男は、背中で語るものだ。
多くは語らない。
...
目の前の大きな壁に向かって、立ち向かっていくだけさ。
怖くはないのかい?
それは愚問だね。
本当に無謀な、危険な壁に挑んでいる者に対して
「気をつけろ」とか、「大丈夫か」なんて聞くヤツはいないだろ?
危険な橋を渡っている冒険者は、決して、下を見ちゃいけないんだ
。
だって、震えちゃうだろ。
一心不乱に人生の壁を登っていると、下を見る暇なんてないだよ。
ただひたすらに、目の前の壁を登るだけなのさ。
「六本木の街を見守ってきた」」なんて言われてもねぇ。
俺の目の前には壁しかなかったわけだし、背中ごしに東京の街を見
守るなんて、
ムリに決まってるじゃないか。
でもまあ、そんな俺の背中に何かを感じとってくれた人がいたなら
、
まあ、それも悪くないかな。
実はね、怖さに負けて下を見ちゃってさ、ずっと固まっていたんだ
。
情けない話さ。
男は、背中で語るものだ。
でもね、勇敢に見える男でも、実は、気が弱かったりするんだよ。