七夕に因んだ茶杓の銘を探していて、そのものずばりでは面白くないが故に、故事にあたってみていました。

 すると、織姫の別名が七つあり、織姫は七姫とも言われていることを知りました。牽牛織女伝説は有名ですが、これは「しらなかった!」と調べてみると、さらに面白いことが解りました。

 それは「朝顔」です。

 織姫の別名は

 ・朝顔姫(あさがおひめ)
 ・梶葉姫(かじのはひめ)
 ・糸織姫(いとおりひめ)
 ・蜘蛛姫(ささがにひめ)
 ・秋去姫(あきさりひめ)
 ・薫物姫(たきものひめ)
 ・百子姫(ももこひめ)

 で、朝顔姫というのは、朝顔は支那で「牽牛(けんご)」と呼ばれていたのだとか。これは、朝顔の種は非常に高価な薬であったため、贈られた相手は、牛を牽いて御礼をしたことから、朝顔の種を「牽牛子(けんごし)」と呼んだことから、朝顔の花を「牽牛花(けんぎゅうか)」と呼ぶようになり、牽牛といえば、織女ということで、織姫の別名として「朝顔姫」と言うようになったそうです。

 ということは、朝顔という銘であれば、七夕の頃に取り合せると素敵な意味を持つということになりますね^^

 梶葉姫というのは書に由来します。
 というのは、芋の露で墨をすって、梶の葉に詩歌を書いて、書や詩歌の上達を祈るという風習があるからです。となると、「朝顔」という銘の茶杓に墨台蓋置という組合せはとても奥の深い読み解きになりますね(懲りすぎw)。

 ちなみに梶は楮(こうぞ)と並ぶ和紙の原料。このことから、恋文=恋の歌を梶の葉に書いて贈ったとか。そして手紙のことを「梶の玉章(たまずさ)」と呼ぶようになります。恐らく、裏千家の葉蓋の点前もこれに因む道具立てだと思います。墨台蓋置を辞めて、梶葉文の茶盌というのもいいですね♪( ´▽`)

 さて、他の別名は……というと織姫が機織女であったことをそのまま言い表したものが「糸織姫」で、これは「吹き流し」に喩えられますから、房のあるお道具が面白いかもしれませんね。矢筈棚や当流ですと都棚になりましょうか。扇卓も房がありますので面白いかも。

 七夕の供物に瓜があり、その瓜と蜘蛛を容器に入れて蓋をし、翌朝それを開いて蜘蛛が巣を張っていれば技芸が上達する。張った蜘蛛の巣網が細かいものであればあるほど上達が早く、荒いものはそれなりにしか上達しないとされるところから、「蜘蛛(ささがに)姫」いわれたそうで、これは蜘蛛の糸と機織の糸を連想させたものでしょう。音からひいて、笹蟹蓋置という手もあります(墨台蓋置とぶつかってしまいますが)。

 秋の衣を織る機織女であることから「秋去姫」、香木や香料を粉末にして固める薫物をすることから「薫物姫」というのは、ちょっと道具立てに込めるには難しいでしょうか。何かアイデアがあったら教えていただけると嬉しいですね♪

 あとは、天の川の異称である「百子の池」に因んだ「百子姫」というのは少々道具立てにするには難しいでしょうか。竜田川蒔絵などで「天の川」に見立てる……ぐらいでしょうかねぇ~。

 で、朝顔は、日本固有種ではなく、平安時代後期に持ち込まれたもので、奈良時代などでは桔梗を、平安前期では槿を「朝顔」と呼んでいたのだとか。あれれ?日本固有種を茶花とするのが基本という話でしたが、利休の朝顔の故事からすると、日本固有種でなくても定着したものは用いるんですかねぇ?
 この辺りの基準またわからなくなりました(汗)
 もしかすると「古来から使われている名前の植物」ということなんでしょうか。といっても、朝茶ぐらいにしか使いようもないのが実情ですけれども。
 朝顔・昼顔・夕顔・夜顔で、日本原産のものは昼顔だけ……ということになります。


 これに対し、牽牛は「天鼓」という異名を持ちます。
 能に詳しい方はピンッと来たと思いますが、「天鼓」は世阿弥作の四番目物です。天から授かった鼓と共に育った少年の名が天鼓といい、牽牛の異名と合致します。詳しい解説はコトバンクなどで調べてみてください^^

 これなら狂言袴の細水指などに、鼓蓋置を添えることで「牽牛」を表すことができそうです。

 茶杓の銘は難しいですが、故事や物語に添えて、考えるとすんなりと道具を思い浮かべることもできそうです。人間幾つになっても勉強ですね。