今日は近所に住む、85歳くらいのおばあさんのお話を書きます。

 

私たちが引っ越ししてきて間もない、4年ちょっと前の事です。

私が車でスーパーに行く途中、そのおばあさんが大きな袋を持って歩いておられました。声をかけると、

「私もスーパーへ行くところやねん。」と。

 

歩いて7、8分のところに、こじんまりとしたスーパーがあります。

しかしその日はお孫さんが泊りに来られるので、ご飯をつくってあげるために

大きいスーパーへどうしても行きたいとのことでした。

 

 

「おじいさんはもう免許を返上したから、車がないねん。」

聞けばご主人と二人暮らしで、子供さんお二人は遠方にお住まいだとか。

 

季節は8月で30度を超えています。

行きたいスーパーまでは、老人の足では歩いて片道30分はかかるはずです。

 

 

「一緒に行きましょ!」ニコニコ

と、車に乗ってもらい、帰りも家までお送りすることができました。

それからはちょくちょく一緒に買い物に行くことがありました。

 

 

畑仕事にほぼ毎日行かれていて、元気いっぱいで飾り気のない、

笑顔がかわいいおばあちゃんでした。

我が家の前を通って、畑に行っておられましたが、去年の春ぐらいから急に姿を見なくなりました。

 

 

先月、久しぶりにお見かけしましたが、

あまりの変わりように、最初はどなたかわかりませんでした。

 

真っ白な髪の毛は、まるで男の人のように短くカットされていました。

元々は花柄の服がお好きな方でしたが、

上下グレーのジャージを着ておられました。

 

目はどこかうつろです。

 

 「おばあちゃん、こんにちは!お久しぶりです!」

私が声をかけると、ジーっと私の顔を見つめた後、かすかにニッコリ笑ってくれました。

恐らく私のことがわからないのでしょう…。

 

 

それからは、四六時中、ご自分の家の前でジーっと立っておられることがわかりました。

 

 日曜日の朝7時前に私がパン屋さんへ行く時も、義母がデーサービスへの行き帰りの時も、おばあさんはご自宅の玄関の外に立って、ボーっと外を眺めています。

 

 

先日、1階のリビングにいる義母が、2階にいる私を大きな声で呼びました。

「○○さんとこのおばあさんが家の前を一人で通り過ぎたけど、徘徊と違うんか!?」

 

 


あわてて私は家の中から外を見ると、おばあさんがすぐに自宅に引き返すのが見えました。

その日から毎日、我が家の前を行ったり来たりされています。

 

 

幸い家の前は細い道路で、車はほとんど通りません。

 

それから看護師をされている娘さんが帰っておられるのを見かけ、私も義母もホッとしました。

 

今朝、今年88歳になられたご主人様とばったり会いました。

手には女性用の紙おむつを持っておられます。

 

 

挨拶だけで、他に何も言葉が出ませんでした。

 

 

何とも言えない、辛いような寂しいような気持ちになりました。