前回の続き

 

 

毎回くどいですが

メジャーリリース4作目の

『エミリー』は僕にとって

かけがえのない特別な作品集です。

 

表題作の『エミリー』は

何度書いても

上手く書けない物語でした。

 

でも突然、書けるようになった。

 

それは、

『ミシン』以来、刊行ごとに

やってきたサイン会のおかげです。

 

最初は大学生くらいが

多かったのですが

徐々に高校、中学生も

増え始め、

そんな読者と接しているうち

自然と

思春期の衝動を自分自身の

こととして表せるようになった。

 

だから自分で書いたというよか

読者に書かせてもらった感じ。

 

従い、特別な作品なのです。

 

いい作品かどうかは別にして。

 

今でも

『エミリー』が一番好き

といってくれる人達がいて、

中には

『エミリー』を読んで

エミリーテンプルキュートに

行った。

DCブランドなんて初めてだったから

その高額にビックリしたけど

お金を貯めて買いました

とか

お母さんに無理をいって

買って貰いましたとか

いうお手紙を貰うと

涙がでます。

 

 

大人になってしまうと

貧乏でも

自力でエミキュの

お洋服の一着くらいは

買えちゃうじゃないですか。

 

子供の時代って

値札を見て

愕然としてしまう。

どうやったって買えないと

絶望してしまう。

それでも、

靴下一足でもいいから

欲しくて

買わないと自分が前に進めない

気がして

無理をする。

 

それって生きていく

自分の核になると思うのですよね。

大袈裟にいえば

最初の

世界への戦いの記憶というか。

 

初めて買っCDだとか

初めて映画館で観た

映画だとか

そういうのをテーマにすれば

もっとポピュラリティを

得られるのでしょうが、

僕の場合は

お洋服でしか表現出来ません。

 

更にいえばロリ服でしか。

 

この歳になっても

MILK本店の扉を開く時、

ドキドキしますし、

ラフォーレのJane Marpleに

寄った日は寝るまで

ニヤニヤしています。

 

自分の小説って

そういう気持ちを共有する

以上のものである必要はなく

それ以下である必要もない

と考えています。

 

その最終形が

やがて

『ハピネス』となるのですが

またそれは後日、

書きましょう。

 

ところで

前回、『ツインズ』で

誰も死なせないことを

誓った――と告白しましたが

併録の『コルセット』では

自殺の話が出てきて、人も死にます。

 

でもこれ、

『ツインズ』の前に書いたんですよ。

なので赦してください。

 

(多分、続く)