第三回のノバラ座です。
搬入を終えて初日を迎えました。
ネックレスを作る為に貝殻に穴をドリルであける日々だったり
ポリの小さな容器にひたすらNDMAと名付け
ラムネを詰める作業をしたり
何でこんなに面倒臭いことを……
訳が解りませんでしたが、
会場の扉を開いた途端、息を呑む
熱心にディスプレイを眺め
レジに商品を持ってきてくれる人達の
顔を観ると、これで良かったのだと思いました。
何時も、そうです。
エキシビジョンに関わらず、小説だって何だって。
現実の世界とは思えない——。
ディスプレイを終えた後に、部屋中に
約３時間掛けて薔薇の花弁の造花を撒きました。
７時間ディスプレイして、もうそれで問題ないのに
用意した花弁を撒かずにいられませんでした。
現実とは思えない——？
ああ、そうかもしれないなと、納得しました。
確かにキチガイじみていることは
途中で気付いたのです——
でもやりたかったので、仕方なかったのです。
常に僕は現実感のないことばかしするのだな。
余り自分では解らないのです。
わざとじゃないので……。
ロリータにしろ現実的ではない格好なのでしょうが、
僕にしてみるとそれが現実的であって、
ユニクロとかは全く現実的ではないのです。
つまり、多くの人と現実的であると思えるものの捉え方が
随分と異なるみたいです。
薔薇の花弁が撒かれた部屋は現実的じゃあないのだな
と自覚した後、一日目を終え、
ご飯を食べに行きました。
お手洗いの鏡に、黒のワンピースを着て
フェイクじゃなく本物の鍵を麻紐でぶら下げ
ネックレスにしたものをつけている自分が写りました。
そうか、これも現実的じゃないな——と気付きました。
だってその格好をしているのは５０歳の男性です。
だけどねぇ、それが本物の鍵じゃなくて
ティファニーの鍵のモチーフだったら
変ではないのでしょ？
僕にはティファニーのそれの方が現実的じゃない。
何処の鍵だか解らないけど
本物の鍵を麻紐でぶら下げてるからこそ
現実的に可愛いし、カッコいいと思えるのです。
そしてこれが５０歳の男子だからおかしいのであって
こんなの、妖精ならば沢山、いますよ。
女子高生だと思われる人に
教養をつけるにはどうすればいいですか？
——訊かれて、困りました。
別に僕、教養とかないしなぁ……。
誤解されるので敢えていわなかったのですが、
僕は博識になったり道理や考え方を多用に弁えるのが
教養なのだとしたら
そんなもの、特に必要ないと思うのですよ。
只、純粋であればよいと、思う。
純粋であれといってしまうと
素直で真っ白であれ——と望んでいると勘違いされるから
いわなかった。
そうではなく、僕の求める純粋は
狡いことを考えたなら純粋に狡いことを考える
妬ましいなと思ったら純粋に妬ましいと思う
という純粋です。
あの人はお金持ちだからいいなと羨ましがる。
それでは自分が卑しいようで
お金もちだけど幸せだとは限らない……
とか、自分で自分の感情を補正してしまう。
僕はそれを不純なことだと捉えます。
ティファニーを欲しい理由が
みんなが持ってるから、であるのなら、
みんなが持ってるので私も欲しい——で構わないのですよ。
みんな持ってるけど、
自分はちゃんとブランドバリューの意味を心得ているだとか
品質が確かであるからだとか、円高の今が買いだとか、
不要な理由は足さなくていいのです。
己の心情を、捻じ曲げなくていい。
多分ね、
僕等は子供の頃にそうすることを大人に教えられた。
みんなが持ってるから自分も欲しいというと、
みんなが持ってるという理由では駄目だ、自主性がない。
多くの人が納得するもっともらしい理由を思いつけないと
持たせては貰えないことを学ばされてしまった。
生憎ね、
僕は教えられたのかもしれないけど、
全く学ばなかったのですねー。
そして、今に至る。
部屋に薔薇の花弁をばら撒く
ワンピースに首から鍵を下げている
５０歳のジジイに、なった。
だから、意外と天真爛漫なのですよ。
気は狂ってるかもしれませんが、
最近でいうところの、心の闇、
みたいなものはほぼ、ない。
狡いことを考える時は
全力で狡いことを純粋に考えるのです。
そうそう、その鍵なんですが、
紐を付けてネックレスみたいにも出来ますと
説明書きに自分で書きながら、
余りちゃんと考えてなくて
（何せ三日ほど前にビンテージの鍵を大量に仕入れた）
結び方とかもアバウトにしか
考えていなかったんですが、
こういうふうにザツでいいと思うんです。
紐が欲しい人にはそれっぽく細工してお渡ししますが、
好きなようにカスタムして下さい。
とりあえず、これくらいテキトーでも大丈夫ということで、
帰りの駅のホームで撮っておいた写真。
ノバラ座
１６日までやってまーす。
https://www.novalaza.com/event-1
嶽本野ばら ２０１８・９・１１
