そう、昨日の誕生日のイベントで

話したのだけどね、

若い頃は誕生日が来るのが

余り好きではなかったんだよ。

 

 

どうしたって

その一年間を振り返ってしまう

でしょう。

 

思い描いていたものに、

目標に

まるで近付けてはいない

一体、この一年、

何をやっていたんだって——

歳だけとって情けない——

とね、

自分に腹をいつもたてて

いたのですよ。

 

大人になってからもねぇ、

こういう仕事を

始めてからも、

歳を重ねる

焦燥こそ持たなくなった

けど、

沢山の人に嫉妬

していましたよ。

 

活動開始時期も

やっていることも

まるで

違うというのにね、

同じ編集プロダクションに

在籍していたものだから、

ミニコミ出身でライターになり

自身の特性を活かし

放送作家の仕事などが入り

どんどん

ステップアップ

していく吉村智樹をみながら

自分は情報誌の

誰でも出来る店取材の

仕事しかやれていないと

惨めな気持ちになっていた。

 

ありていにいえば

嫉妬していましたよ。

 

吉村さんだけじゃなく

いろんな人に

気後れし、嫉妬していた。

 

こんなことを

いわれると

 

さぞかし驚かれるでしょう。

当時から、周囲にいっぱい

女の子に群がられ

可愛いだとかカッコいいだとか

褒めそやされていて

こちらの方こそ

羨ましく思っていましたよ——

呆れられてしまうかも

しれません。

 

いまだ、

正当に自分は認められちゃ

いないと思う気持ちはあります。

 

だけども、

これだけ生きてしまうと

嫉妬する相手が見当たらなく

なってしまいました。

 

目標到達出来ないことは

多々あり

苛立たしさや嫌悪は

朝から晩まで感じ、

どうしてこんな簡単なことを

理解しないのか?

怒りもしますし、

貧しい暮らしを

恥ずかしく思うことも

あります。

 

それでも

不思議と

もう、

誰にも嫉妬はしないのです。

あんなふうに

自分もなれたらとは思わない。

 

妥協してはならない

箇所はせずに

やってきたので

誰のことも

羨ましくはないのです。

 

自分を誇るつもりも

もはやありません。

可愛いが好きなだけの

頭のおかしな爺さんです。

でもそこそこ、威張ります。

こんなんだけど

生き延びているぞ、

スゴいだろうと、威張ります。

 

50年以上模索してきて

解ったのは、

髪やお洋服の手入れ以上に

眉毛のお手入れが大事だと

いうことです。

 

週に一度くらいの

割合で、眉毛を

深夜にカットします。

切りすぎ、よく

ヤクザ映画の梅宮辰夫みたいに

なります。

でも描けば問題ありません。

 

ずっとペンシル派です。

濃い色と薄い色、

二色で仕上げるといいみたいです。

 

嫉妬するのは、

悪いことじゃありません。

伝えたいのは、

嫉妬しなくていい

——その苦しさが

薄らいでしまうことも

半分以上生きてしまえば

あるという事実です。

 

無論、リア王の如く

爺いになろうと

それに煩悶する人生も

ありますでしょう。

リア王は何故、苦悩から

逃れられなかったのか?

 

眉毛の手入れを

しなかったからですよ。

 

日に拠って、或いは

シーズンに拠って

眉毛の形の正解は変わります。

完全なる眉毛などないのです。

 

だから、

描く必要があるのです。

 

ブライス、眉毛ない。プーリッツ、眉毛ある

 

嶽本野ばら 2020.01.28(52歳)