みなみ会館がミニシアターを救えと
賛同する関西の劇場への
支援金を集めるTシャツを作り
反響を得るなど
映画に携わる
（主に作る方でなく観せる）
若い人達のここ数年の行動力と
情熱には頭がさがる思いです。
僕等はたまに、
映画の試写に誘われ
コメントを書いたりするのですが
今日も、配給会社から
気に入ったらコメントをと
メールが入っていました。
試写会は無理だから
オンライン試写
なる方法をとるという。
スゲーな、テクノロジー。
SHOWROOMみたいに
アバター作って定時に集まるんか？
思ったら
そうではなく
引き受けたら
アドレスとパスワードが
送られてきました。
そりゃそうですね。
公開時期未定でも
公開準備はいつも通り
しなければならない。
頑張って欲しいと
素直に思います。
前科２犯の立場で
いわせていただけば
一件の罪状に就き
留置期間最大10日間
起訴を判断する材料が足りないと
判断された場合、プラス
また最大10日間延長可
という司法の取り決めは
実に理に適っているのです。
少しでも
罪を軽く見積もらせよう
やってないとシラを切り通そう
勾留された者は考え
反抗したり虚偽をいったり
取り調べで
いろいろ抵抗するのですが
狭い留置施設の中で
1５日間くらい経つと、
自分で吐いた嘘なのに
急に、どういう嘘を
いっていたのか、ディテールが
まるで
解らなくなってしまうのです。
なので、
そこに山田と田中がおりまして——
いっていたのが
そこに田中と磯崎がおりまして——
再度、確かめられると、
異なる供述をする
凡ミスをおかしてしまう。
調べる側は、
お前、
最初の話と違うぞ——ツッコンでくる。
二度、入っておりますからね、
今度は大丈夫と思っていたのですが、
やはり15日めくらいで
頭が真っ白な状態に、なるのです。
何日めかすら解らない。
只々、助かりたい、
ラクになりたい……
としか思わなくなる。
留置とステイホームを
一緒にしては
申し訳がないですが、
動きが取れぬ状況下での
人の集中可能な時間のリミットは
ほぼ決まっているみたいです。
このヤマを超えてしまうと
今度は状況に
適応やれるようになる。
適応されちゃ、たまらないから、
20日以上の勾留はやらないのです。
ムダですからね。
まだ
シルク生地で
Tシャツを作ろうと
思ってはいるのですよ。
でもよく考えたら
手に入らないのですよ、
シルクとかシルク混紡の生地が
今、なかなか……。
ユザワヤさんとか行列が出来ています。
ですので、ネックレスを作りました。
前から木の十字架に
お腹のあたりまでくるチェーンの
ネックレス（本当の司教がつけるような）
をこしらえようと思っていたのですが、
イメージ通りに出来なくて……。
結果、試行錯誤、
異なるチェーンを３つ丸カンでつなぎ
まぁ、そこそこイメージに近いものが
出来ました。
材料費、1000円以内です。
貴方は庶民ですからね、
タダで新作の面白い映画を
送って貰い
それで暇を潰したり
やれないでしょうし、
ネックレスを作ればいいですよ。
チェーンそのものを買うような
ものぐさをせず、
異なる丸カンを数種類買って
一個一個、ヤットコで開いてつないで
締めて、を繰り返すんです。
やっとこで
自在に丸カンを細工出来るように
なるにはスゴく時間が掛かるんです。
僕も、もう一個、
ネックレスを作ろうかなと
思っています。
やっとこ——
英語にすればペンチ（pliers）
なんですが、
日本でペンチといえば
ラジオペンチ、
プライヤ——をイメージしてしまいます。
だから、アクセサリー作りの必需品
丸やっとこや平やっとこは、
やっぱり
YATTOKO——なんですよ。
ほら、小さな声で
やっとこ——口にしてごらん。
マヌケな音に脱力してしまうから。
そこに田中と磯崎がおりまして——
否、そこに、
磯崎と山田……だったかなぁ——
で、そいつらは、
何を持っていたんだっけ？
取り調べの刑事は、
前に取った調書に
眼をやりつつ
罠に掛かったといわんばかりの
不敵な笑みを口元に浮べ、
僕に訊ねるのでした。
やっとこ——です。
やっとこ、だな。
観念したように僕は、頷くのでした。
（やっとこ殺人事件・完）
2020.04.22 嶽本野ばら
犯人が持っていたYATTOKOで作られたロングチェーンクロス（ノバラ座）白いシャツ（クリスヴァンアッシュ）