今年は秋の頃から急に予定がどしどしと

入り始め、あっという間に年末、クリスマス。

 

原稿を二つ立て続けに完成させ

それを編集者宛に送ると

急に——失踪したくなった。

 

これはよくある現象で

長編などを仕上げると

(俗な言葉でいえば燃え尽き症候群みたいなものか?)

いなくなってしまいたいという願望に支配されるのです。

 

死んでしまいたい——という感覚ではなく

消滅してしまいたい、と思うのです。

 

でも29日には

エミキュでコラボ発売イベントがあるし

そこまではこの世界にいなくてはいけない

というか、

その時にそんな気持ちでいる訳にはいかないので

持ち直そうと、画策しておりました。

 

君からの手紙の内容はいつも重いねぇ。

貴方の新刊が出るまでは

何とか生きようと思うだとか

次のイベントだけが私の生きる糧ですだとか。

 

——ということは、

僕が失踪してしまうと

君が、死ぬかもしれない。

それでは申し訳ないので、存在し続けます。

 

こんな重荷や煩わしさを与えてしまって

すみません——君は偶に謝罪するけれども、

あの、ここだけの話——

僕は只の人間ではありませんので

まるで大丈夫です。

広大なゴミ置場のようなものだと思って下さい。

 

不運、嫉妬、憎悪……あらゆる負の情動を

託されたとて、ビクともしません。

まだまだ廃棄スペースは存分にあります。

 

それに拠って僕自身が穢くなることも

ありませんのでどうぞ、

安心して捨てにきて下さい。

 

エミキュから話がきた時、

とても嬉しいのですが、お洋服屋さんは

イメージが一番大事だし、

僕のようなものを採用したら世間から

バッシングを受けるのが容易に予測出来ます。

お気持ちだけで充分ですと返しました。

でも、エミキュは、

私達の気持ちはいたってシンプルです。

顧客の方々にときめきを与えたいだけです

といって下さいました。

 

実際にまだ発売されてないので

どうなるのか解りませんが、

成功するにしろ失敗するにしろ

否定的な意見は

少なからず出ると思います。

これを引き受けてくれるという——。

 

引き受けられないと思いますよ。

それでも、引き受けようとしてくれる

気持ちがあるだけで、僕は救われる。

 

僕の処に負債を捨てたとて

君がラクになることはないのさ。

只の人間でないは確かですが、

君の負を取り除く奇蹟を

僕は起こせない。

それでもね、引き受ける、任しておけと

君に僕は、いおう。

何とかしてあげると請け合う。

 

もし君が

とても健全で前向きで頑丈な人間ならば

僕のことなんて今も知らないままだろう。

 

イエスさまはいいました。

丈夫な人には医者はいらない。

 

引き受けるのは親切からではなく、

その時、僕も君に引き受けて貰っているのですよ。

君がそれまでは生きていようと

思います——

脅迫めいたことを口にするので

僕も失踪せず、こうして文章を書いている。

 

昨日まで、心のリハビリを兼ねて

薔薇の花弁のオブジェを作っていました。

いつものポリ袋に造花をいれて

タグシールを貼る。

エミキュのイベントに来た人に

渡そうと思ってね、少し遅いけど

クリスマスでもあるし……。

タグは【NOVALAZA】2019@kyoto

です。

 

 

百個くらい作ったからそれを使って

クリスマスっぽい写真を撮ってみた。

こんなことをしていると、元気になります。

 

君の負を取り除く奇蹟は起こせないけど

こういうふうにさ、

君を可愛くすることなら出来ますよ。

 

任しておき給え。

ロリータ一筋50年!

ああ、そうさ。

君のその頑強な油染みのような負にすら

僕はリボンを掛けてやる。

廃墟であろうが、最新処分場であろうが、

リボンさえあれば可愛く出来るのさ。

 

 

大雪の次の朝、

どの景色より、

まだ溶けきらぬそれが

ゴミ置場の

ポリバケツの上に残っている様子を

綺麗だなと——感じたことはないかい?

 

僕はよく思いますよ。

 

嶽本野ばら 2018.12.24