』も江戸小紋とされているので、そうしたものを礼装に仕立ててしまいかねません。

 

 ですから、江戸小紋ではなく「江戸小紋の内、五役以上」と教えないと、恥をかくのは教わった方ということになります。

 

 それよりは江戸小紋を外して「絹物で紬でないやわらか物と呼ばれるものが礼装に使えます」と教えた方が無難です。

 

 簡易版というような表を作って、未経験者や初心者に伝えるには大変な注意が必要であるということを踏まえることが大事です。

 

 略して伝える相手が、ずっと師事してくれ、略した部分を伝える機会があればいいのですが、そうではない時代になっています。また、教えてもらえなかったことを別の方面から取得すると「教えてもらえなかった」と言われかねない時代になっています。

 

 だからこそ、私は「略して教える」ことの危険性に警鐘を鳴らすのです。

 

 先生業にとっては多難な時代を迎えたと思います。

 昔からのあり方なら、秘匿こそ権威だったのですが、時代は大きく変わり、情報発信こそ信頼される要因になりました。

 

 皆様また皆様の先生の在り方はどちらですか?