ザクセン州のF市にて。
例の如く、朝食はがっつり食べます。朝だけはまだなんとか元気。
小さなホテルですけど、各テーブルに生花が活けているのがいい。
ヒマワリの種のついた硬いパン。
バターとジャムを付けて、よく噛むと、牛乳とコーヒーがまた美味しくなる。
普段はヨーグルトやデザートは食べないんですけどね。
食べれるだけ食べる。
小さなホテルですが、有名人も訪れていて、メルケルもと首相とか、古くは、メタルロックのTレックス(マーク・ボラン)なども来ています。
部屋の鍵は重たくて、ごっつい。
19世紀には劇場だったらしい。
街中は緑が少ない。
キリコの絵のよう。
家と家がひっついていて、隙間がない。
パリなんかもそうですけど、こういう建て方だと、後は道路を適時封鎖すれば、敵が街に侵攻することを防げるらしい。過去のことですけど。
この街の鉱山で取れた銀が、ドレスデンの繁栄を支えた。
ザクセン王は、マイセンなどの陶器も日本の技術を研究して開発した。
9時から12時まで顧客訪問。
先方はCEO,CTOも出席してくれて、綺麗な英語で状況を説明してくれた。どちらも190cmを遥かに超える長身で、ドクターだ。ドイツのGmbHは、そういうパターンが多い。オーナーは別にいて、そのオーナーがドクターを連れてきて、要所要所のポジションに期間限定で着かせる。一般従業員が下から上がっていくことはなかなかない。
同行のI君は、時差ボケ、肉体疲労だけでなく、やはり英語が理解できないことで相当のストレスを抱えていた。「あと3か月で英語が聞き取れるようになるのか」と。
彼には「とにかく声に出して英語をspeak outしろ」と言っている。
「文章で覚えろ」
「一日に一文でいいから」
「一文を36回口に出して言え」
と。
案の定、会議の最後の先方のCEOがI君に
「最後に、これからのこともあるし、Iさんの口から自己紹介をしてもらえませんか」と言った。I君が言えたことは
「学校では化学を勉強しました」
「会社には研究者として入社し、無機化学を研究していました」
「昨年11月に営業に来ました」
というこの3点のみ。
彼の名前がドイツ人には発音しにくいらいく、誰も発音できなかった。今後の課題だ。
私が「彼は若く、活発で、化学のバックグラウンドがあってとても有望だけど、英語はまだあまり話せないんです」と言うと、CEOが笑顔で
「英語は大丈夫、時間が解決する」と。
その優しい言葉に彼は胸が熱くなったそうです。
そして、最後の最後になんと私へのお別れの品が。
え!?
びっくり!
目頭が熱くなり、不覚にも涙してしまいそうになりました。
この会社には2008年以降、20回くらい来ました。
その間、ずっと対応してくれていた購買の女性Lさんから手渡されました。
中身は、これです。
ドレスデンはクリスマス・マーケットの発祥の地です。1384年のこと。
このF市の炭鉱で働いていた人たちが、12月になって、「そろそろ今年も終わりにしようや」と炭鉱の入り口の周りに火を焚いて、お祝いをした。それがマーケットの始まり。そして、寒い冬の間、この地域の人たちは木材を使って、民芸品として人形を作ったのです。くるみ割り人形がその代表例です。
頂いたものは、その一種で有名なものです。付属のあるものを入れると、人形のパイプから煙が出る。
*
打合せ後、会社の食堂で昼食を取ったのですけど、並んでいるときに、二人くらいが挨拶に来てくれました。1人は品保課長の女性。もう一人のB氏は、10年くらい前の購買課長、今は営業らしい。B氏は小柄な理学博士で、知識抱負で、上のクリスマスマーケットの発祥の話や、ベルリンの壁が崩壊した前後の話、その他、いろいろと彼から教えてもらったものです。
最後に購買のL嬢と。
彼女ともう二度と会うこともないと思います。
ゆっくりと穏やかにしゃべります。優しいけれど、物事はきっぱりしている。
優しさをいっぱい背中に受けて、この会社を後にしました。
彼らが呼んでくれたタクシーで、ドレスデン空港へ。行きは17000円くらいだったのに、この日は24000円くらいだった!ぼったくられたか!?まあ、会社のお金だからいいけど、なんだかね。以前は1万円くらいの記憶だったんだけど。
そして、空港でまたまたトラブルあり。
手荷物検査して、あとは搭乗だけというところまできて、我々は違うゲートにいることに気が付いた。慌てて、出口から出て、また別のゲートの手荷物検査を受けて、待ちました。
そして、いよいよ搭乗。ところが搭乗口を抜けてから、私はカバンを1つ待合所に忘れたことにはっと気が付き、また、逆戻りさせてもらい、カバンを取って、再入場。やれやれ。すごく焦りました
ボケているのか、疲れているのか。
ドレスデンからフランクフルトは飛行機で1時間。
フランクフルト空港からホテルへタクシー。6時頃着。
もう、仕事は終わりです。
チェックイン後、夕食を食べに外出。
大聖堂近くのフランクフルト最古のレストランというのを目指したのですが・・・
なんと潰れていました
大聖堂は残っても、レストランなんかは資本主義の洗礼を受けるんですね。
マイン川沿いでは、相変わらずサッカーの欧州選手権で盛り上がっていました。
我々は適当なレストランを見つけ
再び、シュヴァイネハクセと
シュニッツェル。
(牛肉に衣をつけて、バターで揚げたもの)
「シュニッツェルはオーストリア料理だけどね」と私。
「ウイーン料理じゃないんですか」と彼。
「ウイーンはオーストリアだよ」
「え、そうですか」と彼。
彼は歴史、地理、哲学、文学、音楽、絵画などの知識は小学生並だ。
私も化学や物理は小学生並かも知れない。
こうして、フランクフルト最後の夜が過ぎて行きました。
明日帰国です。
何事も起こりませんように。
夜の便なので、午前中はレポート作成、その後は、美術館とデパートめぐりかな。