翌年は
40代のベテラン先生2人に、わたし、初任ちゃんの4人態勢だった。
初任ちゃんは本採用出たので、初任者指導がつくし、元々講師の経験もあったのでそれなりに教えることはあったけれど、前年度のような苦労はなかった。
しかし!副主任がご懐妊。12月に産休に入ることになった。
12月からの担任が見つからない
先生が次々に辞めていく中で、療養や産休でお休みに入る先生も多い。そのお休みのスペースに入るのが”臨時的任用”である”講師”なのだが・・・
この講師も足りない!
ただでさえ担任ができる講師不足の中で、
12月という極めて中途半端な時期に担任になれる人材は極めて少ない
本来であれば、教育事務所が人材の手配を行っていくのだが、彼らの努力のみでは追いつかず、”該当の学校の管理職が直々に探している”というのが近年の実態であった。職員会議でも度々、「12月から担任をして下さる先生がいたらお知らせください」のアナウンスが入っていた。
そこで現れたのが次なる新人ボーイK氏である
”12月から担任不在”の危機からなんとか逃れることができた!
安心感に包まれたのもつかの間!彼には担任経験はなかった!
学年構成をおさらい
もちろん彼に初任者指導はつかない。ここで整理しておきたいのがこの時の学年構成
初任ちゃん
わたし
副主任→産休→代わりに新人君
主任→お子さんの受験期で大忙し
とても頼りになる主任さんであったが、ご家族もいるため夜遅くまで残ることはできない。彼女がいる時間はもちろん新人君の教育もして下さっていたが、いかんせん時間は限られていた。
授業準備はもちろんのこと、出席簿や会計、成績処理なども未知の世界だった。
そのほとんどを叩きこむのは自分しかいなかった・・・
この日はわりと早めに仕事が終わった。
彼の仕事の状況を確認しながら帰る支度を始めると・・・
”せんせい!”
”明日図工でのこぎり使うのですが、使い方がわかりません!”
めんたま飛び出たわーーー
だがしかし、ごちゃごちゃ言ってる場合じゃない!
絵具や工作でさえ初めてのときは下準備が大事。
それなのにのこぎりで事前準備がないのは危険すぎる
図工室のカギを持って、2人で隣の校舎の図工室へ向かう。
厳重に鍵のかかったのこぎりケースを取り出す夜8時![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
2人の若い男女がのこぎりをもって図工室で真剣にレクチャーが始まる![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
ん?誰か笑った?!アタイは本気よ![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
20時から始まるのこぎり指導
はじめてのノコギリ
当時担当は3年生。おうちで使ったことある子もいるが、学校で触れるのは初めてのことである。
まずは子供たちに使い方が分かるような掲示物を確認。
授業中は必ず振り替えられるように見やすい場所に置く。
のこぎりの出し方、子どもたちへの渡し方
持ち方、置き方、そして使い方。
しゃべりながらやらない、振り回さない、よそ見をしないなどの基本的な安全確認も全部一緒に確認した。
スペースの取り方のレクチャー
そしてなんといってもクラスは40人。
使い方をマスターしても、スペースの取り方を間違えたら人を傷つけてしまうこともある。どのような配置で40人の作業スペースをいくのかも一緒に考えた。
作業時間のレクチャー
作業時間が長すぎると、どうしても集中力が低下してしまう。そうすると怪我の原因に繋がってしまう。かといって短すぎれば作業が終わらないということもある。先生の教育経験と、子供の実態を照らし合わせながら作業時間も一緒に決めた。
その他一通り伝え、職員室に戻ったのは21時過ぎ。とっくにみんな帰っていたので、2人で学校を閉めて帰った。
”のこぎりは作品の出来よりも、まずは安全第一で!”
”当日何かあったら声かけてね”
翌日隣のクラスをのぞくと・・・
あれ
・・・片手でのこぎりやってる子がいる
スペースの取り方狭くてぶつかりそうな子いる
おしゃべりしてる子もいる
先生後ろで腕くんで仁王立ち
・・・あかん!!!
