埼玉県・元巣神社 | 神社に隠れていたモノ

神社に隠れていたモノ

神社の彫刻を見て、何の物語か教えてほしいと思ったことがあり、調べた結果をブログします。タイトル「神社に隠れていたモノ」は覆屋の中にこんな素晴らしい彫刻が隠れていたのかという思いから付けました。

2022年4月6日 埼玉県比企郡吉見町江綱の元巣神社に参拝しました。

 

由緒

元巣神社の創建年代等は不詳ながら、天文元年(1532)藤原重清が勧請したとも、永禄7年(1564)に小田原北条氏に敗れた野本兵庫吉久・山口七兵衛定重・斉藤市右衛門胤善・小倉主水秀陰・中村将監有文・神田左近林重・小高藤左衛門宣興の七名の武士が帰農して当村を開拓する際に勧請したともいいます。祭神は水を司る神として、啼沢女命(本社畝尾都多本神社、伊弉諾命の涙から生じた神)で当社を「命綱の神」とか「命乞いの神」とも呼ぶといいます。江戸期には江綱村の鎮守として祀られ、明治4年村社に列格、明治40年村基稲荷社、万太郎稲荷・浅間社・天神社・諏訪社(頭殿大神社)を合祀しています。社号の「元巣」が「元に戻る」と受け取れることから、戦時中には、出征兵士の無事帰還祈願が盛んとなり、ついには当時の神職は私服憲兵隊に捕らえられ追放されてしまい、昭和20年までは江綱神社と号していたそうです。

 

鳥居

 

拝殿

 

懸魚:鳳凰  中備:獅子

 

中備:親の虎2頭に、子供の虎2頭

唐破風下:唐子あそび---花車  草花を大八車に乗せ、町中を巡る唐子。この彫刻では菊を生けているため、重陽の節句(9月9日の節句)で町中を巡っている場面と思われます。

 

持送にも菊

 

手挟:鳥

 

覆屋の窓は曇りガラスで、内部は確認できません。

 

稲荷社と天神社(境内社)  稲荷社に胴羽目彫刻があります。

 

稲荷社の本殿

 

右面の胴羽目:韓信の股くぐり

韓信が若い頃、ならず者に「お前が強いのなら、その剣で俺を刺してみろ。できないなら、俺の股をくぐれ」と言いがかりをつけられ、屈辱に耐えてその股をくぐったという。もし韓信がならず者を殺してた場合、お尋ね者となり一生を台無しにしていた。本当に叶えたい夢のために、一時の屈辱を耐え忍のんだという故事。その後、韓信は前漢の初代皇帝となる劉邦の元で数々の戦いに勝利し、国士無双と呼ばれるまでの武将になった。

  * 奥側の人の股を韓信がくぐっています。手前の人は猿を背負っている。時々、「韓信の股くぐり」でこの猿を背負った人を見ますが何者なのか?

 

左面の胴羽目:趙雲救幼主

 

趙雲が子供の阿斗を抱いて、馬で逃げている場面(左面の胴羽目の拡大)

 

右面の脇障子は無し

左面の脇障子:黄安仙人?  (左下に亀がいます)
列仙伝という中国の道教にまつわる説話集で、70人の仙人たちの伝記が載せられている。その一人が黄安。黄安は中国前漢の武帝時代の仙人。家にいる時には三尺程ある大亀に乗っている。逸話に、今年で何歳になるかと聞くと、この亀は三千年に一度顔を出し、今まで五度頭を出しているので一萬五千歳と答えたという。長寿、永遠の象徴となっている。

 

コメント:よくよく見れば彫刻が何の物語なのか分かる程度には見れるため掲載します。 縁起の良い名称なのでしょうが、由緒を見に「神職は私服憲兵隊に捕らえられた・・・」ともあり、戦争だと悲惨なこともあるのだなと思ってしまいます。