そんなとりとめもない話をしていたが、店の主人が移動するように促す。。

彼女を連れてきたその女主人も、彼女の人生が今どのあたりなのかよくわかっている。そんな目をしている。

僕は彼女に目配せをするが、とぼけた風に笑顔でお酒をあおっている。飲みすぎる彼女にやきもきするのを楽しむかのように、無邪気な笑顔。

やっと、思い出に触れる、懐かしい笑顔。

中学の時先輩とつきあってたあいつに、先輩から教えてもらってっていうトリックをいたずらっぽく見せられた、あの感じ。

僕は彼女の腕をグッとつかむと、さらに満足した笑顔で、僕に全部預けてくる。

あいかわらず、そんな繊細なやり取りに無関心な女主人。もうどうでもいいというような、全部経験してしまったような、いや、なくっても、もう得ようとする感情すら失ってしまったような、虚無な目。

女主人が彼女の位置を知っているように、僕も彼女も、人の未来がどんなものであるか知らせる、老いた女主人のしわ。

僕らは誰も見ないようにそっと、足音を立てず、現実という獣からそっときずかれないように逃げるように、そこから立ち去って行った。