図書館で借りた尾崎世界観の『祐介』(2016年)を読了しました。売れない貧乏歌手の絶望的な日々が描かれています。汗、悪臭、血、精液、怒り、痛みなどに溢れている。楽しく明るい小説ではない。絶望的な状況で、ありえないような相手(女)と性行為をして、帰宅してきたその彼氏にボコボコに殴られ蹴られ、服なしで、素っ裸で街を彷徨い、体操着を持っていそうな小学生の服を奪い、それをビリビリになりながら着て・・・。ライブハウスでは、客がいないどころか、他のバンドメンバーすらやってこなくて・・・、もう、音楽をやめようと思った、と。
*引用*
色んなことにすこしずつ慣れて、ボヤけていた輪郭がハッキリと見えてくる。思い描いた理想とは程遠いそれに絶望しながら、それでもやめられずにいた。積み重ねた時間で身に付けてしまった知識が怖かった。夢を追いかけていたはずが、気がつくと夢から逃げていた。
*引用終り*
尾崎世界観(1984-、本名:尾崎祐介)のデビュー作。ミュージシャン、シンガーソングライター、作家。2020年の『母影』が芥川賞候補になっている。
私が彼を知ったのはEテレのNHK短歌の司会をやっているから。短歌とか俳句は高齢者のファンが多いけれど、若者層を狙ったのか、老人受けしそうにない彼を抜擢している。
前髪が目に入りそうで、私の好きなルックスとは言えない。
だけど、文章は心に刺さってくる。
最近気に入った作家・千早茜との共作もあるらしい。
そして、歌手のあいみょんと付き合っているという噂もあるらしい。
髪型が似ている?
尾崎世界観は、クリープハイプというグループの歌手らしいんだけど、聴いてもよくわからなかった。歌詞がいいのかもしれない。
↑作詞作曲は、尾崎世界観だけど、歌っているのは、女の子ですね。
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クリープハイプの「本当なんてぶっ飛ばしてよ」(ショートバージョン)はこちら。
うーん、私にはよくわからない。
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歌手だとか、俳優だとか、スポーツ選手だとか、お笑い芸人だとか、作家だとか、そういう世界に憧れている人はいっぱいいる。だけど、成功するのはほんの一握りだ。「成功」とは、その世界で食べて行けるようになること。確かに若い時からサラリーマンや公務員に「憧れる」人は少ないだろう。安全な選択肢として選んでいく。学生時代の長髪を就職前に切ってしまうように、多くの人は、そういう夢を諦めていく。
この辺の是非は難しい。
私の意見は、若くして才能を世間で認められなかったら、それは、趣味の世界にすればいい。さもないと生活は苦しくなる。