4月21日にフジコ・ヘミングが亡くなった。92才だった。1931年ベルリン生まれ。スウェーデン国籍、東京芸大卒。父親は画家・建築家のスウェーデン人、母親は日本人ピアニストだった。小学校3年生で天才ピアニストと呼ばれたが、16才で右耳の聴力を失った。その後、音楽教師などをして、彼女の才能が再び認められ、有名になったときには、彼女は既に60歳を過ぎていた。CDデビューは67才だ。

 

 

 

 

5~6年前に、彼女のリサイタルを聴きに行った。会場はどこだったか。渋谷近くの大学の講堂でした。和風の着物をドレスにしたような不思議な服を着て登場。彼女はショパンの有名な曲をたくさん弾く。多くの有名ピアニストたちは、あえてショパンを避ける。あまりに有名だし、人気だからと。だけど、彼女は言う、「いいじゃなの、みんなが好きなんだから」と。

 

同じように弾いているだけでも、彼女が弾くと心が安らぐ。ピアノって、弾く人で全然違ってくる。

 

 

 

 

 

 

だけど、やっぱり圧巻はリストかな。

それはそれは美しい。

 

 

 

 

何本指があるんだと思わせる激しく速い曲も弾きましたよ。

素晴らしかった。

 

「間違ったっていいじゃない、機械じゃないんだから」と。

 

彼女が亡くなったのはとても残念ですけど、大きな悲しみはありません。人は皆、年老いて死んでいく。誰も例外はいない。あなたもわたしも。

 

人が求めるのは真善美って言いますけど、

彼女は音楽の「美」を聴かせてくれました。

 

「どれだけ騙されてもひどい目にあっても、人を信じることをやめなかった。最期まで恋をして、乙女のような純真な心を忘れなかった」

by 中嶌英雄(写真家)