東京に行く用があってので

先日「お姫様と名建築」を大プッシュして

もらっている都内の書店を

少しまわらせて頂きました。

 

●丸善丸の内本店

 

ここは土地柄、僕の本なぞ

正当に扱って貰えなさそうな本屋さん

なのですが、書店員として

デビュー以来、

嶽本野ばら特攻隊長として

贔屓し倒してくれておる

Tが赴任していますので

今回も本丸として機能。

 

 

 

オンラインイベントもここの

仕切りでやらせて頂きました。

 

サイン本も追加で作ってきましたので

まだ多少、残っておるかもしれません。

 

あとここでは

「お姫様と名建築」関連本10冊という

企画もやってまして

僕がオススメ本として10冊

コメントを書き下ろした小冊子が

無料で配られています。

 

●ジュンク堂池袋本店

 

「純潔」の時にサイン会をした

本屋さん。

 

ここにも斬り込み部隊が

いますので、

「お姫様と名建築」大フェアを

実施してくれています。

「フェア、6月一杯やります!」

「えー、もう終わるではないか」

と言い、展示パネルに勝手にサイン。

「6月いっぱいで終わるというのかい?」

「ははぁ。7月中、やらせて頂きまする」

暴君と化してきました。

 

 

 

●三省堂書店池袋本店

 

同行した出版社の人が

「この近くにもう一軒、

盛大にやらかしてくれている

書店がありまして」

と言うので偵察。

美術書のコーナーに

盛大なポップ展開。

やはりパネルにサインしたかったんですが

担当者さんが不在だったので

写真だけ撮って帰りました。

 

 

 

三省堂さま、有難うございます。

 

実は、僕はそんなに売れるタイプの

作家ではない——といおうか

読者層が偏りますので

(それは自分自身に問題が多分ある)

映画化とか受賞とか

キャチーな話題がないと

なかなかこういう書店での展開は

望むべくもないのですが、

たまに、狂信的な書店員がおりまして

無理矢理上司を捩じ伏せ

こうして独自フェアをやってくれます。

 

デビューの「ミシン」が

そもそもそういう店員さん達の

尽力で売れたのですね。

(Tなどはその主犯の1人である)

ですからいつでも根本は

インディペンデントです。

 

僕がデビューした頃を思い出すと

東京の書店も随分となくなりました。

まだどこかで書店員

あるいは本と関わる仕事を

されている方もおられる筈ですが、

基本的に、その本屋さんが

なくなると、僕達作家は、

援護してくれていた書店員さんと

縁が切れてしまいます。

 

顔を合わせることの

なくなってしまった沢山の方々、

ですからこの場を借りて

今更ですが有難うございます。

 

そして何か僕で役立つことがあれば

今も、構いやしません、

臆さずにお声をお掛けください。

もう田舎の小さな本屋にいるので……

でも全く構わないのです。

僕はインディペンデントですし、

評判の本を更に100冊売る努力より

まるで売れない本を1冊どうにか

売ることの大変さを解っておる

つもりです。

 

1枚でも売ろうとスナックまわり

酔客の前でカラオケを歌う

演歌歌手のようなものであれば

いいと思っていますし、

そういうことが嫌いではありません。

 

だったらブログをもっと書け!

なのですが、

それとこれとは話が別です。

 

●十誡

 

少し前から、

銀座のブックカフェ&バー

十誡でもいろいろ、フェアを

やって頂いています。

https://www.zikkai.com

 

今回も7月中、

「お姫様と名建築」コラボ企画

をして貰ったのですが、

僕が京都にいるもので

一度も足を運んだことがありませんでした。

 

ですので書店まわりの次の日

行きました。

 

こういうコンセプトの

お店はアンダーグラウンドに

なりがちなのですが

思っていた以上に清潔な雰囲気で

驚きました。

 

今もまだあるのか不明ですが

かつて唐十郎やら金子國義がたむろした

ナジャという銀座のバーも

行ってみるとソリッドなお店で

意外だった記憶があります。

それの流れを汲む感じなのかもしれません。

 

 

 

当然、沢山の本がありまして

 

座った横の本棚に

澁澤龍彦の「城=カステロフィリア」が

ありました。

「お姫様と名建築」を書くにあたり

僕はこの本の存在を忘れていたので

パラパラ拾い読みすれば

澁澤先生が刑部明神の縁を探訪、

姫路城に行った時の話が載っています。

 

僕も「お姫様と名建築」では

千姫と姫路城——として姫路城を

取り上げました。

このお城は刑部明神と同一視される

富姫の由緒があり

その富姫と、妹、猪苗代城に住むと

いわれる亀姫が出てくる「天守物語」の

名作を泉鏡花が書いているからです。

 

澁澤先生は大の鏡花ファン。

 

ですが、この本で澁澤先生は、

 

姫路城を訪ねたが、私はここが

泉鏡花「天守物語」の舞台であることを

すっかり何故か忘れていて

こうして今、原稿を書きながらようやく

それを思い出したのである……

 

と、記しておられました。

 

し、澁澤さん……。

僕も「城=カステロフィリア」のこと

全く忘れていたので

文句言えないですが……。

 

 

こうして私は、銀座のバーを出た後、

和光の近くの教文館に行き

孔雀の燭台を買って帰ったのである。

 

 

孔雀という鳥はご承知の通りあの極彩色の

羽根のイメージが古来より人々に不思議な

想像を与えたのだろう、密教などでは

孔雀明王などとして神格の対象となるが

キリスト教においても復活のシンボルと

見做されることがあるらしい。

そういえば以前私は琳派の展覧会で光琳の羽根を広げた孔雀の金屏風を見たことがあるのだが、番いのメスは羽根を閉じていた。

琳派は大胆な構図の観念に先んじた点を言及される機会が多いが、この絵にあるよう博物学的な目的も画家達は忘れなかったのではなかろうかと私は思っている。

 

(澁澤龍彦——「ドードー、孔雀、極楽鳥に就いて」

←捏造、僕が書きました)

 

T.Nova et 2021.7.12