最近は、『make a book』プロジェクトと称し、

各自に和綴じ製本をさせる戯曲のテキストやら

コキヤージュペンダントなぞとオシャレっぽい名称を付け

貝殻に麻紐をくっつけたものを

通販して、日々を過ごしている。

(小説も書いては、いる)

側からみれば、新作の出版も出来ず、

一部の狂信的読者を騙くらかし、日銭を得ているような

落ちぶれた行動に思えるだろう。

否定はしない。

もし、ものすごく人気があって

こういうことをしていては

注文が山のように入り、とても

一人で変なクラフト雑貨を作って、

封筒に入れ、郵便局に行く作業をこなし切れないだろう。

ウェブを使っているとはいえ

ほぼアナログ(宛名シールを自作したり)で

やっているのだ。

忙しくては、不可能だ。

しかし、今はこれでいいと思っている。

申し込みがある。受け付け確認のメールを送る。

Aセットを申し込みましたがBセットに変更したい

返信に書かれている内容に臨機応変、対応する。

宛名をタイピングしながら、

嗚呼、これは北海道まで届くのだなとか

この人、いつも申し込んでくれてるなとか

思いながら、作品を袋に入れ、封をする。

偶に、宛名ラベルをザツに切ってしまったりする。

別に構わないのだが、届いた時、綺麗に貼れていた方が

嬉しいだろうし……思うと、やり直さざるを得ない。

風邪ひとつひいたことのない人には、

病気がちの人の労苦は解らないだろうし、

喧嘩の強い人には、

憶病者の卑屈な気持ちが解らない。

落ちぶれているからこそ、

出来ることもある。

一日に2件とか3件のオーダーでは

儲かる筈もないのだが、

それくらいしかこないから、

ひとつひとつの作業に手間暇を掛けられる。

君から差し出される本の一冊ずつにサインを入れるように

僕の通帳の振込み人の欄には、

一人一人の名前が刻まれていく。

それを眺めると、とても幸せな気持ちになる。

このお金で、クスリとか買っちゃいかんなぁと思い、

次に作りたいクラフトに必要な工具や材料の資金にする。

(または本を買う)(お洋服も買う)

(お菓子も買う)

 

出来るだけまとめて発送したいので

一週間から十日くらい掛かることがあります。

——普通、こんなこと書いてあったら、

馬鹿野郎、怠けやがってと怒られる筈なのだけど

いつでもよいです、待ってますと

返してくれる。

狂信的読者だからお前を

甘やかせてくれるのだ

世間では通用しない——。ええ、通用しませんでしょ。

でも世間が僕に何をしてくれる?

落ちぶれてみっともない

冷笑するだけの人達に批判されようと

痛くも痒くもありません。

 

 

丁度この時期、二回目の逮捕があった。

蜘蛛の子を散らすように沢山の人が去っていった。

それでも待っている

見放さないといってくれた君がいた。

一語一語に祈りを込めて言葉を紡ぐように

一人一人の差し出す本にサインを入れるように

一緒に写真撮るように、

今はプリンターで印字した手製の戯曲や、

貝殻で作った変なクラフト雑貨を封筒に詰めよう。

昨日、ルーターというものを買ったんだ。

これがあると、石灰質の硬い貝殻に穴が空けられるんだ。

ピン留めでも作ろう。

 

無論、小説も書く。

君が読んでくれるから書く。

君にもっと、僕のことを知って貰いたいんだ。

貝殻を売る人、貝殻を買う人……

そのうちに送ります、いつでもよいですよう。

まるで童話の世界のようなやりとりを

している僕等はマヌケだが、

この世界の何処か端っこで構わない。

そんなのが成立しているおとぎの国が

あったって構わないじゃないか。

世間が寄越す勲章や財宝より、

君がくれる肩たたき券や

山猫が寄越す黄金のドングリのほうが愛おしい。

 

《*但し、通販の支払いはドングリでは出来ません。》

 

http://novalaza.com

 

          嶽本野ばら 2018.04.10