昨日、たまたまNHKのFMを聞いたら、ウエストロード・ブルース・バンドの特集のようなものをやっていた。ご存知ですか?ご存じないですよね。1972年に関西で結成されたブルース・バンドです。

まずは、このジャケットが格好良かった。

 

 

 

1972年と言えば、私は13歳だった。思春期の初めです。

60年代の終りと言えば、ベトナム戦争反対、学生運動、ヒッピーブーム。ラブ&ピース。そのとき、私はまだ小学生だった。ビートルズが解散し、映画では「卒業」。サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」も大ヒットした。私はそのあとの世代です。

 

中学生になって、「英語の勉強のために」とラジカセを買ってもらい、ラジオを聞き始めた。当時、ラジオから流れていたのは、アフター・ビートルズの4人、カーペンターズ、ミッシェル・ポルナレフ。かぐや姫、吉田拓郎、チューリップ、井上陽水、沢田研二、そして、アリス、ユーミン、中島みゆき。

 

中学3年生の終りに倉敷から横浜へ引っ越した私は、あちこちの映画館、そして、いろんなコンサートへ行った。フォーク、ロックだけでなく、わけもわからず、ブルースやらソウルやら。当時はロック・フェスティバルという名前で、たくさんのミージシャンが登場するイベントがよくあった。まだヒット曲を出していないバンドたち。でも、彼らの生演奏は格好良かった。日本人による洋楽の黎明期だ。

 

記憶の限りで言えば、高校時代に行ったフェスティバルは、晴海ロックフェスティバル(大晦日夜通し)、後楽園ワールドロックフェスティバル、日比谷野音のロックフェスティバルあたりか。

 

晴海では、内田裕也と妊娠中の悠木千帆(樹木希林)も出てきて、歌って踊っていた。カルメンマキ&OZが圧倒的だった。

後楽園では、ジェフ・ベッグがすごかった。でも、やはり、カルメン・マキの「私は風」が圧倒した。

そして、日比谷野音では、ソー・バッド・レビューというソウルバンドがすごかった。中でも、山岸潤史というギタリストのギターがすごくて、鳥肌がたった。観客全員が金縛りにあっているのがよくわかった。

 

 

 

ソー・バッド・レビューは短期で解散してしまったけど、解散コンサートにも行った。やっぱり、山岸がすごかった。他のメンバーも素敵だったのだけど。私は「かたつむり」という曲が好きだった。(残念ながらwikiにはこのバンド名はないです。画像・映像としては検索できますが)。

 

なぜか、ウエストロード・ブルースバンドのコンサートに行く機会はなかった。今回、改めてどんなメンバーだったのか調べてみてびっくり! 初期メンバーのギターに山岸潤史がいた。彼は三重県の伊勢から浪人するために京都だか大坂へやってきて、100mの陸上選手で坊主刈りだったらしいのだけど、それが誰かのギターを聴いてショックを受けて、プロになったらしい。19歳。

 

やがてウエストロード・ブルースバンドからソー・バッド・レビューへ移った山岸。解散し、ソロアルバムを出した。このアルバムも買ったけれど、レコートよりも生のほうがずっといい。生のライブでこそ、彼のギターは冴える。

 

 

 

その後、いろいろなバンドを経て、山岸はニューオリンズに渡り、現地のバンドのメンバーとしてギターを弾いている。

 

 

私は思うんだけど・・・・

あれだけの素晴らしいギターを弾いていても、あまり有名ではない。もちろん、知っている人は知っているのだけど、知名度が低い。エリック・クラプトンやジェフ・ベックのようなネーム・バリューはない。なぜなのか?

 

やっぱり、オリジナル曲をやらないとだめ。そして、素晴らしく上手くないと。曲にポップさも必要だ。

歌詞も重要。商業的に成功するためには、いくら他人の曲をうまく演奏してもダメ。すごい演奏でも、ヒットするタイプとしないタイプがあるんですよね。

山岸のギターなんか聴くと、魂を揺さぶられるほど感動するんだけど。

 

私が25歳のころ、ニューヨークに一人旅に出たことがあります。そのとき乗ったタクシーの運転手との会話が忘れられない。彼は黒人の老人だったのだけど、昔、レイ・チャールズの運転手をやっていたことがあると。(本当かどうかはわからないけれど)。彼曰く

「すごく歌の上手い日本人がブルースを歌っているのを聴いたことがある。英語も上手だった。だけど、ブルースは黒人のものだ。いくら日本人が上手に歌っても、そこに魂を感じないなんだよね」と。

 

 

山岸の場合は、歌でなく、ギターだ。

そして、この風貌ならば、国籍や人種はわからない。

きっと大丈夫だろう。

 

 

私は彼の生演奏を目の前で見て、聴くことができて、本当に幸せだったと思っています。

 

このyou tubeでは、桑名正博たちと楽しくセッションしています

https://www.youtube.com/watch?v=gSK6EnAbpCE

 

 

 

10代の私は、どうしてあそこまで映画や音楽に魅了されたのだろう?