私もこの島につれてこられたときはびっくりしたわ。だって、時計ばっかりですもの。そんなに時間に追われてるのかってびっくりしたわ。
どれも個性的な時計ばかりだね。
そうよ、持ってる力もみんな違うの。
力?
そう、さっき言った時計は忘れたスケジュールを思い出させるの。
ああ、あれだね。
で、その自動販売機の横にかかった大きな時計はみんなを慌てさせるの。
そういう感じがするってことかい。
ううん、違うの、時計が人をそうさせる力をもってるの。
明確な事実なわけだね?
そうよ。私たちが休んだホテルの玄関には黒縁の古びた丸い時計がかかっていたでしょう。
あああれだね。なんでだろう、すごく印象づよかったよ。
そうよ。みんな時を刻んで動いてる、私たちと一緒。いやでも目に入るわ。
あの時計はどんな力があるんだい?
恋人たちに落ち着きを与えゆっくりした時間の流れをプレゼントしてくれるの。
なんて優しいとけいなんだ。
いいえ、自分が気に入った恋人たちにだけよ。恋愛と一緒。とても不平等よ。
そうか。恋愛と一緒か。じゃあ、僕にはくれないな、この時計は、僕に、安らぎなんて。
いいえ、安心して。私がちゃんと受け取ったわ。
彼女のそのと気の真顔が、本当に僕の心を落ち着かせる。
だから、食堂を探すのなんてゆっくりでいいの、おいしいお店まで、ゆっくり歩きましょう。
そうだな。あらかじめ彼女が心づもりにしていた食堂に、僕が探しながら、ゆっくりたどり着けばいいんだ。
振り返り、あの黒縁の時計にちょっと感謝を送った。