穏やかで静かな舅でした。

 

 

前頭葉側頭葉型認知症発症後に

全く別人になってしまうなんて!

 

 

認知症の種類について、詳しいことは以下をご覧ください。

https://www.minnanokaigo.com/guide/dementia/type/

 

 

舅は、気持ちを抑えられない状態は早くから出ましたが、記憶力は衰えませんでした。

また、トイレの失敗は発症後 5、6年たってからのことです。

 

ある日、間に合わず、トイレの前でお漏らしをしてしまいました。

初めてのことです。しかも息子の嫁の目の前で……。

 

 

「おじいちゃんを恥ずかしい気持ちにさせたらかわいそうや!」

 

私は瞬時にそう思い、舅にこう言いました。

 

「おじいちゃん、誰にでもそんなことはあるから、大丈夫やで!」

「すぐにきれいに拭くから心配せんといてね。」

「風邪ひいたらあかんから、下着を早く替えようね。」

 

私は舅を気遣いながら顔を見ました。すると、ビックリです!

 

全く恥ずかしがる様子はなく、ただボーっと立っています。

 

私は拍子抜けしましたが、舅が恥ずかしがったり落ち込んだりしていないので、逆に安心しました。

 

前頭葉側頭葉型認知症の症状の一つとして

「周囲の人に配慮できない」

とありますが、本当に人の気持ちを考えることができなくなりました。

以前はその反対の優しい舅でしたのに…。

 

しかし羞恥心が無くなったので、

そういう意味では、こちらも気にせずお世話ができるとも考えられます。

 

また、幸か不幸か、舅は

自分が認知症だという自覚は全くありません。

トイレの失敗が多くなり、ある日私は、夜は尿瓶(しびん)を使うようにと頼みました。

舅の返事に思わず苦笑いしてしまいました。

 

「年寄扱いせんといてくれ!!」

 

 

その尿瓶は新品のまま、クローゼットに入っています。

「将来使うから、置いといてくれ。何なら中国(単身赴任先)で夜中に使おうかな?」と主人が真剣に言いました(笑)

 

舅の状態が悪くなってからは、知人に

「お義父さんどうされておられますか?」ときかれても、

「はい、ちょっと調子がもう一つですが、なんとかやっております。」とお茶を濁しました。

 

発症するまでの穏やかな舅のイメージを崩したくありませんでした。

お世話が苦しくて、憎たらしくもなる舅ですが、心の底では「愛情」がありました。

 

 

 

誰にも見られたくありませんでした。あの姿を……。