母の死後、父は糖尿病が悪化し、合併症で腎臓や目を悪くしました。

一人暮らしが心配になってきた実家の父をどうするか…?

 

私には弟と妹がいます。全員が実家から遠く離れた別々の土地で、家庭を築いています。

 

 

話し合いの時、まず弟嫁がこう言いました。


「○○さん(弟の名前)のお父さんであって、私はお父さんとは思っていませんから!」


ハッキリと一切の関わりを断る姿勢でした。

大学卒業までアメリカで育ったことが影響しているのかどうかわかりませんが、

彼女はハッキリ自分の意見を主張できます。

 

 

その後、妹が(軽率にも)父にその事を話してしまいました。

すると父はひと言……、

 

「わかった。」

顔色一つ変えませんでした。

その返事だけで、愚痴や意見は何も言いませんでした。

 

 

当時妹は妊娠中でした。いろいろ考えた末に、私が父を引きとる決心をしました。


その頃、私は夫の駐在(1回目)に伴い中国におりましたが、夫より一足早く帰国していました。そして夫の両親と息子と生活していました。


夫の祖父の介護用に建てた離れが空いているので、そこを父の部屋にしようと計画しました。幸いにも夫の両親が

「そうしてあげなさい」と言ってくれたのです。

 

 

ところが

「ご主人のご両親のところで一緒に住むなんて、それは気兼ねな話だ。」


「地元で友達と会える所で生活させてあげて!」


と、本人である父の考えを聞く前に、父の昔からのお友達からお電話をいただきました。

このご意見はもっともです。今ならわかります。父も悩んではいましたが、同じ考えでした。

 

 

結局、実家の近くにあるケアハウスで生活してもらうように私が手続きしました。

ケアハウスとは、まだ介護は必要ないけれど、一人暮らしは心配な高齢者専用の施設です。

 


写真は部屋の一例です。各部屋にミニキッチンとトイレ洗面所があります。お風呂は共同です。


希望者には食堂で食事の提供もあります。

お掃除や買い物等、家事も頼めます。

(食事、家事ともに有料ですが、格安です)


看護師さんが常駐されており、簡単な健康チェックもあります。

お花見などのリクレーションもありました。

 

 

入所後の父の心が心配でしたが、予想に反した言葉が返ってきました。

「ケアハウスのスタッフはいい人ばかりで、楽しいよ。」

「ご飯が美味しい!午後の喫茶タイムでは、コーヒーを入れるボランティアもしていて、お父さんは人気者なんだよ!」

 

                   こんなイメージです

 

前もって申請をしておけば、外泊もOKです。

父には、お友達と5人ぐらいで車で観光地に出かけるという楽しみがありました。

まだ元気な間は時々家に帰って、お友達と麻雀をすることもありました。

「友達と楽しく過ごせるから、お父さんは幸せだ。」と言ってくれたのには涙が出ました。

 

 

子供が三人もいながら、施設に父を預けたという苦しい気持ちが私にあったからです。

 

 

父は夜中に目が覚めてしまい、寝られなくなることがありました。

一般的には寂しがるところです。けれども父はこう言いました。

「そんな時にはラジオを聴いているよ。ためになるお話が聞けたり、いい音楽を楽しんだりして、得をした気持ちになれるからね。」

 

なんてありがたい考え方でしょう!

これは、心配している私の心を思っての発言だったのでしょうか?

いや…、父は昔から物事をポジティブに考える人で、愚痴や批判がきわめて少ない人でした。

 

ケアハウスで約8年間過ごし、父は亡くなりました。

 

 

今から思えば弟嫁がハッキリ考えを言ってくれたのも良かったなぁ~と思います。

無理して介護を引き受けて、父も弟嫁も不幸になるよりは、最初からハッキリ考えを言ってくれて正解だったと思います。

 

私には何も言いませんでしたが、父は苦しい事もあったかと思います。

しかし、基本的に何事もポジティブに考えてくれる人でしたので、私は救われました。

「お父さん、ありがとうございました!」