前回の続き

 

『鱗姫』の次、

半年もあけず出したのが

『カフェー小品集』という

掌編を編んだもので

何故にこんな

ハイペースで出せたのかと

いえば

この作品集に入っている

作品は

『それいぬ』を連載していた時、

『カフェ』という雑誌に

発表したものが殆どで

それだけでは

紙幅が足りないので

何本か書き足した――

経緯があるからで

初出を見れば

一番最初の、

『琥珀の中のバッハ』は

1998年2月号に載っています。

 

ということは

1997年に書いていて

『鱗姫』の着手より古く、

もしこれを

小説集というのなら

僕の最も早い小説ということに

なるようです。

 

『それいぬ』を読んだ

雑誌(ミニコミ)の人から

カフェにまつわる文章を連載で

と頼まれ

引き受けたはいいものの

毎回、10枚から15枚とのこと。

そのボリュームで

エッセイを成立させるのは

困難なので

仕方なく、物語ふうにして

誤魔化したのが実情でした。

 

フリーペーパーで

書いていたものを読んで

ミニコミの人から寄稿をといわれ

それが商業出版の3作目として

リリースされる。

 

ガチガチのインディペンデント

上がりですね。

 

 

インディペンデントと

商業出版では

いろんなことが違います。

全く別の世界といっても

いいくらいです。

でも

インディペンデントから

始めることは

無駄な作業ではないと思います。

 

僕の場合、

インディペンデントの間に

書いていたものがあったので

サイクルの早い商業出版に

身を移しても

ストックが充分にあり

付け焼き刃で不完全なものを

発表する事態に

陥ることがありませんでした。

 

ついでに言うと

2001年、

国書刊行会から

文春文庫に再録された

『それいぬ』は

『ミシン』の刊行を

受けてのものではなく

 

丁度、文春文庫が

自社のラインナップが

どう見ても年寄りくさい

若者向けのラインを作りたい

でも持ち玉がないので

収録候補を探していた。

 

そして

『それいぬ』を欲しいと思った。

 

リリースが『ミシン』と

重なったのは

偶然でした。

 

文庫では

2話と1話の順番が

逆になっています。

商業出版なので

最初にキャッチーなエッセイ

を持ってきたいというので

従いました。

 

1話は菜の花畑の

エッセイであるべきなのですが

国書版はそうなっているし

我慢しようと思いました。

 

 

『カフェー小品集』を

出した時点でも尚、

僕は自分が小説家になる

とは思っていませんでした。

あくまでエッセイを主体に

やっていく所存でした。

小説の書き方なんて

解りませんし

得意ではない。

でも、

小説の依頼ばかりくるように

なり、なし崩し

小説家の肩書を

背負ったような形です。

 

何を謙遜!

とよく言われますが

本当に小説の書き方が

未だによく解らないのです。

 

登場人物が

あっちにいったり

こっちにいったりする訳でなく

アクションシーンもない

謎解きじみたものも

特にない。

 

この

『カフェー小品集』のように

エッセイの延長線にしか

僕は自分の小説は

ないのではないかと思っています。

 

『源氏物語』より『枕草子』が

断然好きですし。

 

『枕草子』――

単に、これが嫌い、これは好き・・

述べているだけじゃないですか。

 

きっと宮中で

暇にあかし

冬は火桶で暖をとりつつ

他の女官の悪口を言い合って

ケラケラ笑っている

彼女の仲間に

僕は入れます。

 

僕にとって

エッセイストは、

雑貨屋さん、お花屋さん

などと

似たイメージを持つお仕事です。

 

オリーブ少女世代ですので

憧れの職業が

僕は、雑貨屋さんやお花屋さん。

 

小説家は

オリーブ少女の憧れでは

ないのですよ。

 

(多分、続く)