自分のクラスを自習にして隣のクラスへ駆け込む。
✅片方の手を添えて使うこと
✅スペースをしっかり確保すること
✅おしゃべりはせずに作業に集中すること
✅先生は子供の近くで安全確認や指導していくこと
を、確認した。
おせっかいオバサンだなーとは思ったけれど、子供たちの安全第一。
指導は済んだが、しばらく時間をかけて見守った。
放課後
子どもたちを送って職員室に入る。
”先生!!!!今日は本当にありがとうございました![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
![笑い泣き](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/050.png)
”
あんまりく比べてはいけないが、前年度のM氏とはこういうところが違った。
心からの、全身全霊からのありがとうだった。
世話は数倍焼けるけれど、こっちの誠意がちゃんと届くと本当にやりがいがあるなと感じる。
ふりかえるとエネルギーの循環がちゃんとできていれば疲れはするけれど、身体ってちゃんと機能していくものなんだなと思う。
・・・まあその後も、放課後指導は続きあたいはついに深刻なクマが出現していたがw
ある日の悩み
とある放課後K氏が落ち込んでいた。どうしたのかを尋ねると、
”今日体育で跳び箱だったんですけど、跳び箱出して終わっちゃいました
”
・・・これは低学年あるあるなんだよね!
大人になると、”跳び箱を出す”なんて簡単だよね。でも低学年の子たちにとっては
✅跳び箱重い
✅分担して運ぶ
✅計画して運ぶ
ってことが、自分たちだけではできない。そしてここが抜けると準備の段階で怪我にも繋がる。だから必要なことは
✅安全な跳び箱の運び方の指導
✅跳び箱を出すグループとマットを出すグループを分ける
✅どのグループがどの場所に出すか確認する
低学年のとびばこ指導時間配分
こうして考えてみると、低学年において準備にどれだけ時間がかかるのかご想像いただけるだろうか?きちんとした指導と時間配分をしなければ
跳び箱を出す→跳び箱をしまう
この2ステップで45分終わってしまうという彼のような事態もあり得なくもない。
授業の流れは
✅準備体操
✅跳び箱準備の仕方の指導
✅跳び箱準備
✅跳び箱のやり方の指導
✅跳び箱の実践
✅ふりかえりタイム
✅整理体操
✅跳び箱をしまう
このステップをあの小さな体の子どもたちと45分の授業でこなすというのは実は職人芸だったりするんだぜ!
この流れについてレクチャーしたが、
百聞は一見に如かず!!!
2クラス合同体育をすることにした
まさかの80人跳び箱
・・・安心してください。片方のクラスが実践している時、もう一方のクラスは”上手な友達を見つけよう!”と題しステージで見学。
一緒に準備体操をし、準備の仕方を確認。
準備はうちのクラスがやるから、分担の仕方やてきぱき取り組む姿をよく見ていてね!と伝える。そして後片付けはK氏のクラスが担当する。
うちのクラスの子たちは日々の連携プレーをお披露目できて嬉しそう
そしてK氏のクラスも見て学べて一石二鳥!
いつにない交流のおかげでお互いのクラスの意識も高まり、とてもよい時間になった。
その時々は精一杯だったけれど
なんだかんだ振り返ると、いい思い出だったな!
そしてこうやって自分がだれかにしてあげたことって、自分自身が先輩上司たちから学ばせてもらったことばかり。
藤井風さんの曲「帰ろう」の曲に
”与えられるものこそ 与えられたもの”という歌詞があって、まさにそれだと思った。
K氏は採用難関といわれる中学体育で採用されて活躍していると聞いた。
自分は教育現場から離れてしまったけれど、自分の伝えた教育が今もどこかでわずかにでも発揮されているのなら、それはとてもうれしいことだなと思う。
改めて、自分が今できることを精一杯やっていこうと思う。